side なろ屋

「単刀直入に言うと、○○は今家族といるっていうことなんだよな...？」

　不安がってかいてぃーはそう言う。そらちゃんの推測が本当だとするならば、まずい所の話ではない。また愛しの○○の心に傷がついてしまうからだ。翔くんが忙しなく叫んだ。

「○○の家はたしか南方面やったやんな？じゃあ、今すぐ○○の家に言ったら手っ取り早いんちゃう？はよいこ！」

　走り去って行こうとする翔くんを、かもめんは「だめだ！」と叫んで引き留めた。そして先ほどの声と一変して、落ち着いた声色で話し始める。

「今俺たちが行ったところで○○が返ってくると思うか？逆に怪しまれてもう返してくれないかもしれないだろ。だから...。俺、今策を考えた。」
「.....策って、どんな？」

　一気にテンポ良く話すかもめんに習って、僕もすぐに返事を返した。僕のその言葉を聞いたかもめんはまた話を始める。

「それは......まず。子供っぽいにょきをとそらちゃんは庭にボールが落ちたから拾ってきてほしいと○○の家に行って家の人にそう言う。そしてそのドアが空いた隙になろぴと翔ちゃんがバレないように家に侵入。そして○○を連れ戻す...って考えたんだけど。現実はそう上手くいかない。だから4人が動いて、もしも捕まっても予備の俺とかいにゃん...と俺の助っ人3人も一応準備はしてあるから、その5人でなんとかする。まぁ、これがうまくいくなんて俺はみじんも思ってないけど。」

　のきが「結構いいアイディアだと思います！」と言う。そして、そらちゃんはつられてしまったのかそらちゃんも同様のことを言った。

「そうだね！じゃあみんな！さっそく行くでいいかな？」

　僕がそう言うと、かもめんも難しそうな顔で頷く。

「....あぁ。失敗する確率の方がダントツで高いんだ。無理だと思ったら絶対に諦めろ、いいな？」

　かもめんは念入りに僕たちにそう告げた。思い立ったが吉日。僕たち4人は打ち合わせをした後○○の元家へと向かった。

　そして、作戦は始まった。

　打ち合わせの結果、僕と翔くんは影からこっそりと見守る係。そして、かもめんが言っていた通りドアが開いた一瞬のうちに家に入る係も兼任している。そして、そらちゃんとのきがインターホンを押す。そして、ぴーんぽーんと軽快な音が鳴った。

「はーい。....あれ。どうかされましたか？」

　恐らく、中学生女の子ぐらいの子供が家から出てきた。僕たちの○○には負けるであろう。きっと顔も性格も全て。どうでもいいことを考えていると、そらちゃんが名演技を披露した。

「ごめんなさい、庭にボールが落ちちゃって....」

　女の子はにこっと笑って言う。

「あ、全然いいですよっ。....よければ、中に入って休んでいきますか？」

　あちらから家に招いてくるとは、対応する術がなかった。そらちゃんとのきなら正しい選択をしてくれると信じて、僕たちは見守った。

「..........いいんですか？じゃあ、お邪魔します。」

　のきの言うことに、僕は息を飲んだ。その選択は危ないと思ったから。だが、のきは手を後ろに回してハンドサインを僕に見せてくれた。恐らくだが、『かもめさんたちと家を囲ってください』と合図を出していた。僕は呼吸音と声をできるだけ小さくし、かもめんに電話をかける。とぅるるるるるるるるる...とスマートフォンの機械音が小さく鳴り響いた。

「あ、もしもしかもめん？」
『なろぴ。どうした？』
「のきから合図があったんだけど、この家を囲ってほしいんだって。」
『それは...。俺の知り合いを呼んだほうがいいか？』
「いい...かな。それはほんとに困った時に手動させるよ。」
『了解。今すぐ向かう。』

　淡々と連絡を入れた後、かもめんは電話を切ってしまった。冷や汗が僕の肌を伝う。そして、その冷や汗の正体はきっとのきたちが危ないと訴えていた本能による物なのだろう。無意識のうちに、不安で呼吸が荒くなった。