＿＿＿＿＿楓は目を見開いた。
結真は自分よりも上背がある不良たちに対し、優勢にケンカをしている。
まるで舞のようにも思える程の美しさが、彼女にあった。
時間は本当に一瞬だったが、楓にとってはとても長い時間に感じた。
それ程までに見惚れていたのだ。彼女のケンカに。
気付いた時には結真の周りにはもう誰も立っていなかった。
『大丈夫？ごめんね、私のせいで』
楓「えっと･･･全然そんなことないよ！でも私驚いちゃった、八神さんって凄い強いんだね」
楓がそう言うと結真はキョトンとした顔で楓を見つめた。
『変わってるね･････････普通、私みたいな奴がケンカ強かったら距離取るのが当たり前だったから』
楓「そう、なの？でも私はかっこいいって思うな！あ、でも女の子って可愛いって言われた方が･･････」
『ううん、かっこいいの方が嬉しい。ありがと、否定せずに居てくれて』
そう言った結真の横顔は美しくも、どこか悲しげな雰囲気をまとっていた。
だが、その雰囲気もすぐになくなり元の笑顔に戻る。
『あのさ、友達になろうよ』
楓「え、私が？八神さんと？」
『うん』
楓「･･････いやいやいやいやいや！そんな！八神さんと私じゃなんか、ほら！色々全然違うじゃん！私は可愛くないし、勉強も運動も全然ダメで！でも八神さんはすんごい可愛いし、人気者だし、私なんかよりもっといい人が･･･！」
『すごい早口だな･････････別にイヤなら無理にとは言わないけど、私ってまあ、実際学校で見せてる性格は作ってる部分が多いんだ。”優等生で皆に優しい八神結真”で通ってるからさ。だから･･･本音で悩みを言ったり、一緒に遊んだり出来る子と友達になりたかったんだ』
少し照れたようにそう言う結真はすぐにハッとすると、手を左右に振り、
『ごめん！なんか色々変なこと言って･･･！』
楓「･････････私って良かったら友達になっても、いい？」
楓がそう言うと結真は嬉しそうにパーッと満面の笑みを浮かべ、
『ありかどう‼楓！』
笑い合う二人に知らせるように、校舎から予鈴が聞こえる。
その音に顔を見合わせる二人。そして大慌てで自分の教室に走っていった。