私は生まれながらの人生勝ち組らしい。

有名な企業グループの一人娘。

人目を引く華やかな容姿はもはや妬む者もいない。

地頭が良く人並みに努力すれば天才と呼ばれた。

人に最低限優しくさえいれば人にも愛される。

もちろん親にも。

漫画や小説みたいな堅苦しい真面目な親はいない。

いつでも私を尊重して、大切にしてくれる。

令嬢あるあるの体が弱い設定もない。

[小文字][小文字]多分、周りには悩みなんてなさそうって思われてるんだろうけど、

常に誰にでもニコニコと愛想よくしているのは少し疲れる。[/小文字][/小文字]

しかし、誰もが夢見るようなそんな日常は壊された。

始まりは中1が終わった後の春休み。

ただの発熱だった。

恐らく風邪だろうと私は思い医師に診察してもらう。

途中、医師の顔が曇った。

聞いたこともない病名だけ告げられ、大きな病院で診るように伝えられる。

結果。余命1年。5年生存率は10％以下。

音として認識してから言葉の意味を理解するのに時差が起こる。

混乱して、泣いて、現実逃避しそうになって。

落ち着いてから、もう一度医師の話を聞く。

治療方法は見つかっていないらしい。

このときの絶望感は今まで味わったどんな絶望より大きかったと思う。

この日から、私は死を待つ人となった。