スノードロップ、そしてマリーゴールドへ
「…何だよ」
「帰ってきたのね」
「[漢字]当主[/漢字][ふりがな]アイツ[/ふりがな]と話があるだけ」
「もう戻ってこないの?」
家に、という意味だろう。
「今んとこは」
「あ、そう」
と口を噤んだ彼女は、まあ、私の実の母親だ。[漢字]九条虎百合[/漢字][ふりがな]くじょうこゆり[/ふりがな]という。
加えて、私が家を出た原因の1つでもある。
「姉さん!おかえり!」
「おかえり、雪待姉さん」
その背後から、2人の子供の声がした。
「ん、問題起こさなかったか?」
「当たり前じゃん。俺ちょー良い子にしてた」と胸を張っているのが、[漢字]九条日向[/漢字][ふりがな]くじょうひなた[/ふりがな]。
「もう中学生だし。子供扱いしないで姉さん」彼よりも少し大人びているのが[漢字]九条葵[/漢字][ふりがな]くじょうあおい[/ふりがな]。
私の従兄弟で、2人とも今年2年生にあがったらしい。
彼らは双子で、日向が兄、葵が妹だ。
とても大事な妹と弟。
術師の道へは行かせたくなかった。
「私から見りゃ、まだまだ子供だよ」
「姉さん、俺絶対[漢字]姉さんより[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]強くなるから!」
「わ、私も[漢字]姉さんみたいに[/漢字][ふりがな]・・・・・・・[/ふりがな]なる!」
2人とも、ただ純粋に私を尊敬してくれている。
「はは、そっか」
彼らを、失いたくなかった。
もう何も、失いたくなかった。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「ねえ夜蛾さん」
授業が早く終わり、暇になったので、夜蛾さんにある疑問を問いかける。
「なんだ」
「先輩ってどこ行ったんすか?」
「実家だ」
嘘じゃなかったんだな、実家と喧嘩って。
「アイツはそこで好き放題やってたからな。1級昇格の邪魔されて、乗り込みに行った」
「好き放題って…何やらかしたんすか…」
「それは本人に聞け」
「まあ、アレでもお前が来てからかなり変わったんだぞ、九条」
「変わったって?」
「丸くなった」
「…丸くなった…」
[漢字]アレ[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]でか?なんて失礼なことを考える。
「ああ。前はもっと尖ってたんだ。庵ならよく知ってる」
「あー庵先輩。仲良いっすもんね」
「初めの頃は、庵にも当たりが強くてな。今じゃ考えられんだろうが」
「っすね。…九条先輩が尖ってたのってやっぱ、実家の影響?」
「まあそんなところだ」
「へー」
「興味無さそうな返事するな」
「あ、すません」
平和だー、とか思っちゃったりして。
盤星教にいた時は、この世界の何もかもが白黒で、こんなつまんない世界で生きるのが、きっと心底億劫だったんだろうと思う。
九条先輩を見た時、多分、初めて人に興味が湧いた。
小さい頃から化け物が見えて、でも対処の仕様がなくて怖かった。
それを、いとも容易く倒して見せた九条先輩が、俺の白黒の世界に入ってきてくれた気がして。
それもこれも全部、ただの俺の都合のいい妄想だけど、それでも、
あの人が来てくれて、俺の何も無かった心に光や風が入ったようだった。
「今頃何してんでしょうね、あの人」
「さあな。問題を起こして無ければいいが」
「いやあ…無理でしょ」
「随分バッサリ切り捨てるな」
と、しばらく笑いあっていた。
「帰ってきたのね」
「[漢字]当主[/漢字][ふりがな]アイツ[/ふりがな]と話があるだけ」
「もう戻ってこないの?」
家に、という意味だろう。
「今んとこは」
「あ、そう」
と口を噤んだ彼女は、まあ、私の実の母親だ。[漢字]九条虎百合[/漢字][ふりがな]くじょうこゆり[/ふりがな]という。
加えて、私が家を出た原因の1つでもある。
「姉さん!おかえり!」
「おかえり、雪待姉さん」
その背後から、2人の子供の声がした。
「ん、問題起こさなかったか?」
「当たり前じゃん。俺ちょー良い子にしてた」と胸を張っているのが、[漢字]九条日向[/漢字][ふりがな]くじょうひなた[/ふりがな]。
「もう中学生だし。子供扱いしないで姉さん」彼よりも少し大人びているのが[漢字]九条葵[/漢字][ふりがな]くじょうあおい[/ふりがな]。
私の従兄弟で、2人とも今年2年生にあがったらしい。
彼らは双子で、日向が兄、葵が妹だ。
とても大事な妹と弟。
術師の道へは行かせたくなかった。
「私から見りゃ、まだまだ子供だよ」
「姉さん、俺絶対[漢字]姉さんより[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]強くなるから!」
「わ、私も[漢字]姉さんみたいに[/漢字][ふりがな]・・・・・・・[/ふりがな]なる!」
2人とも、ただ純粋に私を尊敬してくれている。
「はは、そっか」
彼らを、失いたくなかった。
もう何も、失いたくなかった。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「ねえ夜蛾さん」
授業が早く終わり、暇になったので、夜蛾さんにある疑問を問いかける。
「なんだ」
「先輩ってどこ行ったんすか?」
「実家だ」
嘘じゃなかったんだな、実家と喧嘩って。
「アイツはそこで好き放題やってたからな。1級昇格の邪魔されて、乗り込みに行った」
「好き放題って…何やらかしたんすか…」
「それは本人に聞け」
「まあ、アレでもお前が来てからかなり変わったんだぞ、九条」
「変わったって?」
「丸くなった」
「…丸くなった…」
[漢字]アレ[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]でか?なんて失礼なことを考える。
「ああ。前はもっと尖ってたんだ。庵ならよく知ってる」
「あー庵先輩。仲良いっすもんね」
「初めの頃は、庵にも当たりが強くてな。今じゃ考えられんだろうが」
「っすね。…九条先輩が尖ってたのってやっぱ、実家の影響?」
「まあそんなところだ」
「へー」
「興味無さそうな返事するな」
「あ、すません」
平和だー、とか思っちゃったりして。
盤星教にいた時は、この世界の何もかもが白黒で、こんなつまんない世界で生きるのが、きっと心底億劫だったんだろうと思う。
九条先輩を見た時、多分、初めて人に興味が湧いた。
小さい頃から化け物が見えて、でも対処の仕様がなくて怖かった。
それを、いとも容易く倒して見せた九条先輩が、俺の白黒の世界に入ってきてくれた気がして。
それもこれも全部、ただの俺の都合のいい妄想だけど、それでも、
あの人が来てくれて、俺の何も無かった心に光や風が入ったようだった。
「今頃何してんでしょうね、あの人」
「さあな。問題を起こして無ければいいが」
「いやあ…無理でしょ」
「随分バッサリ切り捨てるな」
と、しばらく笑いあっていた。
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