A.ヒーロー? Q.いいえ、探偵よ
オールマイトが来て
「良いじゃないか皆。カッコイイぜ!!」
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」
フルアーマーの戦闘服に身を包んだ飯田が生真面目を表すかのように肘を90度に曲げ、挙手をした。
「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!!敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内のほうが凶悪敵出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売…このヒーロー飽和社会。ゲフン、真に賢しい敵は屋内にひそむ!!」
「君らにはこれから敵組とヒーロー組に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」
「ですが先生!!我々のクラスは21人、1人余ってしまいますが!」
「アレ!?」
完全に忘れていたオールマイトは小さく「そ…そうだっけ」と呟いた。
「えっと、21人だから1チームだけ3人でやってもらおうかな」
「人数の差は大きいのではないでしょうか!」
「敵が同じ人数とは限らないからね!そういう経験を積んでおくのも自分のためになると思うのさ!」
「まだ初回なのに?それに基礎訓練も無しなの?」
「Hahaha!その基礎を知るための実践さ!」
後付けにしては上手く話を逸らせたと思ったオールマイトだが、生徒達にはバレている。○○がぼそっと「人数忘れてたのね.....」と呟いた。
「バレてる!!!ゴホンッ、ただし、今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」
「勝敗のシステムはどうなります?」「ぶっ飛ばしてもいいんスか」「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……?」「別れるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか」「このマントヤバくない?」
矢継ぎ早に飛び出す疑問。
「んんんーー聖徳太子ィィ!!!いいかい!?状況設定は敵がアジトに核兵器を隠していてヒーローはそれを処理しようとしている!ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか核兵器を回収すること」
授業ビギナーなオールマイトは用意していたメモを開き、書いてある事をそのまま口頭で説明する。大きな体で脇を締め、小さなメモ用紙を読んでいる姿に○○はマスコットのような愛らしさを感じた。
『…可愛い』
「エッ」
「敵は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえる事。コンビ及び対戦相手はくじだ!」
「適当なのですか!?」
「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップする事が多いしそういう事じゃないかな…」
「そうか……!先を見据えた計らい…失礼致しました!」
「いいよ!!早くやろ!!」
『考えるのめんどくさかっただけじゃないかしら』
この時間の間でオールマイトが意外とお茶目な事を知った○○がそう言う。
「(またバレたッ!)」
見てわかるほどに大きな体をびくつかせたいのを見て、そして素直、とオールマイトの人柄を脳に追加で記録した。
「くじ引きだ!!!」
出席番号順にくじを引いていく。21番目の○○は確定で3人チームの為、所属チームのくじだ。そして引いた丸い球にはIの文字があった。
「わー!よろしくね○○ちゃん!私、葉隠透!」
「尾白猿夫。よろしく」
透明な女の子と太い尻尾の生えた男の子。個性が何かは聞かずとも分かる2人。近接戦ねぇ......私も近接なんだけれども.....
そう思いつつ、にっこりと笑みを浮かべた。
『○○、よろしく』
その人の良さそうな笑みと美しい容貌を正面に受けた尾白と葉隠の頬がポッと赤くなり、見えない葉隠の両手袋が頬の位置まで上がる。
「や、やっぱり美人さんだ……」
その様子を近くで見ていたフルフェイスのコスチュームに身を包む細身の男子生徒、瀬呂は意外と上手くやっていけそうじゃんと感心したように「おお、」と息を吐き、そしてあることを思い出し「ゲッ」と声を上げた。
「個性把握テスト4位が3人チームに入んのか…」
『一位じゃないだけマシじゃない。あと入試は37位よ』
「は!?」
すぐさまヘルメットから顔を出した瀬呂は「なんで!?」と○○の顔を凝視した。戦闘能力重視の試験にそれほどまでにうってつけな個性を持ってしてなぜ。すると○○はそんな疑問にあっけらかんと答えた。
『あまり目立ちたくなかったのよ』
ヒーロー養成の最高峰、雄英。全てをかけてでも入学したい者が後を絶たない、そんな高校の入試で何て呑気。瀬呂は絶句した。
「マイペースなんやね!」
無限女子の言葉に○○はまるで心当たりがないように「ん?」と首を傾げた。
「続いて最初の対戦相手はこいつらだ!!Aコンビがヒーロー!!Dコンビが敵だ!!」
あら、面白くなりそうな予感
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