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短編集!

#1

もうちょっとだけ。

 駅で待ち合わせ。夕方の五時前。夏特有の風が吹き抜けていく。浴衣の袖がやわらかくゆれている。

 「ごめん、お待たせ。結構待った?」

 君の声がする。

 「全然。じゃ、行こっか」

 そう言うと、君はふわりと微笑んで隣に並んで歩く。
 改札を通ってホームに向かう。ホームにも私と同じように浴衣を着ている人がちらほら見て取れた。

 「夕方だけど、まだちょっと暑いね」

 「うん。夏ってこんなかんじだったっけって、たまに思うよ」

 「花火、ちゃんと見れるかな」

 「君が人混みに埋もれちゃいそうで怖いよ(笑)」

 「うん。……待ってそれどういう意味?」

 「ちっちゃくて可愛い、っていう意味」

 「……馬鹿にしてるでしょ」

 「してないよ(笑)」

 君は本当に身長のことをいじるの好きだよね。まったく。

 電車のドアが開く。冷房がちょっと効いた車内に二人で乗り込む。

 ここから電車で30分。

 「りんご飴って、美味しいの?」

 「食べたことないからわかんない」

 「ないんだ。ちょっと意外かも。私もないけど」

 「そっちのほうが意外だよ(笑)」

 「今日あっちで食べる予定だから、ちょっと分けてあげてもいいよ」

 「え……りんご飴ってどんなやつか知ってる?」

 「えっと、りんごが割り箸に突き刺さってるやつ?」

 「それでどうやって分けるんだよ(笑)」

 「え、反対方向からかじるのは?」

 「……。聞いた自分が馬鹿だった」

 「な、なにその反応」

 電車を降りて、改札を出る。

 「なんかお祭りって感じするね」

 「そりゃ、お祭りだからね」

 「りんご飴!」

 「はいはい、りんご飴の屋台は……あれかな」

 無事にりんご飴を楽しみました(笑)

[水平線]














 「花火って、こんな綺麗だったっけ」

 「うん。綺麗だよ」

 「もうちょっとだけ、このままがいい」

 「このままでいいよ。ちょっとじゃなくて、ずっと」





 君のぬくもりを感じられる距離で、もうちょっとだけ。

このボタンは廃止予定です

作者メッセージ

はじめまして、透歌です。
初作品なので、アドバイスとか感想とかあれば遠慮なくお願いします!

この短編集は、読者の皆様がそれぞれでいろいろな解釈をしていただけるように極力抽象的に書いています。
最後無理やり終わらせたので違和感しかないと思いますが、温かい目で見てやってください……お願いします(笑)

2024/07/23 16:41

透歌。 ID:≫4tWafj.cpInV6
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