蛇の妹
両親の再婚から数ヶ月。季節はすっかり夏に変わっていた。
慣れなかった登校の道も今ではすっかり慣れて、学校にも友達枠の人が…………
「あの子、棪堂の妹だって」「焚石と手繋いでたし、アイツもヤバいんじゃない?」「澪ちゃん、可愛いから好きだったのに……焚石のカノジョって……」「どんまい」「人は見かけによらないね」
居る訳なかった。
私の暴行現場をガッツリ見られてからというもの、棪堂 哉真斗は“お兄ちゃん”という名目を利用して付き纏ってくるし、焚石 矢に至っては私を見掛けると手を握って連れ回す。
おかげで学校で私は焚石 矢とデキてるという噂が立っている。誰がこんなガキと付き合うか。これでも中身は社会人。つまりは成人済みだし、好みのタイプは包容力のある人だ。
包容力が無さそうな焚石 矢は対象外。私以外の人間と適当にくっついてくれ。
やばいヤツツートップとよく絡んでる(絡まれてる)せいで初日のスタートは順調だったのに、遠巻きバブられて絶賛ボッチ。悲しくないけどねっ!私には友人いるからねっ!!
はぁ、っと誰にも聞こえないため息が自室に消える。
あの暴行現場を見られた後、私は棪堂 哉真斗と焚石 矢に付け回されているが、ちょっと脅s……お話し合いをしたので私が隠したいことには関わらないようにしてもらってる。プライベートだいじ。
えっあの我の塊みたいなヤツをどうやって脅したのかって?それまぁ、ねっ?知らない方がいいこともあからさっ…………
燕ちゃんがこの前クレーンゲームで取ってくれたどデカい鮭(子持ち)を枕に、寝っ転がって天井を仰ぐ。
綾門くんから仕事の依頼が来ていたので内容に目を通す。
依頼の内容は政治家さん主催のパーティーに出席するから同伴して欲しいとのことだ。燕ちゃんは現在進行形で日本横断中なので難しいから私にまわってきたんだろう。
パーティーに居る時間の割には報酬額が多め、服とメイク道具までも用意してくれるらしい。
予定表と睨めっこしてもその日は何もないので、いいかと了解の返信を送ったタイミングで、勢いよく扉が開いた。
「みっっお!!明後日空いてる?」
『君さぁ、ノックしてくれるかな?仮にもレディの部屋だよ』
「あーごめんごめん、次からは気をつける。で?明後日空いてる?」
『無理。空いてない』
「なんで?」
『綾門くんから仕事が来たから』
「はぁー?アヤトクンとやらと、オレ?どっちが大事なんだよ?」
『[漢字]綾門くん[/漢字][ふりがな]金蔓[/ふりがな]』
「即答かよ。お兄ちゃん悲しいなぁー」
振り仮名に気付いてから気付かずか、相変わらず気持ち悪い笑みを浮かべて“お兄ちゃん”は私が寝転がるベッドの淵に座って、頬を突っつく。
手を払うのもめんどくさいので、そのままにさせていたら手が離れた。あれ、いつもは蛸みたいに引っ付いてくるのに珍しい。と、思ったらベッドに入ってこようとしたので、左足を振りかぶって棪堂 哉真斗の鳩尾あたりに蹴る。
綺麗に入ったのか、後ろによろめいた。その隙に起き上がってまだ鳩尾を抑えてる“お兄ちゃん”の横をするりと抜けて、リビングに降りた。
『あっ、もしかして今日の晩御飯カレー?』
「ざんねーん、肉じゃがでした。ごめんだけど切るの手伝ってくれる?」
『うん。じゃあ野菜系切ってくね』
材料から判断したけど間違ったらしい。
母に頼まれるがまま、エプロンを付けて手を洗ってから包丁をとりだしてトントントンっと、リズミカルに野菜を刻んでいく。
スピーカーからは母が好きなバラード系の洋楽が流れている。
私個人としては作業の時はピアノが好きだけど、特にいう必要もないので黙って作業をこなす。
『あっ、そうだ!さっきね燕ちゃんから連絡来てさ、明後日遊びに行かないかって誘われたんだけど、行っていい?』
「どこ遊びにいくの?」
『温水プールだって。一旦燕ちゃん家に行って、そこから燕ちゃんママが送ってくれるって』
「プール……いいわねぇ。行ってらっしゃい!そういえば水着あったかしら」
『うん。押入れのところに去年買ったやつあったよ』
「じゃあそれ着ていってらっしゃい。後で燕ちゃんママにお礼言っとくわ」
『うん』
人は息をするように嘘をつく。
大きな嘘、小さな嘘。今の今まで一だって嘘をついたことがないという人は殆ど居ないだろう。
私だって例外ではない。前世を含めて、何度も嘘をついた。ああ、詐欺とかはしてないよ。一般市民だからね。
まぁ、人間関係を円滑に進める為には時には嘘も有効になる。だから必要に応じて嘘をついてきた。何度も嘘をつくうちに罪悪感は薄れていく。
だけど、どうしたって母を騙すときだけは胸に小さな痛みを抱えてしまう。今更お母さんにだけって可笑しな話だけど、でも。仕方ないんだ。
だって私はもうことの人を愛してしまってるから、嘘がちょとだけ下手になる。
慣れなかった登校の道も今ではすっかり慣れて、学校にも友達枠の人が…………
「あの子、棪堂の妹だって」「焚石と手繋いでたし、アイツもヤバいんじゃない?」「澪ちゃん、可愛いから好きだったのに……焚石のカノジョって……」「どんまい」「人は見かけによらないね」
居る訳なかった。
私の暴行現場をガッツリ見られてからというもの、棪堂 哉真斗は“お兄ちゃん”という名目を利用して付き纏ってくるし、焚石 矢に至っては私を見掛けると手を握って連れ回す。
おかげで学校で私は焚石 矢とデキてるという噂が立っている。誰がこんなガキと付き合うか。これでも中身は社会人。つまりは成人済みだし、好みのタイプは包容力のある人だ。
包容力が無さそうな焚石 矢は対象外。私以外の人間と適当にくっついてくれ。
やばいヤツツートップとよく絡んでる(絡まれてる)せいで初日のスタートは順調だったのに、遠巻きバブられて絶賛ボッチ。悲しくないけどねっ!私には友人いるからねっ!!
