reunion
#1
〜私の悪夢〜
……ここはどこ?…いや、本当はわかっている。ここは、海。夏休みに入り、海開きをしたばかりの、海水浴場。この日の天気は晴れ。天気予報では曇りだったけど、みんなでたくさんてるてる坊主を作ったら、晴れになった。分かる。全部分かる。全部覚えてる。前日に熱を出して、海に行けるかどうか怪しくなって、みんな焦っていたことも。行く途中のコンビニで、みんなでアイスを買って食べたことも。…この日、この海で、1人の女性が亡くなったことも。
またか…。まただ。今日も眠るのをためらった。でも、もしかしたら。もしかしたら、今日は大丈夫かもしれない。そう思ってみたけれど。ダメだった。いつも通りだった。いつも通り、あの日の夢を見た。夏休みに入って、みんなで海に行って、たくさん遊んで…。子供が溺れたって、騒ぎになって。泳ぎが得意だった私の母が、「つむちゃん。ごめんね」ただそう言って泣きじゃくる幼い私を置いて、走って海に飛び込んでいってしまった。そんな、思い出したくもない日の夢を、今日も見た。
そして、見終わった後にはいつも、ここに来る。そこは、一言で表すならば、自然。森と川と山が合わさったような場所。あの日の夢を見たあとは、いつもここに来る。すごく綺麗だと思って、もっとちゃんと見たいと思っても、なんとなく視界がぼやけてよく見えない。緑色のハートが見えるようにも見えるし、階段があるようにも見える。私は、ぼんやりとしか見えないのに、どこに何があるか。全部わかっている。この先に木が何本あるのか。この先で、少し地面の色が変わるような気がするのも。そして私は、いつも一つの方向にだけ歩く。他の場所に行こうと、現実では思っていても。実際夢の中にいると、特に何も考えずに、その方向にだけ進む。
そして、その方向には、あの日の夢を見て母のいないことによるわたしの寂しさに追い打ちをかけるように、母がいる。母は、襟元にレースがついていて、ところどころに薄く花模様が散った黄緑色のワンピースを着ている。あの日、母が来ていた服だ。「お出かけだからね」といって、母が新しく買ったワンピースだ。私は、そんな母に、近づこうとする。どうせ近くには行けないと分かっていても、近づこうとする。でもいつも、同じところで止まる。あの、根が手のような形をした木のところで、いつも止まる。先に進めなくなる。見えない壁があるかのように、進めなくなる。私はいつも、何度もその壁に体当たりをして、疲れて、その場に座り込んでいた。
またか…。まただ。今日も眠るのをためらった。でも、もしかしたら。もしかしたら、今日は大丈夫かもしれない。そう思ってみたけれど。ダメだった。いつも通りだった。いつも通り、あの日の夢を見た。夏休みに入って、みんなで海に行って、たくさん遊んで…。子供が溺れたって、騒ぎになって。泳ぎが得意だった私の母が、「つむちゃん。ごめんね」ただそう言って泣きじゃくる幼い私を置いて、走って海に飛び込んでいってしまった。そんな、思い出したくもない日の夢を、今日も見た。
そして、見終わった後にはいつも、ここに来る。そこは、一言で表すならば、自然。森と川と山が合わさったような場所。あの日の夢を見たあとは、いつもここに来る。すごく綺麗だと思って、もっとちゃんと見たいと思っても、なんとなく視界がぼやけてよく見えない。緑色のハートが見えるようにも見えるし、階段があるようにも見える。私は、ぼんやりとしか見えないのに、どこに何があるか。全部わかっている。この先に木が何本あるのか。この先で、少し地面の色が変わるような気がするのも。そして私は、いつも一つの方向にだけ歩く。他の場所に行こうと、現実では思っていても。実際夢の中にいると、特に何も考えずに、その方向にだけ進む。
そして、その方向には、あの日の夢を見て母のいないことによるわたしの寂しさに追い打ちをかけるように、母がいる。母は、襟元にレースがついていて、ところどころに薄く花模様が散った黄緑色のワンピースを着ている。あの日、母が来ていた服だ。「お出かけだからね」といって、母が新しく買ったワンピースだ。私は、そんな母に、近づこうとする。どうせ近くには行けないと分かっていても、近づこうとする。でもいつも、同じところで止まる。あの、根が手のような形をした木のところで、いつも止まる。先に進めなくなる。見えない壁があるかのように、進めなくなる。私はいつも、何度もその壁に体当たりをして、疲れて、その場に座り込んでいた。
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