side kamome

　○○が女神の生まれ変わりだと発覚してからもう3週間。ちょうど退院した時期と同じだった。そして、女神の生まれ変わりが誕生したと日本中で大騒ぎで、今日日もマスコミが俺たちの家に殺到している。そのマスコミを俺とかいにゃんと翔ちゃんで追い返している真っ最中。

「生まれ変わりだと発覚したのはいつ！？」　「生まれ変わりの恋人は！？」「美貌の秘訣を！」

　女性の声も男性の声も混じって聞こえる。どれもがうるさくて敵わない。

「おい、あんたらうるさいで！」

　翔ちゃんがそう叫ぶも、彼らには届かなかった。それを見たのかかいにゃんも大声で叫ぶ。

「おい、聞いてるのか！？質問ならあとでまとめて返す！今は帰れ！」

　そのひとことは聞こえていたのか、マスコミの人間たちに効果てきめんで、「じゃああとで質問送るので必ず！」　「今日中にお返しくださいね！！」と言ってそそくさと帰っていった。かいにゃんは賞賛すべきだが一斉にくるであろう質問をまとめて返信しなければならないのが厄介というものだろうか。そんなことをしている暇があるなら○○と一緒にいたいというのに。

「質問真面目に答えてたら、○○こっち向いてくれるかな？」

　翔ちゃんがそうぼやく。翔ちゃんにしては名案で、真面目で誠実な人になるということ。その一縷の希望を信じて大量に届いてあるであろう質問を真面目
に対処することを決めた。

「あっ、翔さん、かいとさん、かもめさんっ。マスコミ追い出してくださってありがとうございます...。ほんと、迷惑かけてばかりでごめんなさい。」

　○○の言う通り、マスコミは俺たちのことなど一切も考えず家に押し掛けてきた。だが、○○のためならなんだってできる。

「いいや。○○のためならなんだって俺はするからな。」

　俺は自慢げにそういう。その言葉を、土砂降りの雨が遮った。

[太字]ザーーーーーッ[/太字]

「うっわぁ。派手に降り始めたなぁ.....。」

　なろぴが独り言のように言う。冠水してしまいそうなほど雨が降っていて、それに雷も落ちてきてしまいそうだ。しばらくは外に出られそうにないと確信する。

「これは外に出るの、危なそうですね。」

　下手に出てしまったら何かの事件に巻き込まれそうだが、もうすでに巻き込まれていることを考えると面倒ごとが増えるのは勘弁してほしい。

[小文字]「〜〜っ！〜〜！」[/小文字]

　土砂降りの雨に遮られてよく聞こえないが、誰かが○○の名を呼んでいる気がする。それに不信感を抱いた俺は、「.....なんか○○の名前呼んでるやつ、外にいねぇか？」と伝える。その話にはみな賛同してくれた。

「ほんとだ...。聞こえるね...。」

　そらちゃんも不安がって言う。

　何かの幼虫が這いまわるような奇妙で背筋が凍るような感覚を体験したのは、一瞬だった。

　ぴーんぽーん、と軽い音を立てて玄関のチャイムが鳴る。○○は玄関の方へ急ぐように向かっていった。

「あっ、私出ますね。」
[大文字]「出るなっ！！！！」[/大文字]

　俺がそう叫んだ時には、もう遅かった。様子を見に行った翔ちゃんが焦った顔で冷や汗をたくさんかきながら言う。

[大文字]「○○が....おらへんっ......！！」[/大文字]

　その言葉を聞いた時、俺たちの間で一瞬時が止まったような気がした。