迷ヰ犬の僕達は
[太字]タッタッタッタッタッ…[/太字]
廊下に足音が響いている
ここはあるヨコハマの建物
まだ朝方で人々にも眠気が
残っている様子
そしてこの建物の4階には
ある探偵社がある、その名も
―――武装探偵社―――
武装探偵社は、警察や軍に頼れない
"危険な依頼"を専門に取り扱う探偵社で
昼の世界と夜の世界その間を
取り仕切る薄暮の武装集団だ
何度も言うようだがマフィアや
非合法組織がひしめく港湾都市
ヨコハマに事務所を構えている
そしてもう1つ大事なこと
そう、彼らの大半は
[太字]“異能力者”[/太字]
普通の人間とは異なり、特殊な力
異能力を使う異能力者なのだ
そしてこの足音の主もまた
武装探偵社に用があり
先を急いでいた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんな気も知らない武装探偵社は
現在、爆弾魔が人質を取り
事務所に立てこもっていた
国木田「おい、落ち着け少年」
武装探偵社社員である国木田独歩が
爆弾魔の少年の目の前に姿を現す
爆弾魔「来るな!!社長以外に
用はない!!妙な素振りを
見せたら吹き飛ばすよ!!!」
国木田「…わかった」
爆弾魔「知ってるぞ、あんたは国木田だ
僕を油断させてあの嫌味な
異能力を使うつもりだろう!?
そうは行かないぞ!!」
爆弾魔の少年は国木田の話を遮る
どうやら社長を要求している
様子だった、その後
“嫌味な異能力”そう言った
国木田もまた異能力者なのだ
爆弾魔「机の上で四つん這いになり
両手を見える所に置け!!」
国木田「あァ!!!」
爆弾魔の少年の命令に反発する
ように声を上げる国木田
爆弾魔「ゆ…言う通りにしないと…
…みんな道連れだぞ!!!!」
そう言われてしまえば国木田はもう
反発する様子はなく、大人しく従った
彼は理想主義者で誰一人
死ぬこと許さない
性格だったのだ
太宰「まずいな…探偵社に私怨を
持つだけあって奴は
社員の顔と名前を把握している」
太宰「これでは社員の私が行っても
彼を刺激するだけだ」
太宰治、彼もまた武装探偵社社員で
異能力者だ
太宰「さて、どうしたものか」
太宰は頭を捻り考えた末
隣に視線を移す
敦〔今なんか猛烈に嫌な予感が…〕
太宰「あ~つ~し~く~ん♪」
敦「嫌です…」
太宰「まだ何も言ってないよ?」
敦「言われなくてもわかります…」
隣に居た少年の名は中島敦
彼は武装探偵社社員ではないのだが
異能力者なのだ
昨夜、太宰が1つの事件を解決した
その事件の容疑者であり、色々な
意味で被害者なのが敦である
太宰「聞いてくれ敦くん、社員では
なく、犯人に面が割れて
いないのは君だけだ」
敦「でも…僕が行っても
何もできませんよ…」
太宰「大丈夫、少しの間犯人の
気を逸らしてくれればいい
あとは我々がやるから」
おどおどする敦に太宰が真っ直ぐな
眼差しを向けそう言い聞かせる
太宰「そうだな~相手の意表を突く様な
ダメ人間の演技でもして
気を引くというのはどうだろう?」
太宰「はい、小道具」
太宰「信用したまえ、この程度の
揉め事、我々武装探偵社に
とっては朝飯前だよ、敦くん」
戯けているのか本気なのか、そんな
太宰に背中を押され小道具の
新聞と肩掛け紐を使い
爆弾魔の少年の目の前へ敦は現れた
敦「や…ややややめなさーい!!!
こ…こんなことして
何になるぅ…きっと
親御さんも泣いているよ…」
爆弾魔「なんだ!!あんた!!」
敦「ご…ごめんなさいっ」
敦〔ここここここここここ怖いいいいい…〕
爆弾魔「新聞配達の人が何の用だ」
敦「…いくら憎いからって人質とか
爆弾とかよくないよ…
…生きていればきっと
いい事がある…!!」
爆弾魔「いい事って?」
敦「…………」
四つん這いになっている国木田が
不安そうに敦を見つめる
そんな敦は完全なる見切り発車だ。
咄嗟に出た言葉、それは…
敦「ちゃ…茶漬けが食える!!
