「クッソ…。何で俺が…。」

俺はそう言い舌打ちをする。

「まぁ、じゃんけんで決めたから仕方ねぇけどよ…。」

俺は自分で考えた作戦の敵に突っ込む部隊、言わば囮になってしまった。

俺は斜め後ろを見る。

すると宗四郎が親指を上に立てている。

反対側も同じように陽汰が親指を立てていた。

準備完了の合図だ。

「面倒臭えな…。」

俺はそう言いながらゆっくりと敵の方向へと向かって行く。

（狙うならあいつだな…。）

俺はそう一番手前にいる一人の男をロックオンする。

そして地面を強く蹴り、そのまま、男の後頭部に膝蹴りをお見舞いする。

ゴンと鈍い音が鳴り、男はそのまま倒れる。

（やべ。）

打ち所が悪かったかもしれない。

死んでなければいいが…。

「敵襲だ！！」

男が倒れた音で俺に気付いた奴らがそう声を上げる。

すると次々と仲間が振り向く。

「一人で来たのか？永瀬。」

そんな中一人が俺に声をかける。

長澤だ。

「当たり前だろ。お前らなんか俺一人で十分だ。」

そうあえて奴らを挑発する。

「随分と舐めてくれるねぇ。」

「舐めるもなにも、雑魚がいくら集まったところで雑魚だろうが。」

「……。」

長澤は黙り込む。

かなり腹が立っている様子だ。

長澤だけじゃない。

他の奴らも顔が真っ赤になってきている。

（もうひと押しか…。）

俺はそう思い挑発を続ける。

「何人でもかかってこいよ。ゴミ共が。」

「クソガキがああぁぁ！！」

相手のうちの一人がブチギレる。

「ぶっ殺してやる！！」

そう言いそいつは拳を振り上げ俺の方へと向かって来る。

「胴がガラ空きだぜ？」

俺はそう言いそいつを前蹴りで蹴り飛ばす。

「全員で殺れ！一対一じゃ勝てない！」

そう長澤が指示を飛ばす。

するとその指示通り、長澤以外全員が俺の方に向かって来る。

（ここまでは計画通り…。）

俺はそう考えながら一直線に後ろへ逃げ出す。

「追え！逃がすな！」

そう長澤が叫んでいる。

（そうだ…。追ってこい！）

そう考えながら走り続ける。

（あと100mってところか…。）

俺はわざと速度を少し緩め、敵がついてこれるようにする。

「バテてきてるぞ！今がチャンスだ！」

敵の一人がそう言う。

（まだ全然バテてねぇわ。ボケ。）

俺は内心、毒を吐きながらも合図を出す。

すると草むらに隠れていた宗四郎達が出てくる。

「何だ！？一人じゃねぇのか！？」

すると案の定的は混乱し、動きが鈍る。

「ようやくか！」

「龍心さん遅いんですよ。」

「お前の五倍は速いわ。」

俺はそう言い、突然止まり反転する。

「うぉ！？」

俺について来ていた敵は突然の出来事に驚き、思わず止まってしまったようだ。

「邪魔だ。」

俺はそいつの顔面を殴り飛ばす。

「ゴハッ…！」

そいつは鼻からを血を流して後ろへ倒れる。

「ほっ。」

「死ね！死ね！」

宗樹と宗四郎が敵をボコボコに殴っているのが見える。

「うわあぁ！」

陽汰に投げ飛ばされた敵がそう悲鳴を上げている。

「ひいいぃぃっ！」

そんな情けない声を上げ、逃げようとした敵を蓮が殴り飛ばす。

どちらも問題なさそうだ。

「化け物だ！」

そう敵の一人が叫ぶ。

「化け物ねぇ…。」

俺は思わずそう声を漏らす。

「俺ら以上の化け物がおたくの総長さんのもとに行ってるんだよなぁ…。」

俺はそう長澤に向かって憐れみの目を向けた。