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この小説に登場する人物・団体・事件等は、全て架空のものです。

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スノードロップ、そしてマリーゴールドへ

#25


[中央寄せ]*[/中央寄せ]

やっと九条家が見えてきた。
相変わらずだだっ広い敷地と、豪奢な家に庭。
あちこちに花が咲き誇っており、傍から見れば彩り鮮やかで明るい家だろう。
ため息が出る。
「おい、門を開けろ!」
突然、中から声がする。
「ご当主様がお帰りになられた!!」
勿論私のことでは無い。
少し視線をずらすと、これまた派手な着物に身を包んだ男性がいる。アレが九条家当主だ。
この家の当主が見ている前で、[漢字]九条家[/漢字][ふりがな]そこ[/ふりがな]の人間を家の敷地に入れないなど、彼らのような身分じゃ到底できないだろう。
つまり、このタイミングを逃せば門の先へは行けない。
「あの、私も入れてくれる?」
「え?…あ」と、門番が、私の姿を確認した瞬間硬直する。
「…お前、いつ戻ってきた?」
当主様が疑惑と苛立ちを含んだ眼でこちらを見る。
「さっきだけど?」
「そうか。…俺と話があるのだろう?中に入れ」
「…どうも」
数秒後、ギギギギと音を立てて古くさい門が開く。
門番がこちらを殺すような目付きで睨んでいるが、やはり当主には逆らえないので、大人しく私を通してくれた。

前後左右どこを見ても沢山の色が咲いている。
庭は勿論、家の中も、丁寧に生けられた造花が至る所にある。
昔っからそうだ。九条家は何処にでも花が咲いている。
正直、不気味な程だ。
そして人間もまた不気味だ。
元々術師の家系だから、術式を持っている人間が殆ど。
そんな九条家は、完全な実力主義で成り立っている。
上にあがりたければ血反吐を吐いて努力する。どれだけ人当たりが良くても、呪術戦においての弱者はこの家での立場などない。
だから、私は立場、権力ならそれなりに上の方ではある。
でも。

「[漢字]アレ[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]が例の子供でしょ?」
「ほんと、今更何しに来たんだか」
「帰れ」
「ねえ誰?あの人」
「部屋行ってなさい」
「当主様が話…何者?」
「さあな」
「知らないのかよアンタら」
「見たことあるよ、髪白いの」
「あー、誰だっけ」
「10年くらい前じゃない?」
「子供たちは知らないでしょ」
「見ちゃダメ」
「えー」
「おいお前、知ってるんだろ?」
「ああ、アイツか。有名だぜ」

「"九条の異端"ってな」

「異端?」
「何が」
「術式が一風変わってるんだとさ」
「髪色も変だね」
「すごーい」
「異端児か」
「ああ、思い出したよ」
「家出てったんでしょ?」
「非常識なのよ」
「奔放よね」
「かっこいい〜」
「一匹狼?」
「やめなさい」
「あんな風になるなよ」
「九条の恥だ」

やはり、人望は微塵も無い。
まあかなり自由にやったからな。堅苦しい礼儀や作法を重んじる九条家じゃ非難の嵐だ。
でも実力があるから、誰も逆らわない。
そんな人々が不快で、この家を出た。
「雪待」
突然名前を呼ばれ、声の主を探す。
「…母さん」

こちらを見つめる、その、怯えと憎しみ、愛情が気色悪く混ざった目は、もう我が子を見る目ではなかったように思う。

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作者メッセージ

小説の長さってどれくらいが良いんでしょう…。
これだと長いんですかね。

2024/10/16 17:41

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