茶漬けを腹いっぱい食える!!
天井がある所で寝られる!!
寝て起きたら朝が来る!!」
事件と自分の異能力のせいで孤児院を
追い出された敦の最近感じた幸せや
良かったことだった。
確かに当たり前は幸せだけれど…
敦「でも…爆発したら君にも
僕にも朝は来ない…
…なぜなら死んじゃうから…」
爆弾魔「そんな事わかってる!!!」
中島敦「ええええー!?」
あからさまに驚く敦は続けた
敦「いやぁ~やめた方が
いいと思うけどなぁ~
だって死んじゃったら…
…死んじゃうんだよ?
辛くても生きてる人
だって…ほら!!例えば僕!!
家族も友達もいなくて…
…孤児院さえ追い出され
行く場所も生きる希望もない…」
敦〔その上虎に変身しちゃうし…〕
敦の異能力、それは“月下獣”
異能の力で虎に変身してしまう人虎
だが彼自身もそれを知ったのは昨夜
事件の内容も虎が街に現れ
街を荒らしている災害指定猛獣の確保
その虎が敦だったのだ
孤児院を追い出されたのも敦が
人虎で孤児院を荒らされたからである
敦「あーそうですよ!!!確かに僕は
あなたの言う通りとりたてて
長所もなく誰が見ても社会の
ゴミだけど、それでもヤケに
ならずに生きてるんだァ!!!!」
誰もそこまで言ってないぞ敦。
太宰治「いいぞ敦君…演技を超えた
素晴らしいダメ人間ぶりだ」
そこまで言ってやるな太宰。
敦「だからそんな爆弾なんか捨てて!!
一緒に仕事探そ!!ね!!!!」
爆弾魔「いや…僕別に仕事を
探してるわけでは…」
爆弾魔の少年が困惑している
そして敦は完全に新聞配達
という設定を忘れていた
[大文字][太字]ガチャリ…[/太字][/大文字]
全員「!!!」
全員の視線がドアへと向かう
ガチャリと音をたてて開いたドアへと
そこに現れたのは
少女「あ、あの!!武装探偵社に
お頼みしたい依頼が…!!!?」
1人の少女だった、依頼だと
言うがタイミングは最悪だ
少女「ば、ばくだっ…!!!!」
国木田「!!!逃げろ小娘!!!!」
国木田が死物狂いで叫ぶ
少女は向きを変え出口へと
全力で必死に走った
…だが
少女「だ、誰か!!!!助けっ!!!!!」
[大文字][大文字][太字]ドンドンッ!!!![/太字][/大文字][/大文字]
少女「…ぐはッ…!!!!」
[大文字][太字]ドサッ…[/太字][/大文字]
抵抗も虚しく爆弾魔の少年に
発砲され少女は血を流し倒れた
敦「お、女の子が…!!!!!!」
爆弾魔「ここまでやるのに爆弾
だけなわけ、な…ないだろ!!!!」
相当混乱し取り乱している爆弾魔の
少年を太宰と国木田は見逃さなかった
太宰「今だ国木田くん!!」
国木田「異能力!!」
“理想”と書かれた表紙の
手帳を懐から取り出し
万年筆で言葉を書き込む
書かれていたのは[漢字]鉄線銃[/漢字][ふりがな]ワイヤーガン[/ふりがな]という文字
そう、これが国木田独歩の異能力―――
[太字][大文字]国木田《独歩吟客!!!!》[/太字][/大文字]
国木田「[漢字]鉄線銃[/漢字][ふりがな]ワイヤーガン[/ふりがな]!!!」
手元の破り切った手帳のページが光り
[漢字]鉄線銃[/漢字][ふりがな]ワイヤーガン[/ふりがな]が現れる、これが“独歩吟客”だ
途端に爆弾魔の少年の爆破スイッチと
拳銃を[漢字]鉄線銃[/漢字][ふりがな]ワイヤーガン[/ふりがな]を使い取り上げた
太宰「確保だ国木田くん!!」
太宰が飛び出し国木田へと指示をする
国木田「分かっとるわッ!!!!」
爆弾魔の少年の胸ぐらを
掴んで投げ捨て身動きが
取れぬよう抑えつける
太宰「一丁あがり~はいはい
皆さんお疲れ様~」
国木田「何が「一丁あがり」だ!!
