バーバラ様のお部屋に入ると、そこにバービーは居なかった。
「あら、バービーはどうしたの？」
「彼女は自室に居ます。連れてくるので、少々お待ちください」
そう言ってバーバラ様は、バービーの部屋へと歩いていった。
「…………バービー、掃除で疲れてるのかしら。バーバラはすす量が多いから」
レイリー様は、バーバラ様のお部屋をじっと見ながら、そう呟く。
確かに、バーバラ様のお部屋の掃除は、とても大変そうだ。なんたって、館が一日に生産するすすの六割は、バーバラ様が出している、というのだから。もしレイリー様が、六割もすすを出すとしたら……とてもじゃないが、耐えられる気がしない。
「……ですね。大変です」
そうこうしていると、バーバラ様が、バービーを連れてやってきた。
「レイリー様……。こんにちは」
「ええ、こんにちは。バービー」
いつも思う。
レイリー様は、とても優しいお方だ。今だって、バービーやバーバラ様に、とても優しくなされている。レイリー様の生き人形になれたのだから、私はいつも幸せだ。
「ああ、レイリー。そこに座ってどうぞ。…レイも、どうぞ」
レイリー様と一緒に椅子に座る。そのあと、私達に続いて、バーバラ様とバービーも座った。私は、バービーと向かい合わせになる。
「…それで、今日はどのような用件で？」
「用は無いわ。全く無い。でも来たの」
レイリー様は、いつでも正直だ。バーバラ様は、ため息をついている。だけど、すすは全く出ていない。
「そうですか………。まぁ、いつもの事ですね」
呆れたみたいに、バーバラ様はそう言う。思わずレイリー様の方を見てみたが、レイリー様は＿＿笑っていた。