なろ屋さんとも、みなさんとも話せて目も合わせられる。それなのに、十分満足しているはずなのに何か無くしてしまっている以上、心が落ち着かないのだ。記憶を取り戻したいとは思っているが、どうしても思い出せない。何があっても、記憶は思い出したい。私がそう物思いに耽っていると、ドアががらがらがら！と開いた。

「○○！」

　そこに立っていたのは、珍しく来てくれたかいとさんだった。

「かいとさんっ。来てくれてありがとうございます！」

　なるべく心配をかけないように笑顔を心掛けて、かいとさんに返事をする。だが、かいとさんは少し気まずそうに私を見た。

「.....ああ。あの、退院まであと何日くらいだ...？」

　体調もだんだんよくなってきて、リハビリもしっかりこなせている。つい最近そろそろ退院しても良いころだ、と言われたのだ。

「4日ほど...ですかね。」

　そう言うと、かいとさんは心配なのか少し曇らせた表情をしながら「4日か...。長いな。みんな○○の事心配してるから、早く戻ってきてくれよな。」と言う。まるで、飼い主から待てをもらった子犬のようにしょんぼりしていた。

「もちろんですっ！完全回復したら必ず向いますのでっ！」
「......ありがとう。じゃあ、俺はこれで。」
「はいっ！またねっ！」

　ばたん。かいとさんは、私の病室から去っていく。いつも、私の体調を気遣ってかみなさん直ぐに帰ってしまう。早く、みなさんのために記憶を取り戻したい。自意識過剰かもしれないがかいとさんも、みなさんも態度からして私を大切に扱ってくれている。だから、その期待のようなものに応えるため、どんな目にあっても、彼らのために記憶を取り戻したい。

　奇麗な夕日に、赤の星が降り注いだのは私の弱き心が見せた幻覚だろうか、その幻覚を見たような気になった時、私は＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

「っ、ｹﾎｯ、ｺﾞﾎｯ...」

　風邪かもしれない、こんな重要な時に。不運だとしか言いようがない。それに、みなさんが心配しているというのに、だ。前はのっきさんが風邪をひいてその看病をしていたら私ごと風邪をひいて、のっきさんより体調を悪くしてしまった事もあったと、少し前のことを懐かしみながら思い出す。あの時のように、風邪になってしまったのだろうか。

　平然と思い出してしまったが、こんな記憶思い出せなかったはず。そもそも、何故これがあの人たちとの記憶だと私はわかっているのだろうか。

あれ、まさか

[大文字]記憶が......戻ってる...？[/大文字]