「今だ」とか「確保」とか
口で言ってるだけで
全然働いてないではないか!!」
太宰「それはしょうがないよ
だって国木田君は」
太宰はあざ笑うような笑みを
浮かべて言った
太宰「じゃんけんで負けたんだからニヤニヤ」
国木田「貴様…」
太宰「まーまー事件は解決したのだから
細かい事はいいじゃないか
あんまり神経質になりすぎると
シワが増えて老化が急速に
進むそうだよ?」
国木田「はっ!!それは本当か!!」
太宰「ほら、メモメモ!!」
再び手帳を取り出し書き出していく
このノートは国木田のこれからの
理想や計画が事細かに
書き出されている手帳なのだ
国木田「神経質過ぎると…
…老化が急速に…」
太宰「ウソだけど」
太宰がウソと言った瞬間国木田の
万年筆がバキィッ!!!っと
大きな音をたてて折れる
国木田「ドワアアァァァァ!!!!
貴様!!!人を愚弄するのも
いい加減にせんか!!!!!」
爆弾魔「お前もな!!!」
怒る国木田を蹴り飛ばし
爆破スイッチを奪う爆弾魔の少年
爆弾魔「バカにしやがって!!!」
距離を取る爆弾魔の少年
そして狂気に満ち溢れた表情で言った
爆弾魔「ホント、異能力者って奴らは…」
爆弾魔「…どこか心が歪だ」
[太字]カチッ…[/太字]
スイッチが押された―――
敦「あと30秒で爆発!!?どうする!!?」
敦は数分前の太宰の言葉を思い出した
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
太宰「爆弾に何か覆い被せればるある
程度は抑えられるだろうけど」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
敦「なにか被せるもの!!」
敦「なにかないか!!!」
その時、隣りに居たバイトの事務員で
人質にされていた女子高校生と
目が合う、彼女の目は怯えきっていた
顔をしかめる敦は彼女を太宰の元へと
投げ渡した
太宰「!!」
太宰「敦くん!!」
太宰の顔に焦りと驚愕の表情が浮かぶ
それもそうだ、今太宰の前には
爆弾を抱え伏せている敦の姿
敦〔あれ…?僕はなにを
やっているんだ…〕
太宰「バカ!!!」
太宰が叫ぶ、だが彼は目を大きく
見開き冷や汗をかくばかり
その敦の瞳がただ捉えていたのは
先ほど不運にも体を射抜かれ
ぴくりとも動かない少女だった
敦〔…もう、誰もあの子のように
させないためにはこれしか…!!!〕
泣きそうな顔で歯を食いしばる敦の
気持ちなんで知らずに
爆弾のカウントダウンが
5
4
3
2
1
そして
0―――
―――だが、爆発する様子はない
敦「…?」
国木田「やれやれ…バカだとは
思っていたが、これほどとは…」
爆弾魔(?)「ごめんね〜大丈夫だった?」
ナオミ「兄様〜♡大丈夫でしたか〜?♡」
そこには敦を見て呆れる国木田
爆弾魔の少年としてスイッチを押した
谷崎潤一郎、そして人質に取られていた
バイトの谷崎の妹、谷崎ナオミだった
そこにいる人々の先ほどの緊迫した
空気はどこへやらともよく言えた話だ
敦「バイトさんもグルってことですか…?」
敦「え?じゃ、じゃあ爆弾とか
拳銃は…って、あの子は!!
あの女の子は血を流して
し、死んでいたはず…!!!」
[太字]ガバッ!!!![/太字]
敦「いやぁッ!?!?!?」
●●『ちょっとーっ敦だっけ?
