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君といた夏

#1

もう一度会いたい。 いなくなってしまった君に。

 6月。今日は雨だった。外では雨がポツポツと降っている。[漢字]村井慧[/漢字][ふりがな]むらいけい[/ふりがな]はそんな雨をぼーっと見ていた。今は昼休み。周りは賑わっている。
「そういえばあのときもこんな雨だったな。」
 と、心のなかで思った。そして、あのときのことをふと、思い出した。


 そう、あのときはとてもじゃないほどの雨が降っていた。このとき高校1年生だった慧は4時間目の授業をぼーっと聞いていた。その4時間目の授業が終わり、お昼休みの入った。慧が通っている高校は昼食と昼休みが一緒になっているのだ。他の生徒が移動している中、慧は自分の机にお弁当を広げた。周りにはいつもどおり誰もいない、そう思った瞬間、甲高いのに綺麗な声が耳に届いた。
「君、一人?」
びっくりした。声が出ないほどびっくりした。一瞬固まりながらも慧はゆっくりと振り向いた。
「ごめんね!驚かせるつもりはなかったんだけど、、、。」
その女の子は慧を見るなり顔をこわばらせた。
「いや。謝らなくていいよ。」
「いやいや!一人の時間邪魔しちゃってごめんね。」
彼女は申し訳そうに軽く頭を下げた。
「…で、いつも昼食一人で食べてるの?」
「ああ。うん。」
「そうなんだ。私もね、今日一人なんだ。」
「ああ。そうなんだ。」
「だから、その、、いっ、一緒に食べない!?」
彼女は勢いよく言った。
「あ。うん良いよ。」
「ほ、ほんとっ!?やったー!」
彼女はは軽くガッツポーズをして喜んだ。
「はは。そんなに?」
「うん!一人だと美味しくないもん。」
彼女はそう言いながらにこりと笑顔を見せた。


5時間目になった。
「じゃあ、席替えするぞー。」
担任の教師が言った。周りはざわついた。席替えはみんな楽しみにしていていわば行事みたいなものだった。勿論、慧は喜ぶこともないが。生徒ほぼ全員が
教師のもとに行き、くじを引きに行った。慧も、最後の列に並んだ。
慧の席は左端の一番後ろ。いわば主人公席ともいえる。慧は机を持ち、その席に向かった。その席につくと、隣の席の人はまだ来ていなかった。
「まあこの席ならぼーっとしてても大丈夫そうだな。」
そう思いながら慧は机に顔を突っ伏した。すると、がたっと机の音がした。
右を向くと、いまさっきあったような彼女の姿があった。
「あ。」
「あ。」
ほぼ同時に二人は言った。名前を聞くのを忘れたのでわからないけど、おそらく
さっき一緒に昼食を食べたあの子だ。
「おっ。またあったね。」
「あっ、さっきの」
「うん!まだ名前を名乗っていなかったね。私の名前は[漢字]如月灯[/漢字][ふりがな]きさらぎあかり[/ふりがな]。よろしくね!」
彼女は微笑みながら言った。


こうして、慧は灯と仲良くなった。色んな話をするうちに自然と仲良くなっていた。一緒に昼食を食べたり、一緒に帰ったりして、慧と灯の距離は徐々に縮まっていった。
そして、季節が夏に移り変わった頃、慧は灯に告白すると決心した。
2人はとある海に行った。綺麗な夕日に輝く灯が慧が生きていた中で一番綺麗だった。
「今日楽しかったね。」
「うん、、。」
「…どうかした?具合悪い?」
「ううん。大丈夫」
「…。」
「あ、あの、、灯。」
「ん?何?」
灯が振り返った。慧は灯を一生懸命に見た。
「なっ何?そんなに改まっちゃって、、。」
「その、俺、灯のことが好きだ。」
「っ!?」
灯の顔が自然に赤くなっていくのがわかった。すると、灯の目から光るものが
流れた。
「うん、、っ。私もっ、、。慧くんのことがっ、、。好き。」
涙が溢れながらも灯は一生懸命声を絞り出して言った。そのとき、慧は幸せが
押し寄せてきた事がわかった。これが幸せなんでと改めて感じた。


