二次創作
蛇の妹
変な8ヶ月だった。
棪堂 哉真斗と焚石 矢に何故か目をつけられて、追い回せれて連れ回された変な8ヶ月。
転生したり、仕事でそこそこの修羅場を掻い潜ったり、そこそこ濃い人生を歩んでいる自覚がある私は変だと思うくらいには、変な8ヶ月だった。
でも、その8ヶ月があと1日で9ヶ月に変わろうとしている。
9ヶ月。私が両親がいつ離婚するかを賭けた賭けで、私が1万3000円を賭けた期間。
2週間前まで、両親は不仲の気配なんて漂わせないくらい順調で、とうとう私の三連覇中が終わるとまで思っていた。
だけど、1週間前に自体が急変。
些細な喧嘩から離婚騒動へと発展していった。お互いの判断の元、裁判は踏まずに明日に離婚届を提出するそうだ。
つまり私は賭けに勝利して2万4000円を手にする訳。
気に入らない人間と離れる事ができて清々する上にお金もゲット出来る。だけど、なんていうか清涼シャンプーを使った後みたいに逆にヒヤヒヤし過ぎて気持ち悪い。
気持ち悪くて、気に入らないから、いちごタルトを作った。
いや、自分でも何を言っているのか分からない。どうしてこんなにも文脈がつながらないのだろうか。不思議。
数時間前の私は何を思ったのか、この気持ち悪さをお菓子作りにぶつけようと、いちごタルトの材料を買いに行って、混ぜたりこねたり焼いたりしてイチゴタルトを作った。
前世からハンドメイドもするくらい細かい作業が好きだったので、割と料理は得意。
だけど、料理とお菓子って意外と違うんだよね。毎回作るたびに思う。
お菓子ってとても繊細で、分量命っだね。材料表はよく見て作りましょう。
前世の私はなんとなくの分量でカップケーキを作ろうとして、ダークマターを生み出してしまった事がある。
……うんアレについて思い出すのはよそう。
でもまぁ、いちごタルトはしっかり分量を見ながら作ったので綺麗に出来た。しっかり火は通っているけど、焦げてるところはないし甘いいい匂いがする。
ひとしきり自画自賛したら、写真を綾門くんと燕ちゃんのグループラインに上げて食テロをしておく。
確か二人は今仕事で何も口に出来ていないだろう。そして2人はどっちも甘党。
画像を上げた途端に苦悶の表情のスタンプが返ってきた。さぞお腹がすいたに違いない。
内心高笑いしながらいちごタルト作りに使った道具を片付けていく。
大きい道具が片付け終わった頃、甘い匂いに釣られてパーマヘアの人が降りてきた。
「めっちゃ甘そうな匂いすんだけど、何作ったんだよ」
『いちごタルト』
「澪が?」
『私は作ったけど、何?』
「何にも。食べていい?」
予想外の言葉に驚いたまま、洗い物の手が止まった。
棪堂はそんな私の様子を怪訝そうに見る。えっ、待って。君って…………
『甘いのとか食べれるんだ……カエルとかネズミとかしか食べないと思ってた』
「お前にとってのオレはなんなの??」
『蛇』
縦に長いところとか、無駄にしぶといところとかだいたい蛇じゃん。
そう言うと軽口を叩くと、棪堂 哉真斗はいつもの気持ち悪い笑みを浮かべたまま、フォークでタルトを食べ始めた。手は洗い物で泡だらけ。コイツの手は叩いたとしても、タルトに洗剤がついて大惨事なので恨めしい目で見ておく。
そうすうるとさらに笑みを深めた。なんなんだコイツ。
「人間と認識されてねぇのかよ。うわ、このタルトうっま」
『フォークで直に食べないでよ。切り分けるまで待って』
ガチャガチャと小物を洗う音と水音が、私と棪堂 哉真斗しかいないキッチンに響く。
明日、離婚に必要なことをしに行くらしい“お父さん”とお母さんは本日は不在。お母さんは「お友達とお別れをしてきなさい」と言っていたけど、私に友達がいない事を分かっていないんだろう。
