「みんな席につけ、今日は交換生が来るぞ」
「女の子かな、男の子かな？」
「入ってこい」
私は、ゆっくり扉を開けて一歩一歩進んで行った。
私が教室に入った途端、教室中がざわめいた。
「もしかして、柚子野瑞稀かな？」
「だったら、絶対友達になりたい」
「いやいや、瑞稀がこんな地味女なわけないでしょ」
「おーい、みんな静かにしろ！自己紹介してくれ」
「…雪乃美鈴」
そう私が、言った瞬間。
教室が一気に静まり返った。
「えっ、自己紹介それだけ？」
「一瞬、柚子野に似てるって思ったけど、性格違うね」
よし、これでいいかな。
普通、悪口？を言われて喜ぶ奴は、いないけど
私にとっては、これが好都合だ。
その理由は、今さっき話題にしていた『柚子野瑞稀』とは、私だから。
『柚子野瑞稀』は、「声優」「役者」「小説家」。
この職業において、一番有名なのである。
だからそんな、有名人が身バレしてしまったら一大事だから、バレないようにするため周りに冷たくするという作戦だ。
「雪乃に質問ある奴いるか？」
おや、また沈黙ができてしまった。
まあ、いっか。
「誰もいないのかよ。神崎、手を挙げろ。うつの隣の席が雪乃の席だ」
「…わかりました」
「雪乃さん、よらしくね」
「……。」
前会った子だ。
私を見た瞬間固まってた人。
体調はもう、大丈夫なのか？
これは、後から知ったけど神崎という人は、「学校の王子さま」って言われてるらしい。
ちょっと顔面偏差値高いのがイラつくが、まあいだろう。
「……さん、雪…さん、雪乃さん！ちょっと、無視しないで！」
なんでこいつ、涙目になってるんだ？
つくづく変な奴だな。