あれ、何だったんだろうなー。
そんなことを考えながら始業式の準備を始めていく。
春希は始業式から高校３年生になるのだが、知り合いが１人もいない上に、
都会に慣れていないこともあり、そんなことはすぐに忘れてしまった。

「学校大丈夫かなー...」


・・・


そして、始業式当日。
周りからは友達同士でワイワイしている声が聞こえるなか、
１人だけぼっち登校だった。
更に緊張が増す中１人の男が声をかけてきた。

「よーっす。始業式早々１人で登校でかわいそうだねー。
　見たことない顔だけど転校生かい？」

見るからに陽キャのようで、顔も結構良い。
声をかけてくれたのだから良いやつなのだろう。
少し明るすぎるのは得意ではなかったが、知り合いを早くつくりたくて。
話すことにした。

「おはようございます。はい、転校生です。田舎の方から来ました。」
「へー。随分と丁寧な言い方だねー。別にタメ口でいいよ。
　まあ、よろしく。」
「よろしく？でいいのかな。」
「ははっ、田舎っぽいな。うんそれでいいよ。
　おっと危ねー自己紹介忘れてたな。
　俺は、光源伊織だ。」

随分と見た目通りの名前だと思い笑いそうになってしまった。

「俺は、海道春希だ。改めてよろしく！」

俺は光源とともに正門へ向かっていった。


・・・


クラス発表の紙が張り出されると、大勢の人が群がっていく。
俺達は人混みが減ってから見に行くことにした。

「おっ。俺達同じクラスじゃないか。良かったな春希」

呼び捨てで名前を呼ばれふと、思い出す。
・・・葵がこの学校にいたりしないかな？・・・

「ほんとだ。知り合いいないから安心だよ。」
「ははっ。やっぱ田舎者は面白いなー」
「面白がるなよ」
「あー。ごめんごめん。じゃあそんなあなたにいいことを教えてやる。
　俺達、あの人気者の清水葵と同じクラスだぜ。
　超美人で賢くて運動もできる完璧な女なんだ」

清水葵と聞き、めちゃくちゃ嬉しかった。
昔遊んでいた葵と全くおなじ名前なのだ。
しかし、女と聞き、少し落ち込んでしまった。

「どうした？浮かない顔して？」
「いや、なんでもない」
「なるほど、緊張してるんだなー。
　やっぱ田舎者は面白い」
「おいっ。別に緊張してねえし。」
「ははっ。」

清水葵と言う名前が頭に残りながら、始業式は始まった。