洗い物が終わって手で包丁を取り出し、タルトを贅沢にも二等分にする。どうせお母さんも“お父さん”も食べることはないだろうから、私とコイツで食べ切ってしまおう。
こんなに要らないんだけど、って顔しているが関係ない。
毒を食らわば皿まで。一口食べたのだから二分の一は食べていただこう。
フォークで突かれた後がない方を自分用の皿に取り分けて、あとは棪堂 哉真斗に押し付けた。新しいフォークで取り分けたタルトを食べたけど、甘ったるすぎてそんなに好みじゃなかった。
でも自分で作った物だし、勿体無い精神で食べ進める。いちごタルトってこんなに甘いんだ……いや、あのレシピが砂糖多すぎるだけなんだ。次は甘過ぎないレシピを探そう。
約40分を掛けてなんとか完食。
棪堂 哉真斗はそれよりも先に食べ終えたらしい。頬杖をついて私を眺めていた。
『……何』
「いーや?オレが蛇だったらお前は“蛇の妹”なんだなって」
『まだその話してたの?というか、私と君は他人だよ』
別に妹なのは否定しなかった。だけど、それを認めるほど私も素直じゃない。
「一応明日からだけどな。まぁせっかく今日で最後なんだし、オレのことお兄ちゃんって呼べよ」
『人前では“お兄ちゃん”って呼んであげてたでしょう』
「焚石とか綾門クンとか、燕チャン?いや光希クンだったか?とにかく、そういうやつらの前だったらフルネームで棪堂 哉真斗だったじゃねーか」
『ああ、君を兄として認めるみたいでなんか癪だったからね』
「ふーん。まぁ最後なんだしお兄ちゃんって呼べ」
『はいはい“お兄ちゃん”』
「なんか違げぇ」
ちっ、君のように勘のいいガキは嫌いだよ。なんで“お兄ちゃん”とお兄ちゃんの違いが耳だけで分かるのさ。
読者に嘘が分かりやすいように「“”」をつけているけど、お前は耳だけだろ。(メタ発言)
「なぁーお兄ちゃんって呼べよ澪」
『“お兄ちゃん”』
「だから違げぇって。はい、リピートアフターミー?お兄ちゃん」
『“お兄ちゃん”』
「だから、そうじゃねぇって」
お兄ちゃんと呼べと駄々を捏ね出す棪堂 哉真斗を無視してスマホ触る。
ラインには食テロを恨む声が溜まっていたので、完食した皿の画像で返信しておく。更に恨み言が増えた。おもしろ。
無視してもまとわりつくついてお兄ちゃんと呼べコールを繰り返す棪堂 哉真斗。めんどくさ……
『あーはいはい。お兄ちゃんって呼べばいいんでしょ』
「……」
素直に呼んでやればお兄ちゃんは全身を硬直させて固まったのち、満面の笑みを浮かべた。なんだコイツ。(2回目)
「やれば出来んじゃねーか!もう一回お兄ちゃんって呼べよ!」
『棪堂 哉真斗』
「お゛兄゛ぢゃ゛ん゛」
『ステ⚫︎ッチみたいな声出すな』
ガンなりに呼ばない私に諦めたのか、お兄ちゃんと呼べコールに飽きたのか。棪堂 哉真斗は焚石 矢をストーカーしに出かけに行った。そのまま犯罪で捕まってくれ。
一人リビングに残った私はぼーっと窓を見つめた。
ふわふわと、舞いながら落ちる白い雪。季節は年の瀬を超えて旧暦ではもう春だけど、こんなに寒いので春ってのは嘘だと思う。
ものすごく暇だ。窓を見てたって何にもならないので、将来の為にも勉強することにした。
参考書を捲ったり、シャーペンを走らせたり。真面目に勉強して1時間後くらいに玄関のドアが勢いよく開いた。
お母さんか“お父さん”か。離婚直前でピリピリするのは分かるけど、物に当たるのはやめて欲しい。
“お父さん”だったら気まずいなーっと、玄関を見に行くと立っていたのはお母さんでも“お父さん”でもなかった。
そこに居たのは、
「行くぞ」
『どこに??』
「デート」
『無理です。さっさとお帰りください』
「焚石、澪ってツンデレだからもっと強引にいってもいける」
『いけねぇわ』
棪堂 哉真斗と焚石 矢だった。