付き合ってから1、2ヶ月後。灯に呼び出された。呼び出された場所はあの日
慧が灯に告白したあの海だった。
「海、、。」
「うん!また来たくなっちゃって。」
そう言いながら灯は夕焼けを見た。
「で。なんでここに?」
そう慧が首を傾げると、灯が静かに言った。普段のあの元気のあるあの声はどこか消え去ってしまったように。
「、、。お別れの挨拶をしなきゃだから。」
「、、!?」
慧は一瞬何を言っているのかわからなかった。いつまでも一緒にいられると思ったからだ。
「、、っ。なんで、、!?」
「言えない。」
「言ってくれ。」
「だめなの。」
「なんでだめなんだ。」
「だめなものはだめなのっ・・・!」
そう灯が叫んだ。
「俺に言えない理由があるのか。」
「うん。…だからこの海で最後の別れをしようと思って。」
「…。」
「ごめんね。」
「私のわがままで、、。」
灯が涙を流しそうになった。それを抑えるように慧は
「もう何も言わないでくれ。」
と突き放すように言った。
「・・・っ、」
そのとき、たくさんのスーツを来た男たちが慧達を取り囲んだ。
「っ!」
そのスーツを来た男らは灯を捕まえた。
「・・・っ!待って!まだ、、あともう少しだけでも!お願い!」
「灯!!」
反射的に動いてしまったのは、きっと灯を離したくなかったからだ。慧は咄嗟に
動いて引き離そうとした。が、この男たちは力が強すぎてびくともしない。
「っ!くそ!」
「慧」
「!」
一瞬体をぐいっと持っていかれた。引っ張っていたのは、、灯だった。
「灯、、、!」
「最後に言いたいことがあって。」
「、、、!」
「こんな私を好きになってくれてありがとう。一緒にいてくれてありがとう。
幸せにしてくれてありがとう。」
「、、、、っ!」
「大好き。、、、、、、またね。」
そうかすれるような小さい声で慧の耳に囁いた。
繋いでいた手は引き離されていた。



その2年後ー
高校3年生になった村井慧がここにいる。灯との思い出を思い出したあと、
チャイムが鳴り響いた。
「よーし。5時間目の授業始める前に、席替えするぞー」
教師の声が響き終わったあと、生徒たちが声を上げ一瞬で賑やかになった。
「うるさ。」
そう思いながらも歓喜の声を聞いていると、
「うるさいわね。そう騒ぐなら、私はもう引いちゃうわよ?」
ツーンとした、明らかにツンデレな声を出したのはクラスで人気の美少女、[漢字]桜桃華[/漢字][ふりがな]さくらとうか[/ふりがな]だった。びっくりした。あんなところであんな声を出すなんて。そう桃華が言ったあと他の生徒も桃華の後ろにぞろぞろ並んだ。慧もいつも通り一番後ろに並ぶと、くじはもう目の前に来ていた。そのくじを持っていたのは桃華だった。
「ほら、あなたもどうぞ。」
「おい、何するんだよ!」
おそらく引く予定だった前の男子が声を上げた。
「うるさいわね。あんたたちがうるさいのが悪いのよ。」
そう、つんとした声で前の男子を突き放すと、桃華が優しく微笑みながら囁いた。
「あなたはうるさくなかったから先どうぞ。いつも後ろだったでしょ?」
慧はくじを引くと、桃華は前へ戻った。慧はそのまま立ち尽くしていた。

慧が座る席は左端の一番うしろ。少し引っかかるところもあるがそれはさておき。机を移動した。
隣の席はまだいない。その間にはぁっと大きなため息をついた。
「やっぱりここの席は格別に落ち着くな。」
そう思いながらリラックスしていると、ふわっと甘い桃の匂いが慧の鼻をくすぐらせた。この匂いどこかでと考える暇もなかった。そこにはもういたのだから。
「あら、さっきぶりね。」
あのときと同じような言葉が耳に届いた。

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作者メッセージ

こんにちは。寧です。これが初投稿の小説です。もしかしたら、意味を間違えて書いてしまっているところがある可能性があるので、ご了承ください。
灯との過去をもう少し抑えたかったのですが、つい、長々と書いてしまいました。長編小説になってしまいましたが、気軽に読んでくださいね!
コメントもお待ちしております!駆け出し小説家を暖かく見守ってくれると
嬉しいです。この度は読んでくださりありがとうございました!

2023/10/21 16:06

ID:≫4tWafj.cpInV6
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