学校に着くと何やらザワついていた。

「なんかあったのか？」

俺はクラスメイトの[漢字]永瀬龍心[/漢字][ふりがな]ながせりゅうじん[/ふりがな]にそう尋ねる。

「谷が暴走族と繋がってたって事で学校中大騒ぎだ。だから今日の授業無しだとよ。」

谷というのは俺達、6-1の担任で生徒指導主事でもある。

そんな奴が生徒指導主事だったと思うと少し笑えてくる。

「ザワザワしちまって、拓海が浮気してたのがそんなショックなんですかぃ？」

そう宗樹が荷物を自分の机に置き近づいてきた。

「そんな話してねぇよ。」

俺はそう言い宗樹の頭を軽く叩く。

「てか、これが初めてじゃねぇだろ。」

龍心の言う通り、教師が暴走族と絡んでいたということはそこまでして珍しくない。

「って事は担任変わんのか。」

「そりゃそういう事になるだろうな。」

いくら暴走族と繋がりがあったと言っても、担任は担任だ。
少しはショックを受ける。

「俺は可愛い女の先生が…。」

「お前は黙っとけ。」

宗樹が横から口を挟んだが龍心に黙らせられる。

「そのうち生徒までもが暴走族になりそうだな。特に宗四郎とか。」

宗四郎と言うのはクラスメイトの一人で、かなり自分勝手で凶暴なところから教師からは危険視されている。

「ほんと。あいつ人のこと殴ったり凶暴ですからね。」

「お前も相当だがな。」

思わずそうツッコんでしまう。

「うおおおおぉ！」

そう廊下から叫び声が聞こえる。

「噂をすればだな。」

そう龍心がニヤつく。

「大ニュースだ！」

そう言い、バンとドアを開けたのはクラスメイトの渡辺宗四郎だった。

「谷のニュースはもうみんな知ってますぜ。」

スマホをいじりながら宗樹がそう言う。

「んなことじゃねえよ、ボケ。」

そう宗四郎が宗樹に暴言を浴びせる。

「朝会ってすぐそれは酷くないですかぃ？」

宗樹はそう呟く。

「長澤たちが暴走族になったってよ！」

宗四郎はそう言った。

長澤達と言うのは、教師たちでも制御できない程の問題児達である。

「言ったそばから…。」

俺は思わずは頭を抱えてうんざりしてしまう。

「まぁ俺らに危害加えないなら何でもいいけど。」

龍心はそう言った。

「…確かに。そうだな。」

俺はそうは言ったが妙な胸騒ぎがしていた。

これと言った理由は無いが、こういう時の胸騒ぎというのは悲しい事に大概当たってしまうものである。

だが、この胸騒ぎが本当に当たっており、後に長澤らが俺達を巻き込む大事件を起こす事など、この時はまだ夢にも思っていなかった。