「この辺りかな」
多分この辺りが『エメラル王国城下町』だと思う。だって、大きな城が見えるから。
『ここに来たのも二度目かぁ……！』
「？ 女神様、城下町に来たことあるの？」
『うん。あ、お城に寄っといて？お母さんの娘だ、って言えば通してもらえるよ』
「お母さんすごっ！？」
まぁ確かに、[漢字]王様[/漢字][ふりがな]バジルさん[/ふりがな]や[漢字]女王様[/漢字][ふりがな]クリスさん[/ふりがな]と旅をした仲間だけどっ！そこまでなの！？
「ま、まぁ寄っとくよ……」
『ありがと〜エマちゃん！』
とりあえず目的地は城かな。通してもらえれば、下働きとかでも住ませてもらえるかもだから。
『安心して？クリバジは優しいから』
「なら良かった……！」
王様とかその辺りって怖いかと思ったけど、まぁ母と冒険したんだから怖い事はそうそうないよね。
私が安堵したすぐ後。
[大文字][大文字][大文字]「ぎゃああああ！」[/大文字][/大文字][/大文字]
[大文字][大文字][大文字]「は、早く逃げろぉぉぉ！」[/大文字][/大文字][/大文字]
大声が聞こえた。
「何だろ？」
『あ〜。こりゃ魔物だね、うん。私の力でサーっと行けるほどの雑魚』
「お母さんとかも？」
『そりゃあ、ねぇ。ありがとね〜』
「う、うん？」
女神様は母と知り合いなのかなぁ。友達とか？まぁ母は凄いから天界に居ても変ではないか。
話を戻すけど。倒したいなぁ……でも力なんてないし……
「王国だし、騎士団が居るといいけど……」
戦ってる事を祈ろう……ってあれ？
「体が……光ってる？」
ほんのりと赤く光る体。何これ！？怖い！
『それは[漢字]勇者[/漢字][ふりがな]ブレイ[/ふりがな]って[大文字]後ろ！[/大文字]』
「え？」
後ろを振り返る。そこに居たのは……
「なんかやばそうな魔物！？」
『正確に言えばキングベアーねっ！？』
突っ立っていた私を狙ったらしい。
逃げようにも足が竦む。私の足、動けぇ！怖いからって止まるなぁ！死ぬよ！ガチで！
「でも美味しそうなんだよなぁ……！」
『それは言えてる。なんかドロップしないかな……エマちゃん熊捌ける？』
「いや無理。捌いた事ないし」
『あれ？教えた気がするのになぁ』
「習った事ないよ？」
とか言ってる場合じゃない！どする、私！？
『切るっ！エクスカリバーで切るっ！』
「はぁ！？」
『は〜や〜く〜！エマちゃんまであの世行きは流石にキツイよ！私とマイロがっ！』
「う、うん！」
確かにキツイね！半日くらい前に決意したばっかなのに！それじゃあ……
「と、[大文字]とりゃ、あ[/大文字]」
運動不足かつ引き篭もりの私にとっては、ここまで歩くのもかなりの疲労だった。それが、今、表面化して……

[明朝体][斜体][中央寄せ]バタッ[/中央寄せ][/斜体][/明朝体]
倒れた。あ、死んだ。ごめんみんな。父も母も、女神様も。みんな、ごめんなさい……熊が私に向かって───
[太字]『複合魔法・[漢字]大爆発[/漢字][ふりがな]ビッグ・エクスプロージョン[/ふりがな]！からの〜[漢字]剣[/漢字][ふりがな]ソード[/ふりがな]ッ！』[/太字]
燃えながら、切り刻まれた。
「え？」
『ふっふっふっ。さっすが私〜。何せ私は前代未聞の[漢字]全属性[/漢字][ふりがな]オールアトリビュート[/ふりがな]』
「女神様さすが！凄い、あの熊を一瞬で倒しちゃうだなんて！」
『ありがと〜エマちゃんっ！』
その直後。
「魔物が倒れてるわ！」
「見ろ！エクスカリバーを持ってるぞ！伝説の武器だ！」
「彼女は勇者なの！？」
周りから歓声が聞こえた。
「あ、あのぉ〜。私じゃなくて女神様が倒したんですけど……」
『エマちゃん。更にざわつかれるよ』
「確かに」
あ〜あ。失敗した〜。
その時、一人が私に声を掛けた。
「貴女、名前はなんて言うの？」
「えーと、エマ…じゃなかった。ソフィアです」
「ソフィアね！[小文字]偽名を使う少女、絶対あの子の娘じゃない。[/小文字]ま、まぁ。ソフィア、貴女は勇者よ！」
その後の話を聞くに彼女はクリスさんと言い、父と母と……(以下略)で、エメラル城の女王様らしい。ついさっき話題に上がっていた人だね。
だがしかし、とんでもない人に勇者って言われたよ……
[小文字] 「でも本当に勇者なの？私は確かに勇者の娘だけど」[/小文字]
『まぁ、エクスカリバーを持てたって事だし。そう思ってもいいんじゃない？』
「そっかぁ……？」
しばらくは[太字]自称勇者[/太字]として生きてこっかな……