勝手に僕のこと
殺さないでくれるかな』
敦「えええ…あ、す、すみません…?」
国木田「お前は相変わらず演技は
現実味を帯び過ぎて
気持ち悪いくらいだ
騙されても仕方がないだろう」
●●『多分僕の演技を見破れる奴
なんて世界のどこ探しても
居ないんじゃない?』
●●『でも気持ち悪いは余計だろ
…この怪人クニキーダ』
国木田「誰が怪人クニキーダだ!!」
死んだことにされていた少女の名は
○○●●、国木田との
様子を見るに、恐らく武装探偵社とは
面識があるのだろう
そして彼女も実は異能力者だ
ナオミ「ふふっ、●●ちゃんは
通常通りのようですね!!
良かったですわ、本気で
心配になりましたのよ」
●●『あっはは、ごめんね
ナオミちゃん』
●●『ほらほら谷崎ー
ナオミちゃんのこと
癒したげなよー』
谷崎「え、ちょ、●●さん、まっ」
ナオミ「いや〜ん♡兄様ぁ〜♡」
敦「( ゚д゚)ポカーン(唖然)」
国木田「小僧、恨むなら太宰を恨め
さもなくば仕事斡旋人を
間違えた己を恨め」
敦「って事はこれって…」
太宰「言っただろう?
ちょっとした試験があるって」
太宰達の元をでて行く決断をした敦は
太宰に仕事の斡旋を頼んでいたのだ
いや、厳密には促されたのである
その時太宰は敦に
「ちょっとした試験があるかも」
そう言われていたのを思い出した
敦「つまり入社試験…?」
??「その通りだ」
●●『あ、社長』
奥の部屋から現れた男は
武装探偵社社長、福沢諭吉だ
彼もまた異能力者である
福沢「●●もご苦労」
●●『別にそんなことないよ
面白いものが
最前列で見れたからね』
福沢「そうか…話を戻そう」
福沢「そこの太宰めが
“有能な若者がいる”と言う故
その魂の真贋試させて貰った」
太宰「君を社員に推薦したのだけれど
いかんせん君は区の
災害指定猛獣だ、保護すべきか
否か社内で揉めてね」
福沢「だが太宰が言ったのだ」
福沢は太宰との会話を思い出す
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
太宰「社長、社長はもしここに
世界一強い異能力者が
現れたら雇いますか?」
福沢「その事が探偵社員たる
根拠とは成り得ない」
太宰「だから私は彼を推すんです」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国木田「それで社長、どの
ようなご判断を」
少しピリピリするような
緊張の時間が流れる
数秒考え、間を空けた後
福沢は告げた
福沢「…太宰に一任する」
太宰「お任せください」
敦「ちょっと待ってください太宰さん!!
それじゃ僕に紹介する仕事って…」
太宰「合格だそうだよ?」
太宰「武装探偵社にようこそ、中島敦くん」
敦「こんな無茶で物騒な職場
僕には無理ですよ!!!」
太宰「皆を助ける為に爆弾に覆い
被さるなんて、中々できる
事じゃない、君なら大丈夫だ」
いくら衝動的なもので、太宰に
はめられここまできたとしても
誇るべき行動だと、そう太宰や
周りは踏んだ様子だった
敦「でも…」
太宰「でもまぁ君が断るなら
無理強いはできない…しかし
そうなると私は君の今後が
心配でならない」
太宰は顎を手で触りながら続ける
太宰「まずは社員寮を
引き払わなくては
ならなくなるし…君のように
これといった特技もなく
しかも友達も知り合いも
いない者が仕事を探すのは
さぞかし大変だ」
●●『…太宰ゲッッッス』
太宰「ちょっと●●!!ゲスいとか
聞き捨てならないんだが!!!」
太宰「…それに君はお尋ね者の虎だからね」
敦「はっ!!」
敦はそうだった…と顔に書いてある
とはよく言ったもので、分かり
やすく顔に出ている
太宰「それが知れたらどんな仕事も
よくてクビ、悪ければ
捕まって射殺だろうな」
敦「射殺!?!?」
●●『そんな驚く話かね、だって
災害指定猛獣だよ?猛獣』
敦「た、確かに…分類は
動物達と同じなのか…」
●●『そんなに気を
落としてやるなって』
