綾待ち
あれから、阿澄くんを筆頭に、小鳥遊くんと一人称カナの葉山さんと仲良くなった。初夏になりかけの頃、体育祭の準備で三人と担当が被ったことも一つの要因だ。
「カナ、ペンキきらーい」
「じゃんけん負けたんだからしゃーない」
筆を投げ捨てようとする葉山さんを宥める阿澄くんを横目に、私は小鳥遊くんの絵を眺める。彼は美術部らしく、絵が上手い。が、問題が一つあるとするなら、謎の未確認生物しかかけないということだ。よって、今はペンキ係に詰め込まれて色塗りを任せられている。最初に知ったのは、つい二週間前。数学の授業は自習が多くて、何一つわからなかったため、話し掛けれる小鳥遊くんに聞こうとしたのだが、小鳥遊くんの自習ノートは落書きの巣窟だった。叫ぶ前方後円墳にバッカルコーン状態の大根、歩くジュゴン。オブラートに包んで言うならば、学校のものとして公にするには少し勇気のいるデザインばかりなのだ。
「楽しい?」
いつの間にか手を止めていて、ペンキを扱う彼の手を眺めていた。はっとすると彼とバッチリ目が合う。驚いた私は少し悲鳴を漏らしながら後退りする。
「あ」
阿澄くんが筆を持ったままこちらに近寄ろうとした。それと同時に無惨にもミシッという音が聞こえた。恐る恐る振り返ると、さっき塗った板が割れそうになってたが、幸運なことに、木材は結構乾いていて、塗り直す必要はなかった。
「セーフ」
声が揃い、思わず顔をしかめる。二秒ほど見つめ合って、歯が見えるほど笑う。
「ちょっとーりょーくん真面目にして」
カナに指摘され「え?」と声を発する。慌てて訂正する彼の姿が、いつもの私を見ているみたいで思わず笑ってしまう。
「うん。楽しいよ」
小鳥遊くんが唐突に喋りだして、一体どういう意味かわからなくなる。さっきの返事かと気付いたが、「あっそ」と冷たい返事をしてしまった。謝ろうかと、顔をあげると本人は気にせずペンキを塗り始めていて、謝りづらくなって、私も筆を持った。
「カナ、ペンキきらーい」
「じゃんけん負けたんだからしゃーない」
筆を投げ捨てようとする葉山さんを宥める阿澄くんを横目に、私は小鳥遊くんの絵を眺める。彼は美術部らしく、絵が上手い。が、問題が一つあるとするなら、謎の未確認生物しかかけないということだ。よって、今はペンキ係に詰め込まれて色塗りを任せられている。最初に知ったのは、つい二週間前。数学の授業は自習が多くて、何一つわからなかったため、話し掛けれる小鳥遊くんに聞こうとしたのだが、小鳥遊くんの自習ノートは落書きの巣窟だった。叫ぶ前方後円墳にバッカルコーン状態の大根、歩くジュゴン。オブラートに包んで言うならば、学校のものとして公にするには少し勇気のいるデザインばかりなのだ。
「楽しい?」
いつの間にか手を止めていて、ペンキを扱う彼の手を眺めていた。はっとすると彼とバッチリ目が合う。驚いた私は少し悲鳴を漏らしながら後退りする。
「あ」
阿澄くんが筆を持ったままこちらに近寄ろうとした。それと同時に無惨にもミシッという音が聞こえた。恐る恐る振り返ると、さっき塗った板が割れそうになってたが、幸運なことに、木材は結構乾いていて、塗り直す必要はなかった。
「セーフ」
声が揃い、思わず顔をしかめる。二秒ほど見つめ合って、歯が見えるほど笑う。
「ちょっとーりょーくん真面目にして」
カナに指摘され「え?」と声を発する。慌てて訂正する彼の姿が、いつもの私を見ているみたいで思わず笑ってしまう。
「うん。楽しいよ」
小鳥遊くんが唐突に喋りだして、一体どういう意味かわからなくなる。さっきの返事かと気付いたが、「あっそ」と冷たい返事をしてしまった。謝ろうかと、顔をあげると本人は気にせずペンキを塗り始めていて、謝りづらくなって、私も筆を持った。
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