めろんぱーかーに愛されてます。【リメイクver.】
side そらねこ
「ありがとうございました〜。またご来店くださ〜い」
「ふふっ♪●●、喜んでくれるかなっ!」
茜色に染まりかけた清々しいほど綺麗な青空の下、僕は軽い足取りで帰路についた。片手には、可愛くリボンで装飾されたカップケーキを持ちながら。●●はどんな反応をするのか、妄想が止まらない。
わくわくした気持ちを持って帰っていた僕は、その明るい気持ちは裏切られる事を今はまだ知らない。
ぷるるるるるるる…とバイブレーションと共に機械音が小さく鳴った。ポケットの中から、スマホを出し電話をとる。応答ボタンを押した耳にスマホをあてた。
「は〜い、もしもし。」
荒い息遣いで喋っている電話越しの人は、なろ屋さん。緊急事態なのかもしれない、と僕はついつい身構える。
『っ、あ、もしもし、そらちゃん!?』
焦った声で僕の名前を呼んだ。すごく取り乱しているのか、落ち着きが全くと言っていいほどない。身構えたのは正解なのかもしれない。
「どうしたんですか?」
『っ、あのね。落ち着いて聞いてね。』
固唾を呑んで僕はなろ屋さんの言葉を聞く。不思議な事に、蟲が自分の身体を這い上がってくるような気持ちの悪い感覚が僕を襲った。深刻な事を話そうと、なろ屋さんがすうっ、と深呼吸をして言う。
『○○が...
事故に遭った。』
「えっ」
ごとり。スマホが硬い地面に当たる鈍い音が聞こえた。1人で出かけたわけがない。みんなの溺愛っぷりを見れば●●たった1人で歩かせるわけがないからだ。誰かと行動していたのに、それを防げる術はなかったのか、などと考えてしまう。事故でも、もしかしたら軽い怪我かもしれない、と希望を見出そうとするが、僕の憂鬱な思考がそれを邪魔してくる。その思考は、僕の頭の中を支配してしまう_____
[太字]どうして、どうしてみんな僕を置いていってしまうの[/太字]
ハッと声をあげ、正気に戻り地面に横たわっているスマホを拾い上げた。なろ屋さんのスマホ越しの声が小さく聞こえている。僕はまた通話へと向かった。
『そらちゃんっ!?聞こえてる?』
「はい、聞こえてます。」
出来るだけ正気を保てるように取り繕う。なろ屋さんは『病院、めろん病院。搬送されたから早く、来てね...』とひとことだけ言い放ち、通話を切ってしまった。言われなくても行く。体力が切れても、足が勝手に動く。その間僕は、最低の状況を考えてしまい●●の安息を願うことしか出来なかった。
_病院_
●●がいるという病室の号棟へと走る。真っ白な扉を勢いよく開けた。
「そらちゃんっ!!!」
のっきさんが僕に抱きついてくる。うなじに汗が浮かび上がっており、とても辛そうだ。僕に倒れ込むようになった。
「....のっきさん...。」
冷や汗と脂汗が混ざっている挙句、はあはあと走ってもいないのに荒い息。両目の端に涙すらも溜めている。バッ!と空を切る音が聞こえたかと思えば、先ほど電話をかけてきてくれたなろ屋さんは、僕に大きく頭を下げていた。
「っ、そらちゃんっ....ごめんなさい、僕が、僕が...。」
ぽつりぽつり一雫ごと流れる涙が地面に小さな水たまりを作っている。肩を震わせながら言うなろ屋さんを励ますために、翔さんが口を開いた。
「なろっち、ちゃうやん、なろっちのせいちゃう。車が悪いねんから。」
翔さんが涙を落としながらもなろ屋さんを慰める。なろ屋さんは励まされたものの、更に悲しくなったのか更に涙を流していた。
「なろっち、自分を責めなくていいんだ...。車を恨め...」
血がどろり、と強く噛み締めている唇から流れる。壁を叩きすぎたせいか、拳すらも赤くなり、見てるこちらが痛々しい。
「.......ねぇ。●●は、●●はどうなの...?」
不安で押しつぶされそうになりながらも、誰かに問いかけるように言うと、涙と不安で瞳を揺らして狼狽えていてもかもめさんが答えてくれた。
「...大丈夫だ...と、思いたい.....。」
まるで、大丈夫じゃないかもしれないみたいな言葉遣いに、僕の不安感が強まる。
「どういうこと、●●大丈夫じゃないの...?」
横に立っていたお医者さんが口を開いた。
「いえ...。命に別状はないと言われてはいます。ただ...。」
「ただ?なに?」
先に理解していたであろうみんながぎゅっ、と目をつむる。そんなに辛く理解出来ない事なのかもしれない、という気持ちがまた僕の不安感を煽った。
[太字]「ただ...これから目を覚ますのは時間の問題だと言われています。」[/太字]
やり場のない怒りと悲しみが込み上げて来て、息を切らしてお医者さんからの話を聞くしか出来ない。その言葉を聞いた瞬間、視界が歪む程の涙を僕は流した。歪んだ世界の中でも、午睡のように穏やかに瞼を閉じている君が、視界でずっとちらついている。ちらつく程、現実を理解しなければという焦燥感が強まっていく。
「っ、う、うわぁぁぁぁぁんっ!!!!!」
僕たちみんなの嗚咽混じりの叫び声と泣き声が真っ暗な闇に溶けて消えていく。ひとつの小さな街で起きた誰も知らないささやかな出来事だけれど、後悔の壁がとても大きくて小さな壁すら乗り越えられそうにない。
星が灯らない孤独な真っ暗な空が、嫌に今でも記憶に混じっている。
「ありがとうございました〜。またご来店くださ〜い」
「ふふっ♪●●、喜んでくれるかなっ!」
茜色に染まりかけた清々しいほど綺麗な青空の下、僕は軽い足取りで帰路についた。片手には、可愛くリボンで装飾されたカップケーキを持ちながら。●●はどんな反応をするのか、妄想が止まらない。
わくわくした気持ちを持って帰っていた僕は、その明るい気持ちは裏切られる事を今はまだ知らない。
ぷるるるるるるる…とバイブレーションと共に機械音が小さく鳴った。ポケットの中から、スマホを出し電話をとる。応答ボタンを押した耳にスマホをあてた。
「は〜い、もしもし。」
荒い息遣いで喋っている電話越しの人は、なろ屋さん。緊急事態なのかもしれない、と僕はついつい身構える。
『っ、あ、もしもし、そらちゃん!?』
焦った声で僕の名前を呼んだ。すごく取り乱しているのか、落ち着きが全くと言っていいほどない。身構えたのは正解なのかもしれない。
「どうしたんですか?」
『っ、あのね。落ち着いて聞いてね。』
固唾を呑んで僕はなろ屋さんの言葉を聞く。不思議な事に、蟲が自分の身体を這い上がってくるような気持ちの悪い感覚が僕を襲った。深刻な事を話そうと、なろ屋さんがすうっ、と深呼吸をして言う。
『○○が...