太宰「そうだよ敦くん、この
探偵社なら話は別だけどっ?☆」
太宰「じゃ、そういう事で」
敦「そ、そんな〜…」
敦の腑抜けた声が事務所内に響いた
廊下に足音が響いている
ここはあるヨコハマの建物
まだ朝方で人々にも眠気が
残っている様子
そしてこの建物の4階には
ある探偵社がある、その名も
―――武装探偵社―――
武装探偵社は、警察や軍に頼れない
"危険な依頼"を専門に取り扱う探偵社で
昼の世界と夜の世界その間を
取り仕切る薄暮の武装集団だ
何度も言うようだがマフィアや
非合法組織がひしめく港湾都市
ヨコハマに事務所を構えている
そしてもう1つ大事なこと
そう、彼らの大半は
[太字]“異能力者”[/太字]
普通の人間とは異なり、特殊な力
異能力を使う異能力者なのだ
そしてこの足音の主もまた
武装探偵社に用があり
先を急いでいた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんな気も知らない武装探偵社は
現在、爆弾魔が人質を取り
事務所に立てこもっていた
国木田「おい、落ち着け少年」
武装探偵社社員である国木田独歩が
爆弾魔の少年の目の前に姿を現す
爆弾魔「来るな!!社長以外に
用はない!!妙な素振りを
見せたら吹き飛ばすよ!!!」
国木田「…わかった」
爆弾魔「知ってるぞ、あんたは国木田だ
僕を油断させてあの嫌味な
異能力を使うつもりだろう!?
そうは行かないぞ!!」
爆弾魔の少年は国木田の話を遮る
どうやら社長を要求している
様子だった、その後
“嫌味な異能力”そう言った
国木田もまた異能力者なのだ
爆弾魔「机の上で四つん這いになり
両手を見える所に置け!!」
国木田「あァ!!!」
爆弾魔の少年の命令に反発する
ように声を上げる国木田
爆弾魔「ゆ…言う通りにしないと…
…みんな道連れだぞ!!!!」
そう言われてしまえば国木田はもう
反発する様子はなく、大人しく従った
彼は理想主義者で誰一人
死ぬこと許さない
性格だったのだ
太宰「まずいな…探偵社に私怨を
持つだけあって奴は
社員の顔と名前を把握している」
太宰「これでは社員の私が行っても
彼を刺激するだけだ」
太宰治、彼もまた武装探偵社社員で
異能力者だ
太宰「さて、どうしたものか」
太宰は頭を捻り考えた末
隣に視線を移す
敦〔今なんか猛烈に嫌な予感が…〕
太宰「あ~つ~し~く~ん♪」
敦「嫌です…」
太宰「まだ何も言ってないよ?」
敦「言われなくてもわかります…」
隣に居た少年の名は中島敦
彼は武装探偵社社員ではないのだが
異能力者なのだ
昨夜、太宰が1つの事件を解決した
その事件の容疑者であり、色々な
意味で被害者なのが敦である
太宰「聞いてくれ敦くん、社員では
なく、犯人に面が割れて
いないのは君だけだ」
敦「でも…僕が行っても
何もできませんよ…」
太宰「大丈夫、少しの間犯人の
気を逸らしてくれればいい
あとは我々がやるから」
おどおどする敦に太宰が真っ直ぐな
眼差しを向けそう言い聞かせる
太宰「そうだな~相手の意表を突く様な
ダメ人間の演技でもして
気を引くというのはどうだろう?」
太宰「はい、小道具」
太宰「信用したまえ、この程度の
揉め事、我々武装探偵社に
とっては朝飯前だよ、敦くん」
戯けているのか本気なのか、そんな
太宰に背中を押され小道具の
新聞と肩掛け紐を使い
爆弾魔の少年の目の前へ敦は現れた
敦「や…ややややめなさーい!!!
こ…こんなことして
何になるぅ…きっと
親御さんも泣いているよ…」
爆弾魔「なんだ!!あんた!!」
敦「ご…ごめんなさいっ」
敦〔ここここここここここ怖いいいいい…〕
爆弾魔「新聞配達の人が何の用だ」
敦「…いくら憎いからって人質とか
爆弾とかよくないよ…
…生きていればきっと
いい事がある…!!」
爆弾魔「いい事って?」
敦「…………」
四つん這いになっている国木田が
不安そうに敦を見つめる
そんな敦は完全なる見切り発車だ。
咄嗟に出た言葉、それは…
敦「ちゃ…茶漬けが食える!!
