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喧嘩無双

#15

新たな仲間

「てかこいつ全然起きないじゃないですか。もう十分経ちますぜ?」

そう宗樹は俺に言ってくる。

「知らねぇよ。宗四郎に言えよ。」

俺は宗樹にそう言い返した。

「俺は軽くぶん殴っただけだ。こいつが弱すぎるんだよ。」

宗四郎はそう言う。

だが、こいつは力加減がわかっていない。

「自分がゴリラって事自覚してください。」

宗樹がそう煽る様な事を言う。

「黙れクソ茶髪。死ね。」

「そこまで言います?」

宗四郎の度を超えた反撃に宗樹は涙目になる。

「んな事よりこいつだろ。早くしねぇと昼休み終わるぞ?」

蓮が話題を戻す。

「もう無理矢理起こすしかねぇか。」

陽汰はそう言うと、男を持ち上げ窓の方へ近づいて行く。

「おい、何しようとしてんだよ。」

「決まってんだろ。落とすんだよ。」

そう陽汰は当たり前と言った様子で答える。

それを見た龍心は頭を抱えてうんざりしてしまった様だ。

「いいぞー!殺っちまえー!」

宗樹がそう野次を飛ばす。

「おう。」

そう言うと陽汰は窓を開けて腕を後ろに大きく振る。

(こいつなら殺りかねねぇ!)

そう思った俺は陽汰を止めようと腕を引っ張ろうとした。

その時だった。

「ヒイィ!殺される!」

そう男は突然叫び陽汰の腕から飛び降りる。

「こいつ!?起きてたのか!?」

俺は想定外の事態に驚きを隠せない。

男はそのまま逃げようとする。

「逃さねぇよ。」

だが、男は龍心にいとも簡単に捕まえられる。

「作戦成功だな。」

陽汰はそう言う。

こいつ、本当は作戦なんか無かった筈だ。

単に落とすつもりだったのだろう。

「命拾いしたな。」

俺は男にそう言う。

「やめろ!来るんじゃねぇ!離せ!」

男はそう言うと、龍心の腕の中で暴れ回る。

が、何の抵抗にもなっていない。

「とりあえず落ち着かせろ。蓮。」

「おう。」

龍心がそう言うと蓮は軽く男の頭を殴り、龍心はその瞬間に腕を離す。

すると男は頭を押さえてしゃがみ込む。

「ナイス力加減だ。」

「宗四郎も見習えよ。」

俺はそう言うが、宗四郎は俺が正しいと言った様子で聞こうとしない。

こいつの困ったところだ。

「おい、言いふらしてんのはお前か?」

龍心はそう男の顔を覗き込み問いかける。

「……。」

男は黙り込んだままだ。

「やっぱり武力行使しか…」

「言います!そうです!」

陽汰が男に近付いて投げようとした瞬間、男は焦った様に口を割る。

「誰からの命令だ?」

「総長…。長澤です。」

総長、という事はやはりこいつは長澤の部下で間違いなさそうだ。

「何の為にだ?」

龍心はまだ質問を続ける。

「それは…。言えません…。」

そう言い、男は黙り込む。

「そうか。残念だ。」

そう言うと龍心は横に移動すると後ろからは陽汰が出てくる。

そして男の腕を掴むと投げの体勢に入る。

「言います!だから離してください!」

何だか可哀想に見えてきたが、一応俺達は被害者だ。

「次の作戦の準備の為の時間稼ぎだって言ってました!」

「次の作戦って言うのは?」

「それは俺も本当に知りません!本当です!」

そう男は必死に言う。

その目は嘘をついている様には見えなかった。

「そうか。ありがとう。拓海、もういいよな。」

龍心はそう俺に聞いてくる。

「あぁ。」

俺がそう返事すると、龍心は引き下がる。

「その代わり、一つだけ約束してくれないか?」

俺がそう聞くと男はずっと首を縦に振っている。

相当陽汰のが効いたようだ。

「金輪際長澤達と関わるな。いいな?」

俺はそう聞くと男は首を縦に振った。

俺はそれを確認すると、男に背を向け、歩き出す。

他の皆も同じ様に歩き出した。

その時だった。

「あの!」

男の大声が聞こえる。

それに反応して振り返ると男は立ち上がってこちらに頭を下げていた。

「俺を仲間に入れてくれませんか?」

「…は?」

「おいおい。」

「正気ですかぃ?」

これには誰もが驚きを隠せない。

何せこんな事、誰も想像していなかったからだ。

「無理なのは承知です!どうか、どうかお願いします!」

男はそう言うと先程よりもっと深く頭を下げる。

「お前、何で長澤の下についてたんだ?」

俺はそう男に問いかける。

「俺の親は、暴走族に殺されました。」

「…!」

突然発せられた言葉に思わず息を呑む。

「俺はずっと暴走族が憎かったんです。そんな時、長澤さんと出会いました。」

男はそこまで言うと一呼吸おく。

「長澤さんは暴走族を全滅させると言いました。俺は暴走族がこの世から消え去るなら何でもいいと思って長澤さんの下につきました。」

男の話はまだ続く。

「けど、長澤さんがしていた事は俺の思っていた事と真反対の事でした。やってる事は暴走族と同じで、暴走族を全滅させると言うのは「平和にする」という意味ではなく、「自分が一番になる」と言う事だったとそこで初めて気付きました。」

「なら早く抜ければよかったじゃねぇか。」

宗四郎はそう言う。

「勇気が出なかったんすよ。」

「勇気?」

宗四郎はそう聞き返す。

「はい。俺には妹がいるんすけど、俺が抜けたら逆恨みで妹までも殺られちまったらどうしようって思うと、抜けようと思っても抜けれなくて…。」

男はそう泣きそうになる。

「なるほどねぇ…。」

話を聞いていた龍心が横で声を漏らす。

「わかった。ならいいだろう。」

俺はそう男に言う。

「皆もそれで良いよな?」

俺は一応問いかけるが、案の定、反対する奴は一人もいない。

「くうぅっ…!」

男はそう唇を噛み締めている。

「ありがとうございます!」

そして再び深々と頭を下げる。

こうして、俺達に新たな仲間が出来たのだった。

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作者メッセージ

少し長めです。

2024/09/08 22:26

ミートスパゲティ ID:≫ipdK9MPMDozNk
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