事故に遭った。』
「えっ」
ごとり。スマホが硬い地面に当たる鈍い音が聞こえた。1人で出かけたわけがない。みんなの溺愛っぷりを見れば●●たった1人で歩かせるわけがないからだ。誰かと行動していたのに、それを防げる術はなかったのか、などと考えてしまう。事故でも、もしかしたら軽い怪我かもしれない、と希望を見出そうとするが、僕の憂鬱な思考がそれを邪魔してくる。その思考は、僕の頭の中を支配してしまう_____
[太字]どうして、どうしてみんな僕を置いていってしまうの[/太字]
ハッと声をあげ、正気に戻り地面に横たわっているスマホを拾い上げた。なろ屋さんのスマホ越しの声が小さく聞こえている。僕はまた通話へと向かった。
『そらちゃんっ!?聞こえてる?』
「はい、聞こえてます。」
出来るだけ正気を保てるように取り繕う。なろ屋さんは『病院、めろん病院。搬送されたから早く、来てね...』とひとことだけ言い放ち、通話を切ってしまった。言われなくても行く。体力が切れても、足が勝手に動く。その間僕は、最低の状況を考えてしまい●●の安息を願うことしか出来なかった。
_病院_
●●がいるという病室の号棟へと走る。真っ白な扉を勢いよく開けた。
「そらちゃんっ!!!」
のっきさんが僕に抱きついてくる。うなじに汗が浮かび上がっており、とても辛そうだ。僕に倒れ込むようになった。
「....のっきさん...。」
冷や汗と脂汗が混ざっている挙句、はあはあと走ってもいないのに荒い息。両目の端に涙すらも溜めている。バッ!と空を切る音が聞こえたかと思えば、先ほど電話をかけてきてくれたなろ屋さんは、僕に大きく頭を下げていた。
「っ、そらちゃんっ....ごめんなさい、僕が、僕が...。」
ぽつりぽつり一雫ごと流れる涙が地面に小さな水たまりを作っている。肩を震わせながら言うなろ屋さんを励ますために、翔さんが口を開いた。
「なろっち、ちゃうやん、なろっちのせいちゃう。車が悪いねんから。」
翔さんが涙を落としながらもなろ屋さんを慰める。なろ屋さんは励まされたものの、更に悲しくなったのか更に涙を流していた。
「なろっち、自分を責めなくていいんだ...。車を恨め...」
血がどろり、と強く噛み締めている唇から流れる。壁を叩きすぎたせいか、拳すらも赤くなり、見てるこちらが痛々しい。
「.......ねぇ。●●は、●●はどうなの...?」
不安で押しつぶされそうになりながらも、誰かに問いかけるように言うと、涙と不安で瞳を揺らして狼狽えていてもかもめさんが答えてくれた。
「...大丈夫だ...と、思いたい.....。」
まるで、大丈夫じゃないかもしれないみたいな言葉遣いに、僕の不安感が強まる。
「どういうこと、●●大丈夫じゃないの...?」
横に立っていたお医者さんが口を開いた。
「いえ...。命に別状はないと言われてはいます。ただ...。」
「ただ?なに?」
先に理解していたであろうみんながぎゅっ、と目をつむる。そんなに辛く理解出来ない事なのかもしれない、という気持ちがまた僕の不安感を煽った。
[太字]「ただ...これから目を覚ますのは時間の問題だと言われています。」[/太字]
やり場のない怒りと悲しみが込み上げて来て、息を切らしてお医者さんからの話を聞くしか出来ない。その言葉を聞いた瞬間、視界が歪む程の涙を僕は流した。歪んだ世界の中でも、午睡のように穏やかに瞼を閉じている君が、視界でずっとちらついている。ちらつく程、現実を理解しなければという焦燥感が強まっていく。
「っ、う、うわぁぁぁぁぁんっ!!!!!」
僕たちみんなの嗚咽混じりの叫び声と泣き声が真っ暗な闇に溶けて消えていく。ひとつの小さな街で起きた誰も知らないささやかな出来事だけれど、後悔の壁がとても大きくて小さな壁すら乗り越えられそうにない。
星が灯らない孤独な真っ暗な空が、嫌に今でも記憶に混じっている。
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