茶漬けを腹いっぱい食える!!
天井がある所で寝られる!!
寝て起きたら朝が来る!!」
事件と自分の異能力のせいで孤児院を
追い出された敦の最近感じた幸せや
良かったことだった。
確かに当たり前は幸せだけれど…
敦「でも…爆発したら君にも
僕にも朝は来ない…
…なぜなら死んじゃうから…」
爆弾魔「そんな事わかってる!!!」
中島敦「ええええー!?」
あからさまに驚く敦は続けた
敦「いやぁ~やめた方が
いいと思うけどなぁ~
だって死んじゃったら…
…死んじゃうんだよ?
辛くても生きてる人
だって…ほら!!例えば僕!!
家族も友達もいなくて…
…孤児院さえ追い出され
行く場所も生きる希望もない…」
敦〔その上虎に変身しちゃうし…〕
敦の異能力、それは“月下獣”
異能の力で虎に変身してしまう人虎
だが彼自身もそれを知ったのは昨夜
事件の内容も虎が街に現れ
街を荒らしている災害指定猛獣の確保
その虎が敦だったのだ
孤児院を追い出されたのも敦が
人虎で孤児院を荒らされたからである
敦「あーそうですよ!!!確かに僕は
あなたの言う通りとりたてて
長所もなく誰が見ても社会の
ゴミだけど、それでもヤケに
ならずに生きてるんだァ!!!!」
誰もそこまで言ってないぞ敦。
太宰治「いいぞ敦君…演技を超えた
素晴らしいダメ人間ぶりだ」
そこまで言ってやるな太宰。
敦「だからそんな爆弾なんか捨てて!!
一緒に仕事探そ!!ね!!!!」
爆弾魔「いや…僕別に仕事を
探してるわけでは…」
爆弾魔の少年が困惑している
そして敦は完全に新聞配達
という設定を忘れていた
[大文字][太字]ガチャリ…[/太字][/大文字]
全員「!!!」
全員の視線がドアへと向かう
ガチャリと音をたてて開いたドアへと
そこに現れたのは
少女「あ、あの!!武装探偵社に
お頼みしたい依頼が…!!!?」
1人の少女だった、依頼だと
言うがタイミングは最悪だ
少女「ば、ばくだっ…!!!!」
国木田「!!!逃げろ小娘!!!!」
国木田が死物狂いで叫ぶ
少女は向きを変え出口へと
全力で必死に走った
…だが
少女「だ、誰か!!!!助けっ!!!!!」
[大文字][大文字][太字]ドンドンッ!!!![/太字][/大文字][/大文字]
少女「…ぐはッ…!!!!」
[大文字][太字]ドサッ…[/太字][/大文字]
抵抗も虚しく爆弾魔の少年に
発砲され少女は血を流し倒れた
敦「お、女の子が…!!!!!!」
爆弾魔「ここまでやるのに爆弾
だけなわけ、な…ないだろ!!!!」
相当混乱し取り乱している爆弾魔の
少年を太宰と国木田は見逃さなかった
太宰「今だ国木田くん!!」
国木田「異能力!!」
“理想”と書かれた表紙の
手帳を懐から取り出し
万年筆で言葉を書き込む
書かれていたのは[漢字]鉄線銃[/漢字][ふりがな]ワイヤーガン[/ふりがな]という文字
そう、これが国木田独歩の異能力―――
[太字][大文字]国木田《独歩吟客!!!!》[/太字][/大文字]
国木田「[漢字]鉄線銃[/漢字][ふりがな]ワイヤーガン[/ふりがな]!!!」
手元の破り切った手帳のページが光り
[漢字]鉄線銃[/漢字][ふりがな]ワイヤーガン[/ふりがな]が現れる、これが“独歩吟客”だ
途端に爆弾魔の少年の爆破スイッチと
拳銃を[漢字]鉄線銃[/漢字][ふりがな]ワイヤーガン[/ふりがな]を使い取り上げた
太宰「確保だ国木田くん!!」
太宰が飛び出し国木田へと指示をする
国木田「分かっとるわッ!!!!」
爆弾魔の少年の胸ぐらを
掴んで投げ捨て身動きが
取れぬよう抑えつける
太宰「一丁あがり~はいはい
皆さんお疲れ様~」
国木田「何が「一丁あがり」だ!!
