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蛇の妹

#5


※ややお下品
※三人称視点

[水平線]


「棪堂の妹だな」


そう言ってクチャクチャとガムを噛みながら話しかけてきた、いかにも不良っぽい外見の男に澪は思わず、膝蹴りをブチかまそうと足を大きく振り上げた。

この一文からでは澪の暴力性が意外にも激しいこと以外しか分からないが、澪だって人間なのでこの一文に至るまで様々な感情の変化があった。それを説明するには少々、時間を遡ることとなる………



綾門と澪と光季の3人は友人であると同時に、ビジネスパートナーでもある。
お互いにやりたい事があり、その過程で協力が必要な場合を協力しあう、正真正銘の友情と金と打算で結ばれた関係である。なんて回りくどく言ったが、要は需要と供給。

色々やりたい事があるが手が回らない綾門と、其々の理由で金が欲しい澪と光季。
金を出す代わりに綾門が出す仕事を引き受ける澪と光季。

仕事の内容は接客や情報収集、書類仕事など色々。おおよそ小学生がする内容ではないが、まぁ中身は全員転生者だし法律は破らずすり抜けてるから[漢字]無問題[/漢字][ふりがな]モーマンタイ[/ふりがな]。と、3人は口を揃えて言ってるが、その方がタチが悪いのに気付いていない。お前ら道徳の授業一年から受けて直してこい。

そんな感じで澪は、綾門に頼まれて金とコネだけ持っているお爺ちゃんの接客をしていた。
メイクも髪もなっちりだし、146cmに10cmのシークレットブーツ履いて……というおおよそ小学生には見えない見た目で。

澪は僅か3時間という短い時間で、最初は壁があったお爺ちゃんだが、前世のイタリア旅行でもみあげが可愛い赤ん坊に[漢字]拳銃[/漢字][ふりがな]チャカ[/ふりがな]突き付けて教えて貰った会話術だけで籠絡させていった。

3時間のデート元いい、接客で澪にメロメロになったお爺ちゃんはどうにかして澪個人の連絡先を知ろうと必死になった。それをヒラヒラと澪は交わすが、人間って避けられたら逆に燃える愚かな生き物なのでお爺ちゃんも必死になってアタックすること15分。

攻防の末に勝ったのは澪だった。それじゃあバイバイ!と、お爺ちゃんにお別れを告げて(10cmのシークレット)ブーツを鳴らして去って行ったまでは良かった。

そこからが問題で、あろう事がお爺ちゃんは澪の胸を揉んで「−A……?」と呟いたのだ。
言い訳するならお爺ちゃんはどうしても澪と連絡先が欲しくて暴走した結果…………と、言い訳に言い訳を重ねても世間一般的に(メイクや服装で外見詐欺をしているとはいえ)小学生の胸に触るのは犯罪。
しかも何ていった?−A?誰の胸が抉れてるって???だいたいな、何でもデカければいいって思うなよ。どんなに大きくても時間経過で胸は垂れていくし第一、時代は美乳だわ!

澪はそのぉ……言いにくいが、自分の胸のカップ数が若干コンプレックスであったので色々爆発しそうだった。しかし、これは綾門から渡された[太字]仕事[/太字]だ。相手がどんなにムカついても、セクハラして来てもやり遂げるのが仕事。

澪は穏やかに微笑んでその場を去っていった。


後でしっかり綾門に「セクハラされた。あのジジイの株を持ち上げた後に大暴落させろ」と、メッセージを送信して。
当然、これでは澪の怒りも収まる訳はない。表面上は穏やかに噴火寸前のマグマだまりのようにグツグツと怒りは湧き立っていた。

そんなところにクチャクチャガムを噛みながら話しかけて、しかも「棪堂の妹」って呼ばれて?キレない訳ないだろ?
ああ、そういえば前回自分で棪堂の妹と名乗ったな。でもあれは便宜上仕方がなかっただけだし、棪堂 哉真斗は“お兄ちゃん”と呼ぶ他人であって、本物の兄ではない。澪はその辺が厳しかった。

あと話しかけて来た男の顔が前世のパチカスの元カレに似ていたからという理由も3割……いや、5割は占めているが、とりあえず澪はめっちゃムカついていて、そんな所にムカつく男がムカつくセリフを言いってきたので爆発したのだ。

澪の膝小僧が不良(っぽい)男の顔面スレスレで止まる。



『ヤッベ……』



怒りで手(足)を出しかけたことを理解した澪は思わず声をこぼした。幾ら我を忘れるぐらい怒っていても、理不尽に暴力を振るうのは違う。
そのことを冷静になって考えた澪はすっと、足をおろして突然の澪の蹴りに内心ビビり散らかしていた男に頭を下げた。



『すいません。そのムカつく態度と顔が元カレに似ていたもので…………とはいえ、暴力はダメですよね。[小文字]まぁ未遂なのでいいか[/小文字]……あと多分ですけど、人違いです』※真っ赤な嘘

「ぁ……いやって、すっとぼけんじゃねぇぞ!!!お前が棪堂の妹だってバレてんだからな!!」

『いや、だから私は黛ですって!』※全くの嘘

「はぁ!?」



急に態度がデカくなった不良に呆れながら、ポケットに閉まってあった財布から学生証(偽装)を取り出す。そこには黛 樺恋とこの世には存在しない人物の名前と澪の顔写真が載っていた。
困惑する不良と読者をよそに澪は嘘ぶく。



『学生証の通り私は棪堂じゃなくて黛 樺恋ですし、あと兄も姉も居ない一人っ子ですよ』※まるっきりの嘘

「はっ?でも……」

『でもって何ですか?言うことあるならさっさとして下さい。私、これから用事あるんですよ』※はったり



この紋所が目に入らぬか〜的なノリで男に(偽装)の学生証を目の前に押し付ける。
こに学生証は澪の年齢を偽るために綾門が用意したものだ。
真っ赤な嘘を連ねて相手を畳み掛け、『何もないから行きますから』とヒールを鳴らして歩く。

コツコツとヒールの音が途中で止まる。

何故なら、さっきに音が澪の手首を掴んだから。澪の心の内はやっっべ、ばれたぁ!?と荒れ狂っているが顔に出ないように努める。
男は無言で何も言わない。アレ、なんか耳が赤い………?



「あの、人違いは謝る……………」

『それはどうも。手、離してください』

「……」

『聞いてますか?』



聞いても何も答えない男に澪はいい加減めんどくさくなった。なので、手を振り払おうと空いている右手で一発かましてやろうかと考えていると、やっと男が口を開いた。



「あの…………宜しければお茶でも、」

『ナンパか。出直してこい』



澪の右手は、男の頬にパッチーンと乾いた音を響かした。

このボタンは廃止予定です

作者メッセージ

題名につきましては、デート(仕事)の後にナンパされたしモテる女でいいやと思った次第でございます。

2024/07/18 07:16

白鯨 ID:≫972W/z4G4BVy6
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