スノードロップ、そしてマリーゴールドへ
廊下の奥から、さっきの呪霊とは比べ物にならない程の気配を感じる。多分今、私はソイツの生得領域に閉じ込められている。
深呼吸して、心を落ち着かせる。
ここで取り乱せば、相手の思う壺だ。冷静さを欠けば死ぬ。
「……」
もう一度、扉の先を見る。
やはり奥に広がるのは外の景色ではなく、こちら側と同じ日本家屋だ。
まるで扉が鏡にでもなっているかのような錯覚に陥る。
床に散らばる小物やガラクタもそっくりそのまま、全て同じだ。違うのは、気配の有無のみ。
頭が痛くなってきた。
「クソ…」
少し気が引けるが、進まなければ一生出られない。
私は怖気付く心を必死に奮い立たせ、凄まじい気配の中へ足を踏み入れた。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「ここね」
「うわあ…」
俺は目の前にそびえ立つ廃ビルを見上げていた。
「ここに入るんですか…?」
「そんな怯えなくても、今回は三級呪霊の討伐任務だから大丈夫よ。いざとなったら夜蛾さんもいるし」
と庵先輩が言う。
「いやそうじゃなくて、」
「え?」
「不法侵入とかになりませんよね、コレ」
「…はあぁあ⁉︎」
「うわビックリした」
「さすがに許可取ってあるわ‼︎私をナメてんじゃねーよ後輩ィ‼︎」
「あ、すいません…」
「いや、良いのよ」
どっちだよ…。
「というか、俺まだ呪力とか術式の使い方あんまわかんないんですけど…」
「まあ何とかなるでしょ。雪待が言うには、アンタ才能あるらしいし」
「えぇ…」
めっちゃ不安だなソレ。
「あ、そういえば」言いながら庵先輩は躊躇なく廃ビルの中へ向かう。
「雪待、一級昇格任務受けてるらしいわよ。今頃ウキウキで呪霊祓ってるでしょうね」
「1級⁉︎」
「え、ええ。そうだけど」
正直、九条先輩がそこまでの実力者だとは思っていなかった。
「ふふん、凄いでしょ!私の後輩!」
庵先輩は得意げな笑みで自慢する。
なぜそんな余裕があるのか俺にはわからない。
「ちなみに三級呪霊ってどれくらい強いんですかね」
庵先輩の熱弁を止める役割も兼ねて尋ねる。
「そうね…通常武器が有効と仮定するなら、拳銃があれば安心ってレベルじゃないかしら」
「じゃあ案外大したことなさそうですね」
「そうやって調子乗ってると死ぬのよ」
「平然と怖いこと言わないでくれません?」
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「……」
全然戻ってこねえ。
廃墟の中で昼寝でもしてんのかアイツ。
ゾワッ
「なっ…!」
反射的に日本家屋へ目を向けると、膨大な呪力が家屋を包み込んでいた。
「まじかよ…」
ここに入れって?冗談じゃない。
でも九条に死なれたら、俺が困る。
俺は渋々扉を開けた。
瞬間、俺はこのタイミングで入ったことをここ最近で1番後悔した。
なぜなら、目の前にいるのは特級相当の呪霊だった。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「どこにいやがるクソ呪霊!」
気配が大きすぎて正確な位置がわからない。
さっきから家屋の中をグルグル走り回っている。
ドゴンッ
「‼︎」
急いで音のした方へ走る、と。
「え、日下部さん…?」
そこにいたのは呪霊ではなく、倒れた日下部さんだった。
死んでる?