「今だ」とか「確保」とか
口で言ってるだけで
全然働いてないではないか!!」
太宰「それはしょうがないよ
だって国木田君は」
太宰はあざ笑うような笑みを
浮かべて言った
太宰「じゃんけんで負けたんだからニヤニヤ」
国木田「貴様…」
太宰「まーまー事件は解決したのだから
細かい事はいいじゃないか
あんまり神経質になりすぎると
シワが増えて老化が急速に
進むそうだよ?」
国木田「はっ!!それは本当か!!」
太宰「ほら、メモメモ!!」
再び手帳を取り出し書き出していく
このノートは国木田のこれからの
理想や計画が事細かに
書き出されている手帳なのだ
国木田「神経質過ぎると…
…老化が急速に…」
太宰「ウソだけど」
太宰がウソと言った瞬間国木田の
万年筆がバキィッ!!!っと
大きな音をたてて折れる
国木田「ドワアアァァァァ!!!!
貴様!!!人を愚弄するのも
いい加減にせんか!!!!!」
爆弾魔「お前もな!!!」
怒る国木田を蹴り飛ばし
爆破スイッチを奪う爆弾魔の少年
爆弾魔「バカにしやがって!!!」
距離を取る爆弾魔の少年
そして狂気に満ち溢れた表情で言った
爆弾魔「ホント、異能力者って奴らは…」
爆弾魔「…どこか心が歪だ」
[太字]カチッ…[/太字]
スイッチが押された―――
敦「あと30秒で爆発!!?どうする!!?」
敦は数分前の太宰の言葉を思い出した
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
太宰「爆弾に何か覆い被せればるある
程度は抑えられるだろうけど」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
敦「なにか被せるもの!!」
敦「なにかないか!!!」
その時、隣りに居たバイトの事務員で
人質にされていた女子高校生と
目が合う、彼女の目は怯えきっていた
顔をしかめる敦は彼女を太宰の元へと
投げ渡した
太宰「!!」
太宰「敦くん!!」
太宰の顔に焦りと驚愕の表情が浮かぶ
それもそうだ、今太宰の前には
爆弾を抱え伏せている敦の姿
敦〔あれ…?僕はなにを
やっているんだ…〕
太宰「バカ!!!」
太宰が叫ぶ、だが彼は目を大きく
見開き冷や汗をかくばかり
その敦の瞳がただ捉えていたのは
先ほど不運にも体を射抜かれ
ぴくりとも動かない少女だった
敦〔…もう、誰もあの子のように
させないためにはこれしか…!!!〕
泣きそうな顔で歯を食いしばる敦の
気持ちなんで知らずに
爆弾のカウントダウンが
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そして
0―――
―――だが、爆発する様子はない
敦「…?」
国木田「やれやれ…バカだとは
思っていたが、これほどとは…」
爆弾魔(?)「ごめんね〜大丈夫だった?」
ナオミ「兄様〜♡大丈夫でしたか〜?♡」
そこには敦を見て呆れる国木田
爆弾魔の少年としてスイッチを押した
谷崎潤一郎、そして人質に取られていた
バイトの谷崎の妹、谷崎ナオミだった
そこにいる人々の先ほどの緊迫した
空気はどこへやらともよく言えた話だ
敦「バイトさんもグルってことですか…?」
敦「え?じゃ、じゃあ爆弾とか
拳銃は…って、あの子は!!
あの女の子は血を流して
し、死んでいたはず…!!!」
[太字]ガバッ!!!![/太字]
敦「いやぁッ!?!?!?」
●●『ちょっとーっ敦だっけ?