棪堂 哉真斗と焚石 矢に何故か目をつけられて、追い回せれて連れ回された変な8ヶ月。
転生したり、仕事でそこそこの修羅場を掻い潜ったり、そこそこ濃い人生を歩んでいる自覚がある私は変だと思うくらいには、変な8ヶ月だった。
でも、その8ヶ月があと1日で9ヶ月に変わろうとしている。
9ヶ月。私が両親がいつ離婚するかを賭けた賭けで、私が1万3000円を賭けた期間。
2週間前まで、両親は不仲の気配なんて漂わせないくらい順調で、とうとう私の三連覇中が終わるとまで思っていた。
だけど、1週間前に自体が急変。
些細な喧嘩から離婚騒動へと発展していった。お互いの判断の元、裁判は踏まずに明日に離婚届を提出するそうだ。
つまり私は賭けに勝利して2万4000円を手にする訳。
気に入らない人間と離れる事ができて清々する上にお金もゲット出来る。だけど、なんていうか清涼シャンプーを使った後みたいに逆にヒヤヒヤし過ぎて気持ち悪い。
気持ち悪くて、気に入らないから、いちごタルトを作った。
いや、自分でも何を言っているのか分からない。どうしてこんなにも文脈がつながらないのだろうか。不思議。
数時間前の私は何を思ったのか、この気持ち悪さをお菓子作りにぶつけようと、いちごタルトの材料を買いに行って、混ぜたりこねたり焼いたりしてイチゴタルトを作った。
前世からハンドメイドもするくらい細かい作業が好きだったので、割と料理は得意。
だけど、料理とお菓子って意外と違うんだよね。毎回作るたびに思う。
お菓子ってとても繊細で、分量命っだね。材料表はよく見て作りましょう。
前世の私はなんとなくの分量でカップケーキを作ろうとして、ダークマターを生み出してしまった事がある。
……うんアレについて思い出すのはよそう。
でもまぁ、いちごタルトはしっかり分量を見ながら作ったので綺麗に出来た。しっかり火は通っているけど、焦げてるところはないし甘いいい匂いがする。
ひとしきり自画自賛したら、写真を綾門くんと燕ちゃんのグループラインに上げて食テロをしておく。
確か二人は今仕事で何も口に出来ていないだろう。そして2人はどっちも甘党。
画像を上げた途端に苦悶の表情のスタンプが返ってきた。さぞお腹がすいたに違いない。
内心高笑いしながらいちごタルト作りに使った道具を片付けていく。
大きい道具が片付け終わった頃、甘い匂いに釣られてパーマヘアの人が降りてきた。
「めっちゃ甘そうな匂いすんだけど、何作ったんだよ」
『いちごタルト』
「澪が?」
『私は作ったけど、何?』
「何にも。食べていい?」
予想外の言葉に驚いたまま、洗い物の手が止まった。
棪堂はそんな私の様子を怪訝そうに見る。えっ、待って。君って…………
『甘いのとか食べれるんだ……カエルとかネズミとかしか食べないと思ってた』
「お前にとってのオレはなんなの??」
『蛇』
縦に長いところとか、無駄にしぶといところとかだいたい蛇じゃん。
そう言うと軽口を叩くと、棪堂 哉真斗はいつもの気持ち悪い笑みを浮かべたまま、フォークでタルトを食べ始めた。手は洗い物で泡だらけ。コイツの手は叩いたとしても、タルトに洗剤がついて大惨事なので恨めしい目で見ておく。
そうすうるとさらに笑みを深めた。なんなんだコイツ。
「人間と認識されてねぇのかよ。うわ、このタルトうっま」
『フォークで直に食べないでよ。切り分けるまで待って』
ガチャガチャと小物を洗う音と水音が、私と棪堂 哉真斗しかいないキッチンに響く。
明日、離婚に必要なことをしに行くらしい“お父さん”とお母さんは本日は不在。お母さんは「お友達とお別れをしてきなさい」と言っていたけど、私に友達がいない事を分かっていないんだろう。
洗い物が終わって手で包丁を取り出し、タルトを贅沢にも二等分にする。どうせお母さんも“お父さん”も食べることはないだろうから、私とコイツで食べ切ってしまおう。
