side KAITO

「かいとさん、そっちの作業、終わりましたか？...おーい、かいとさーん。」

　目の前でのっきたんに手を振られて気づく。

「あ、悪い。ああ、終わったぞ。」
「.......かいとさん、ちょっと休みますか？こっち人数足りてるので。」
「いいか？じゃあ、ちょっと頼む。」

　のっきたんの言葉に甘えることにして俺は教室の壁にて少し休むことにした。のっきたんは「了解です」とだけ言い作業に戻っていった。俺がぼーっとしていた原因は、あの○○が友達になったという女子について。顔立ちが似ているのだ。俺の母親に。ミディアムボブに揃えられた毛先には、赤色のグラデーションがかかっている。そして、瞳は赤い。頭を回転させて可能性を限りなく探ってみる。俺の家族構成は父親、母親、妹、俺。母親に似ているということは不倫をしていたのかもしれない、と考えてみるもその可能性はない。そんなことする人間じゃなかった。俺が産まれる前に産まれたのが彼女なのかもしれない。そして年内に母親が結婚して産まれたのが俺だとするならば、俺と学年が同じじゃなければ説明がつかない。やはり、俺の中で何かの違和感が引っかかってしまう。当たり前だが、あいつには俺以外の血も入っている。そのせいか、どことなく誰かに似ている気がする。瞳の色も髪色も俺をコピーペーストしたようだが、顔だけは、俺の知っている人のような気がする。それならば、すぐそばに俺の母親の彼氏がいたのだろうか。もしかしたらそうではないのかもしれない。すべて俺の思い込みかもしれない。顔立ちが似てるだけでこんなに深く考えてはいけない。全て思い込みなのだ。

「のっきたん。作業手伝うぞ。」

　うじうじしていてもしょうがないため、思い切ってのっきたんに手伝うよ、と話しかけた。

「あっ。いいですか？じゃあ、これ運ぶの手伝ってください！この作業終わったら、他クラスの手伝い行けるので、●●さんのクラスへ行きましょうか。」
「えっ、そうなのか？じゃあ、早く終わらせよう。」

　もちろん、○○に会いたいという気持ちもある。だが、今はそれと同じぐらい『赤咲夜瑠』という少女に会いたいのだ。あいつにいろいろと聞かなければならないことがたくさんあるから。

「作業終わりましたね〜っ！私少し休憩してから行くので、先に●●さんのクラスへ行っておいてください！」
「あ、いいのか？わかった。じゃあ、先行くな。」

　のっきたん、ありがとう。そう思いながら俺は教室を後にした。

「●●〜。来たぞ！」
「あっ。かいとさん！」

　○○が満面の笑みで俺を迎えると当時に、俺は見つけた。

　隅で飾り付けをしている『赤咲夜瑠』を。