雪に凍る恋
#1
彼女を助けたくて、僕は告白した。
彼女と出会ったのは、学食で昼飯を食べていた時だ。
「隣、座って良い?」
整った顔と長い黒髪が特徴の、きれいな女子だった。
その日から、僕と彼女は一緒に昼食を食べることになった。本来女子と話すときは緊張するのだが、彼女と話していると思わず気が緩んでしまう。そのくらい、彼女、須坂彩音は魅力的だった。
そんな彼女がいじめられていると知ったのは、彼女と出会って一ヶ月ほど後のことだ。
「私ね、クラスでいじめられているの」
彼女は2年生で僕は3年生。学年もクラスも違うため、普段の彼女の様子は知らなかった。
聞くと、彼女の兄が友達に頼まれて、その友達を殺した。その情報がクラスメイトに知られ、いじめに発展したという。
いじめの内容は、教科書の落書きや上履きに画鋲を入れられたり。時に男子に暴行もされたらしい。
「......僕だったら」
僕は偽善者だ。でもその偽善が人のためになるなら。
「僕だったら、彩音を守ってやれるのに」
こうして、僕たち二人は付き合うことになった。普段は二年生の教室に行くことは無いけど、放課後や休日は二人で過ごすことが多くなった。
いじめを耐えている彼女の為だったら、僕は自分の時間を使って彼女を幸せにしてやりたかった。
「君みたいな優しい人、初めてだよ」
彼女は休日のデート中、僕に笑顔で言った。そんな彼女の笑顔を見るたびに、僕は彼女と一緒に過ごしてよかったと思える。
そんな僕の高校生活も、終わりに近づいていた。
三年の後半、大学入試や就職活動の時期だ。僕と彼女の関係にもケジメをつけないといけなくなった。
「ど、どうしたの?」
12月の初め、雪が降る放課後に、僕は彼女との関係にケジメをつけた。
「だから、そろそろ僕も卒業するんだよ。僕が卒業したら会える時間も少なくなる。ならいっそ、別れよう」
喋るたびに、白い息が宙に舞う。
「......そんな理由?」
彼女の声が少し低くなったように感じた。
「そんな理由で、この関係を終わらせようっていうの?」
「...............」
もちろん、卒業してからもオンラインでトークなんかはできる。遠距離恋愛になるからと言って彼女と別れるのは、強引だと僕も思う。それでも、僕が彼女と別れようとしたのは...。
「お前、兄弟なんていないだろ」
彼女は目を見開いた。
「な...なん...で......」
震えた声だ。
「たまに、お前の母さんと話す機会があったんだ。それで、お前は一人っ子だって」
「......」
「そもそも、いじめられてるという事実すらなかった。あんな噓をついたのは、被害者を演じれば優しい人間が近寄ってくると思ったからだろ?」
彼女は泣いていた。泣いているのに、声は一つも上げなかった。
大学に入ってから聞いた話だが、彼女は部屋で首を吊っていたのを親が見つけたらしい。彼女...いや、あいつが死んだのが僕のせいなら、僕は悪人だろうか。
彼女と出会ったのは、学食で昼飯を食べていた時だ。
「隣、座って良い?」
整った顔と長い黒髪が特徴の、きれいな女子だった。
その日から、僕と彼女は一緒に昼食を食べることになった。本来女子と話すときは緊張するのだが、彼女と話していると思わず気が緩んでしまう。そのくらい、彼女、須坂彩音は魅力的だった。
そんな彼女がいじめられていると知ったのは、彼女と出会って一ヶ月ほど後のことだ。
「私ね、クラスでいじめられているの」
彼女は2年生で僕は3年生。学年もクラスも違うため、普段の彼女の様子は知らなかった。
聞くと、彼女の兄が友達に頼まれて、その友達を殺した。その情報がクラスメイトに知られ、いじめに発展したという。
いじめの内容は、教科書の落書きや上履きに画鋲を入れられたり。時に男子に暴行もされたらしい。
「......僕だったら」
僕は偽善者だ。でもその偽善が人のためになるなら。
「僕だったら、彩音を守ってやれるのに」
こうして、僕たち二人は付き合うことになった。普段は二年生の教室に行くことは無いけど、放課後や休日は二人で過ごすことが多くなった。
いじめを耐えている彼女の為だったら、僕は自分の時間を使って彼女を幸せにしてやりたかった。
「君みたいな優しい人、初めてだよ」
彼女は休日のデート中、僕に笑顔で言った。そんな彼女の笑顔を見るたびに、僕は彼女と一緒に過ごしてよかったと思える。
そんな僕の高校生活も、終わりに近づいていた。
三年の後半、大学入試や就職活動の時期だ。僕と彼女の関係にもケジメをつけないといけなくなった。
「ど、どうしたの?」
12月の初め、雪が降る放課後に、僕は彼女との関係にケジメをつけた。
「だから、そろそろ僕も卒業するんだよ。僕が卒業したら会える時間も少なくなる。ならいっそ、別れよう」
喋るたびに、白い息が宙に舞う。
「......そんな理由?」
彼女の声が少し低くなったように感じた。
「そんな理由で、この関係を終わらせようっていうの?」
「...............」
もちろん、卒業してからもオンラインでトークなんかはできる。遠距離恋愛になるからと言って彼女と別れるのは、強引だと僕も思う。それでも、僕が彼女と別れようとしたのは...。
「お前、兄弟なんていないだろ」
彼女は目を見開いた。
「な...なん...で......」
震えた声だ。
「たまに、お前の母さんと話す機会があったんだ。それで、お前は一人っ子だって」
「......」
「そもそも、いじめられてるという事実すらなかった。あんな噓をついたのは、被害者を演じれば優しい人間が近寄ってくると思ったからだろ?」
彼女は泣いていた。泣いているのに、声は一つも上げなかった。
大学に入ってから聞いた話だが、彼女は部屋で首を吊っていたのを親が見つけたらしい。彼女...いや、あいつが死んだのが僕のせいなら、僕は悪人だろうか。
/ 1