スノードロップ、そしてマリーゴールドへ
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
教室を出て共有スペースへ向かいながら、ある人に電話をかける。
「もしもーし、歌姫センパイ?」
「ええ。どうしたの雪待」
「千寿の初任務に同行したの歌姫センパイって聞いて。彼、どうでした?」
「結果は上々。でも一般の出にしては、まあ…少し肝が据わりすぎてるって言うか。一周まわって不気味ね、あの子」
「はは、言いますねセンパイ」
私はいつもの調子でへらっと笑う。
「笑い事じゃないわよ。呪霊は言葉を発するとはいえ、人じゃない。でも、意志を持ち、触れられる身体を持ち、動き、話す。仮にも生きてるものをなんの躊躇いもなく殺した、その感覚が可笑しいのよ」
「言うなれば"[漢字]異常[/漢字][ふりがな]イレギュラー[/ふりがな]"だ。バグです、彼は」
そう、千寿は今、当たり前のように呪術界に適応している。ほんの数日前まで、そんな事とは無縁だったはずなのに。
「それともう一つ。雪待、初任務の前に彼に体術仕込んでないわよね」
「はい、大して何もしてませんよ。対人用の超基礎の基礎くらいしか」
「それを教えたとして、鞘投げて呪霊の気を引きつつ2階の階段から飛び降りて1階の呪霊の頭貫ける?」
「いや普通無理です」
「何者よあの子…」
「さあ…誰かに格闘技でも教わったんですかね」
「まあ経歴洗えば分かると思うけど」
「本人に直接聞いてきます」
「マジかよアンタ」
「本気と書いてマジです。じゃ、ありがとうございました」
「ええ、じゃあ」
数秒後、通話が切れる。
1個くらい任務終わらして千寿のとこ行くか。流石にまだあの映画観終えてないだろうし。
そんでその後任務連れてって、領域も勉強させねえと。
「…久我千寿」
彼は一体、どんな過去を持っているのだろうか。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「うお…」
ホントに殺人鬼が爆散した。かなり派手に。
さすが海外。
ガラガラッ
「千寿〜観終わった?」
「今ちょうど派手に爆散したとこです」
「お、じゃあ終わりか」
「はい…って、」
「大丈夫ですか!?」
九条先輩が血まみれで入ってきた。
ホラー映画みたばっかだとより怖い。
「ん?ああ、ごめんごめん。ちょっと洗ってる時間無くて。…やっぱ臭う?」
と先輩が苦笑いを浮かべる。
「いや俺は全然大丈夫すけど。何がどうなってこんな…」
「はは、まさか呪霊が死に際に爆発すると思ってなくてさ」
モロに食らっちった、とヘラヘラ笑っているが、いや笑い事かソレ?
「大した怪我じゃねえから気にしなくて良いよ」
「そんな血まみれで大丈夫なわけないでしょ!止血はもうしたんですか?」
「したよ。んな事より、千寿無傷じゃん。飲み込み早いね、すぐ次の段階いっちゃおうか」
「でも…!」
「大丈夫だから。あんまグダグダしてっとタイミング逃しちゃうからさ、さっさと行くぞ」
「…はい」
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
焦燥、とでも言ったらいいのだろうか。
あの人が笑うときは
あの人が背を向けるときは
何故か、あの人が酷く遠く感じた。
届きもしない星に手を伸ばしているような、そんな感覚が身体中を駆け巡った。
心の片隅ではそのまま届かないでいてくれと訴える自分がいた。
あの人に、ほんの少し触れたら、あの人の全部が一瞬で消えてしまいそうに見えたから。
教室を出て共有スペースへ向かいながら、ある人に電話をかける。
「もしもーし、歌姫センパイ?」
「ええ。どうしたの雪待」
「千寿の初任務に同行したの歌姫センパイって聞いて。彼、どうでした?」
「結果は上々。でも一般の出にしては、まあ…少し肝が据わりすぎてるって言うか。一周まわって不気味ね、あの子」
「はは、言いますねセンパイ」
私はいつもの調子でへらっと笑う。
「笑い事じゃないわよ。呪霊は言葉を発するとはいえ、人じゃない。でも、意志を持ち、触れられる身体を持ち、動き、話す。仮にも生きてるものをなんの躊躇いもなく殺した、その感覚が可笑しいのよ」
「言うなれば"[漢字]異常[/漢字][ふりがな]イレギュラー[/ふりがな]"だ。バグです、彼は」
そう、千寿は今、当たり前のように呪術界に適応している。ほんの数日前まで、そんな事とは無縁だったはずなのに。
「それともう一つ。雪待、初任務の前に彼に体術仕込んでないわよね」
「はい、大して何もしてませんよ。対人用の超基礎の基礎くらいしか」
「それを教えたとして、鞘投げて呪霊の気を引きつつ2階の階段から飛び降りて1階の呪霊の頭貫ける?」
「いや普通無理です」
「何者よあの子…」
「さあ…誰かに格闘技でも教わったんですかね」
「まあ経歴洗えば分かると思うけど」
「本人に直接聞いてきます」
「マジかよアンタ」
「本気と書いてマジです。じゃ、ありがとうございました」
「ええ、じゃあ」
数秒後、通話が切れる。
1個くらい任務終わらして千寿のとこ行くか。流石にまだあの映画観終えてないだろうし。
そんでその後任務連れてって、領域も勉強させねえと。
「…久我千寿」
彼は一体、どんな過去を持っているのだろうか。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「うお…」
ホントに殺人鬼が爆散した。かなり派手に。
さすが海外。
ガラガラッ
「千寿〜観終わった?」
「今ちょうど派手に爆散したとこです」
「お、じゃあ終わりか」
「はい…って、」
「大丈夫ですか!?」
九条先輩が血まみれで入ってきた。
ホラー映画みたばっかだとより怖い。
「ん?ああ、ごめんごめん。ちょっと洗ってる時間無くて。…やっぱ臭う?」
と先輩が苦笑いを浮かべる。
「いや俺は全然大丈夫すけど。何がどうなってこんな…」
「はは、まさか呪霊が死に際に爆発すると思ってなくてさ」
モロに食らっちった、とヘラヘラ笑っているが、いや笑い事かソレ?
「大した怪我じゃねえから気にしなくて良いよ」
「そんな血まみれで大丈夫なわけないでしょ!止血はもうしたんですか?」
「したよ。んな事より、千寿無傷じゃん。飲み込み早いね、すぐ次の段階いっちゃおうか」
「でも…!」
「大丈夫だから。あんまグダグダしてっとタイミング逃しちゃうからさ、さっさと行くぞ」
「…はい」
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
焦燥、とでも言ったらいいのだろうか。
あの人が笑うときは
あの人が背を向けるときは
何故か、あの人が酷く遠く感じた。
届きもしない星に手を伸ばしているような、そんな感覚が身体中を駆け巡った。
心の片隅ではそのまま届かないでいてくれと訴える自分がいた。
あの人に、ほんの少し触れたら、あの人の全部が一瞬で消えてしまいそうに見えたから。
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