「あ、九条」
あ生きてた。ごめん日下部さん。
「1人で何してんですか」
「何って、お前が全然帰ってこないから来てやったんだろうが」
「さーせん」
「んな事より何で倒れてんですか。コケたんですか、ダサいですね」
「違えよ。ここの床が抜けた」
「は?」
「抜けたと言うより、呪霊に遭遇したから穴空けて落ちてきた」
意味がわからず、上を見る。
穴は空いてない。
「え、じゃあコレ落ちても落ちてもループするってことですか?」
「多分な。さっさと呪霊祓って脱出するぞ」
まあそれもそうだ。領域の主を祓っちまえば出られる。
「…ってことは、日下部さん、さっき呪霊から逃げてきたってことですか?」
「当たり前だろ、話聞け」
「うーわ…」
「うーわ…じゃねえよ」
深呼吸して、心を落ち着かせる。
ここで取り乱せば、相手の思う壺だ。冷静さを欠けば死ぬ。
「……」
もう一度、扉の先を見る。
やはり奥に広がるのは外の景色ではなく、こちら側と同じ日本家屋だ。
まるで扉が鏡にでもなっているかのような錯覚に陥る。
床に散らばる小物やガラクタもそっくりそのまま、全て同じだ。違うのは、気配の有無のみ。
頭が痛くなってきた。
「クソ…」
少し気が引けるが、進まなければ一生出られない。
私は怖気付く心を必死に奮い立たせ、凄まじい気配の中へ足を踏み入れた。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「ここね」
「うわあ…」
俺は目の前にそびえ立つ廃ビルを見上げていた。
「ここに入るんですか…?」
「そんな怯えなくても、今回は三級呪霊の討伐任務だから大丈夫よ。いざとなったら夜蛾さんもいるし」
と庵先輩が言う。
「いやそうじゃなくて、」
「え?」
「不法侵入とかになりませんよね、コレ」
「…はあぁあ⁉︎」
「うわビックリした」
「さすがに許可取ってあるわ‼︎私をナメてんじゃねーよ後輩ィ‼︎」
「あ、すいません…」
「いや、良いのよ」
どっちだよ…。
「というか、俺まだ呪力とか術式の使い方あんまわかんないんですけど…」
「まあ何とかなるでしょ。雪待が言うには、アンタ才能あるらしいし」
「えぇ…」
めっちゃ不安だなソレ。
「あ、そういえば」言いながら庵先輩は躊躇なく廃ビルの中へ向かう。
「雪待、一級昇格任務受けてるらしいわよ。今頃ウキウキで呪霊祓ってるでしょうね」
「1級⁉︎」
「え、ええ。そうだけど」
正直、九条先輩がそこまでの実力者だとは思っていなかった。
「ふふん、凄いでしょ!私の後輩!」
庵先輩は得意げな笑みで自慢する。
なぜそんな余裕があるのか俺にはわからない。
「ちなみに三級呪霊ってどれくらい強いんですかね」
庵先輩の熱弁を止める役割も兼ねて尋ねる。
「そうね…通常武器が有効と仮定するなら、拳銃があれば安心ってレベルじゃないかしら」
「じゃあ案外大したことなさそうですね」
「そうやって調子乗ってると死ぬのよ」
「平然と怖いこと言わないでくれません?」
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「……」
全然戻ってこねえ。
廃墟の中で昼寝でもしてんのかアイツ。
ゾワッ
「なっ…!」
反射的に日本家屋へ目を向けると、膨大な呪力が家屋を包み込んでいた。
「まじかよ…」
ここに入れって?冗談じゃない。
でも九条に死なれたら、俺が困る。
俺は渋々扉を開けた。
瞬間、俺はこのタイミングで入ったことをここ最近で1番後悔した。
なぜなら、目の前にいるのは特級相当の呪霊だった。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「どこにいやがるクソ呪霊!」
気配が大きすぎて正確な位置がわからない。
さっきから家屋の中をグルグル走り回っている。
ドゴンッ
「‼︎」
急いで音のした方へ走る、と。
「え、日下部さん…?」
そこにいたのは呪霊ではなく、倒れた日下部さんだった。
死んでる?
「あ、九条」
あ生きてた。ごめん日下部さん。
「1人で何してんですか」
「何って、お前が全然帰ってこないから来てやったんだろうが」
「さーせん」
「んな事より何で倒れてんですか。コケたんですか、ダサいですね」
「違えよ。ここの床が抜けた」
「は?」
「抜けたと言うより、呪霊に遭遇したから穴空けて落ちてきた」
意味がわからず、上を見る。
穴は空いてない。
「え、じゃあコレ落ちても落ちてもループするってことですか?」
「多分な。さっさと呪霊祓って脱出するぞ」
まあそれもそうだ。領域の主を祓っちまえば出られる。
「…ってことは、日下部さん、さっき呪霊から逃げてきたってことですか?」
「当たり前だろ、話聞け」
「うーわ…」
「うーわ…じゃねえよ」
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