はぁ、っと誰にも聞こえないため息が自室に消える。
あの暴行現場を見られた後、私は棪堂 哉真斗と焚石 矢に付け回されているが、ちょっと脅s……お話し合いをしたので私が隠したいことには関わらないようにしてもらってる。プライベートだいじ。
えっあの我の塊みたいなヤツをどうやって脅したのかって?それまぁ、ねっ?知らない方がいいこともあからさっ…………
燕ちゃんがこの前クレーンゲームで取ってくれたどデカい鮭(子持ち)を枕に、寝っ転がって天井を仰ぐ。
綾門くんから仕事の依頼が来ていたので内容に目を通す。
依頼の内容は政治家さん主催のパーティーに出席するから同伴して欲しいとのことだ。燕ちゃんは現在進行形で日本横断中なので難しいから私にまわってきたんだろう。
パーティーに居る時間の割には報酬額が多め、服とメイク道具までも用意してくれるらしい。
予定表と睨めっこしてもその日は何もないので、いいかと了解の返信を送ったタイミングで、勢いよく扉が開いた。
「みっっお!!明後日空いてる?」
『君さぁ、ノックしてくれるかな?仮にもレディの部屋だよ』
「あーごめんごめん、次からは気をつける。で?明後日空いてる?」
『無理。空いてない』
「なんで?」
『綾門くんから仕事が来たから』
「はぁー?アヤトクンとやらと、オレ?どっちが大事なんだよ?」
『[漢字]綾門くん[/漢字][ふりがな]金蔓[/ふりがな]』
「即答かよ。お兄ちゃん悲しいなぁー」
振り仮名に気付いてから気付かずか、相変わらず気持ち悪い笑みを浮かべて“お兄ちゃん”は私が寝転がるベッドの淵に座って、頬を突っつく。
手を払うのもめんどくさいので、そのままにさせていたら手が離れた。あれ、いつもは蛸みたいに引っ付いてくるのに珍しい。と、思ったらベッドに入ってこようとしたので、左足を振りかぶって棪堂 哉真斗の鳩尾あたりに蹴る。
綺麗に入ったのか、後ろによろめいた。その隙に起き上がってまだ鳩尾を抑えてる“お兄ちゃん”の横をするりと抜けて、リビングに降りた。
『あっ、もしかして今日の晩御飯カレー?』
「ざんねーん、肉じゃがでした。ごめんだけど切るの手伝ってくれる?」
『うん。じゃあ野菜系切ってくね』
材料から判断したけど間違ったらしい。
母に頼まれるがまま、エプロンを付けて手を洗ってから包丁をとりだしてトントントンっと、リズミカルに野菜を刻んでいく。
スピーカーからは母が好きなバラード系の洋楽が流れている。
私個人としては作業の時はピアノが好きだけど、特にいう必要もないので黙って作業をこなす。
『あっ、そうだ!さっきね燕ちゃんから連絡来てさ、明後日遊びに行かないかって誘われたんだけど、行っていい?』
「どこ遊びにいくの?」
『温水プールだって。一旦燕ちゃん家に行って、そこから燕ちゃんママが送ってくれるって』
「プール……いいわねぇ。行ってらっしゃい!そういえば水着あったかしら」
『うん。押入れのところに去年買ったやつあったよ』
「じゃあそれ着ていってらっしゃい。後で燕ちゃんママにお礼言っとくわ」
『うん』
人は息をするように嘘をつく。
大きな嘘、小さな嘘。今の今まで一だって嘘をついたことがないという人は殆ど居ないだろう。
私だって例外ではない。前世を含めて、何度も嘘をついた。ああ、詐欺とかはしてないよ。一般市民だからね。
まぁ、人間関係を円滑に進める為には時には嘘も有効になる。だから必要に応じて嘘をついてきた。何度も嘘をつくうちに罪悪感は薄れていく。
だけど、どうしたって母を騙すときだけは胸に小さな痛みを抱えてしまう。今更お母さんにだけって可笑しな話だけど、でも。仕方ないんだ。
だって私はもうことの人を愛してしまってるから、嘘がちょとだけ下手になる。
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