こんなに要らないんだけど、って顔しているが関係ない。
毒を食らわば皿まで。一口食べたのだから二分の一は食べていただこう。
フォークで突かれた後がない方を自分用の皿に取り分けて、あとは棪堂 哉真斗に押し付けた。新しいフォークで取り分けたタルトを食べたけど、甘ったるすぎてそんなに好みじゃなかった。
でも自分で作った物だし、勿体無い精神で食べ進める。いちごタルトってこんなに甘いんだ……いや、あのレシピが砂糖多すぎるだけなんだ。次は甘過ぎないレシピを探そう。
約40分を掛けてなんとか完食。
棪堂 哉真斗はそれよりも先に食べ終えたらしい。頬杖をついて私を眺めていた。
『……何』
「いーや?オレが蛇だったらお前は“蛇の妹”なんだなって」
『まだその話してたの?というか、私と君は他人だよ』
別に妹なのは否定しなかった。だけど、それを認めるほど私も素直じゃない。
「一応明日からだけどな。まぁせっかく今日で最後なんだし、オレのことお兄ちゃんって呼べよ」
『人前では“お兄ちゃん”って呼んであげてたでしょう』
「焚石とか綾門クンとか、燕チャン?いや光希クンだったか?とにかく、そういうやつらの前だったらフルネームで棪堂 哉真斗だったじゃねーか」
『ああ、君を兄として認めるみたいでなんか癪だったからね』
「ふーん。まぁ最後なんだしお兄ちゃんって呼べ」
『はいはい“お兄ちゃん”』
「なんか違げぇ」
ちっ、君のように勘のいいガキは嫌いだよ。なんで“お兄ちゃん”とお兄ちゃんの違いが耳だけで分かるのさ。
読者に嘘が分かりやすいように「“”」をつけているけど、お前は耳だけだろ。(メタ発言)
「なぁーお兄ちゃんって呼べよ澪」
『“お兄ちゃん”』
「だから違げぇって。はい、リピートアフターミー?お兄ちゃん」
『“お兄ちゃん”』
「だから、そうじゃねぇって」
お兄ちゃんと呼べと駄々を捏ね出す棪堂 哉真斗を無視してスマホ触る。
ラインには食テロを恨む声が溜まっていたので、完食した皿の画像で返信しておく。更に恨み言が増えた。おもしろ。
無視してもまとわりつくついてお兄ちゃんと呼べコールを繰り返す棪堂 哉真斗。めんどくさ……
『あーはいはい。お兄ちゃんって呼べばいいんでしょ』
「……」
素直に呼んでやればお兄ちゃんは全身を硬直させて固まったのち、満面の笑みを浮かべた。なんだコイツ。(2回目)
「やれば出来んじゃねーか!もう一回お兄ちゃんって呼べよ!」
『棪堂 哉真斗』
「お゛兄゛ぢゃ゛ん゛」
『ステ⚫︎ッチみたいな声出すな』
ガンなりに呼ばない私に諦めたのか、お兄ちゃんと呼べコールに飽きたのか。棪堂 哉真斗は焚石 矢をストーカーしに出かけに行った。そのまま犯罪で捕まってくれ。
一人リビングに残った私はぼーっと窓を見つめた。
ふわふわと、舞いながら落ちる白い雪。季節は年の瀬を超えて旧暦ではもう春だけど、こんなに寒いので春ってのは嘘だと思う。
ものすごく暇だ。窓を見てたって何にもならないので、将来の為にも勉強することにした。
参考書を捲ったり、シャーペンを走らせたり。真面目に勉強して1時間後くらいに玄関のドアが勢いよく開いた。
お母さんか“お父さん”か。離婚直前でピリピリするのは分かるけど、物に当たるのはやめて欲しい。
“お父さん”だったら気まずいなーっと、玄関を見に行くと立っていたのはお母さんでも“お父さん”でもなかった。
そこに居たのは、
「行くぞ」
『どこに??』
「デート」
『無理です。さっさとお帰りください』
「焚石、澪ってツンデレだからもっと強引にいってもいける」
『いけねぇわ』
棪堂 哉真斗と焚石 矢だった。
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