勝手に僕のこと
殺さないでくれるかな』
敦「えええ…あ、す、すみません…?」
国木田「お前は相変わらず演技は
現実味を帯び過ぎて
気持ち悪いくらいだ
騙されても仕方がないだろう」
●●『多分僕の演技を見破れる奴
なんて世界のどこ探しても
居ないんじゃない?』
●●『でも気持ち悪いは余計だろ
…この怪人クニキーダ』
国木田「誰が怪人クニキーダだ!!」
死んだことにされていた少女の名は
○○●●、国木田との
様子を見るに、恐らく武装探偵社とは
面識があるのだろう
そして彼女も実は異能力者だ
ナオミ「ふふっ、●●ちゃんは
通常通りのようですね!!
良かったですわ、本気で
心配になりましたのよ」
●●『あっはは、ごめんね
ナオミちゃん』
●●『ほらほら谷崎ー
ナオミちゃんのこと
癒したげなよー』
谷崎「え、ちょ、●●さん、まっ」
ナオミ「いや〜ん♡兄様ぁ〜♡」
敦「( ゚д゚)ポカーン(唖然)」
国木田「小僧、恨むなら太宰を恨め
さもなくば仕事斡旋人を
間違えた己を恨め」
敦「って事はこれって…」
太宰「言っただろう?
ちょっとした試験があるって」
太宰達の元をでて行く決断をした敦は
太宰に仕事の斡旋を頼んでいたのだ
いや、厳密には促されたのである
その時太宰は敦に
「ちょっとした試験があるかも」
そう言われていたのを思い出した
敦「つまり入社試験…?」
??「その通りだ」
●●『あ、社長』
奥の部屋から現れた男は
武装探偵社社長、福沢諭吉だ
彼もまた異能力者である
福沢「●●もご苦労」
●●『別にそんなことないよ
面白いものが
最前列で見れたからね』
福沢「そうか…話を戻そう」
福沢「そこの太宰めが
“有能な若者がいる”と言う故
その魂の真贋試させて貰った」
太宰「君を社員に推薦したのだけれど
いかんせん君は区の
災害指定猛獣だ、保護すべきか
否か社内で揉めてね」
福沢「だが太宰が言ったのだ」
福沢は太宰との会話を思い出す
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
太宰「社長、社長はもしここに
世界一強い異能力者が
現れたら雇いますか?」
福沢「その事が探偵社員たる
根拠とは成り得ない」
太宰「だから私は彼を推すんです」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国木田「それで社長、どの
ようなご判断を」
少しピリピリするような
緊張の時間が流れる
数秒考え、間を空けた後
福沢は告げた
福沢「…太宰に一任する」
太宰「お任せください」
敦「ちょっと待ってください太宰さん!!
それじゃ僕に紹介する仕事って…」
太宰「合格だそうだよ?」
太宰「武装探偵社にようこそ、中島敦くん」
敦「こんな無茶で物騒な職場
僕には無理ですよ!!!」
太宰「皆を助ける為に爆弾に覆い
被さるなんて、中々できる
事じゃない、君なら大丈夫だ」
いくら衝動的なもので、太宰に
はめられここまできたとしても
誇るべき行動だと、そう太宰や
周りは踏んだ様子だった
敦「でも…」
太宰「でもまぁ君が断るなら
無理強いはできない…しかし
そうなると私は君の今後が
心配でならない」
太宰は顎を手で触りながら続ける
太宰「まずは社員寮を
引き払わなくては
ならなくなるし…君のように
これといった特技もなく
しかも友達も知り合いも
いない者が仕事を探すのは
さぞかし大変だ」
●●『…太宰ゲッッッス』
太宰「ちょっと●●!!ゲスいとか
聞き捨てならないんだが!!!」
太宰「…それに君はお尋ね者の虎だからね」
敦「はっ!!」
敦はそうだった…と顔に書いてある
とはよく言ったもので、分かり
やすく顔に出ている
太宰「それが知れたらどんな仕事も
よくてクビ、悪ければ
捕まって射殺だろうな」
敦「射殺!?!?」
●●『そんな驚く話かね、だって
災害指定猛獣だよ?猛獣』
敦「た、確かに…分類は
動物達と同じなのか…」
●●『そんなに気を
落としてやるなって』
太宰「そうだよ敦くん、この
探偵社なら話は別だけどっ?☆」
太宰「じゃ、そういう事で」
敦「そ、そんな〜…」
敦の腑抜けた声が事務所内に響いた
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