俺は、清水さんが俺をかばってくれたことや、伊織のおかげで順調に学校生活を送ることができている。
そんな、ある日の昼食時のこと。

「おい、春希。お前っていつも昼食１人で食べてるよな」
「いや、あんまり人と一緒に食べることに慣れてなくて...」

そんなことを言っていると周囲から笑い声がとんでくる。

「ははっ。やっぱり田舎者は違うなー」
「海道は面白いなー」

俺は煽られていながらも、少し安心した。
はじめは陰口を言われ、どうなることかと思っていた。
ただ、清水さんの発言で輪の中に入ることができたのだ。
そんな中、ふと思う。
・・・清水さんはなんで俺のことを助けたんだ？・・・
葵ではないのでどうしてもそれがわからなかった。
そんなことを考えていると心を読んだかのように光源が声をかける。

「しかし、１人でぼっち登校だったお前も、よくクラスの輪に入れたな。
　清水さんのおかげかねー？」

俺は、クラスの輪に入れたことを清水さんに感謝しようと思っていた。
ついでに、何で助けたのかも知りたかった。
しかし、始業式のときのクラスメイトたちへの冷たさが頭によぎってしまう。
・・・見た目は美人なんだから、もう少し言葉使いを変えればよいのに・・・
と思ってしまった。
ただ、席が隣りながら接点がないので俺が口出しすることでもないだろう。

「お前、急に黙り込んでどうした？」
「いや、なんでもない」
「おい、清水さんに惚れたのか？」

伊織が少し大きめの声で言ってしまい、周りにそれが聞こえた。
それに清水さんも気付き少し反応した。

「おい、勝手なこと言うなよ」
「ははっ。田舎者は面白いなー」
「うるせえ」

伊織がいつものいじりをしたため、変な誤解をうむことはなかったが、
清水さんに冷たい態度を取られるのだろうと少し怯えてしまった。


・・・


昼食後の昼休憩。
俺がトイレに行こうとしていたときに、誰かに手をつかまれ、
どこかの教室に連れてかれた。
その手はとても美肌で、肌白く、男心を擽るものだった。
どこかの教室に入れられ、２人きりになる。
すると、誰かわかった。
清水さんだ。
さっきのことについてなにか言いたいのだろう。
俺は身構えてしまった。

「海道さんですよね？さっきのことについて言いたいことがありまして」

俺はどう言おうか迷ったが、事実通りに言うことにした。

「あの、さっきのは伊織の悪ふざけなんです。
　ごめんなさい」　
「あー、そのことですか。
　そのことは、どうせそうだろうと思っていましたし、気にしていないですよ」

そんなことを言われ、安心したが、じゃあ何のことだろうと考えてしまった。

「えーっと、なんのことなんでしょう？」
「大変恥ずかしいのですが、ここで一緒に昼食を食べてください！」

俺は驚いた。あんなに冷たい清水さんがこんなことを言い出すのだ。

「だめ、ですか？」
「いや、別にいいんだけど、どうして俺なのかなって思って」
「あの、さっき昼食を１人で食べていると聞き、私と一緒だと思ったんです。
　私、あんまり昼食を食べたりする仲の人がいなくて。
　ちょっと寂しかったんです」
「そういうことなら、いいよ。これからよろしく！」
「はい、よろしくお願いします！」

こんなことがあり、清水さんと昼食を毎日とることになった。
しかし、俺には疑問が残る。
・・・なぜ俺には冷たくないのだろう？・・・
それはいずれわかるだろうと思い、忘れてしまった。