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嗚呼、又生きてしまつたやうだ。

#1


「はぁー……」
__武装探偵社の寮、其の内の一部屋。
ダンボールや酒の空き瓶などで、兎に角散らかってる部屋の中に、その青年は居た。
顔立ちは良く、憂いを纏う青年は、静かに溜め息を吐いて、窓の外にある景色を、ぼーっと見ていた。
「明日が遂に誕生日か……」
独り言を呟いて、ゆっくりと瞬きをする。
そんな青年の名は__[漢字]太宰治[/漢字][ふりがな]だざいおさむ[/ふりがな]といった。

[水平線]
六月十九日、其れは太宰の誕生日であった。
誕生日と言う物は、この世で生きるほぼすべての人間が、喜び、楽しむ、最高のイベントの一つだろう。
だが、太宰にとっては違った。
「私に誕生日なんて要らないのに」
彼は、そう呟く。
何時も、自分の人生が早く終わりますように、と願っている彼にとって、誕生日というものは大嫌いな事の一つであった。
「全くもう。私に歳等、全く必要が無いのだよ!明日が来なければ良いのに……」
むぅ、と頬を膨らせて、いじらしく一人怒る彼は、可愛げが有りながらも、何処か、この世の全てを嫌う者特有の、苦しげな雰囲気を纏っていた。彼の瞳の奥底には何時も、深い深い闇がある。
「…もうこんな時間かぁ」
今は午後の十七時で、外からは、公園で遊んでいる子供の笑い声が聞こえる。太宰は、其の笑い声達を聞きながら、静かに目を閉じた。

[水平線]
__午前一時。彼は自室で、仰向けになりながら、静かに天井を見上げていた。
「……誕生日が来てしまった」
今日が来た事に、少々の絶望を覚えている。電気が点いていない、暗い自室の天井を眺めながら、太宰は想いに耽っていた。
「……早く終わらないかなぁ」
誕生日が、人生が。どっちなのかは分からないが、彼はそう呟くと、静かに目から涙を流した。片側の瞳から、一筋の淡い雫が伝う。
「あぁ……。最低な人生だ」
今日に、明日に、此れからに絶望しながら、過去を振り返る。そうして彼は泣いた。
「…………オダサク……」
大切であった人の名前を呟けば、涙は止まらなかった。
体を起こして、顔を下にやり、考える。
答えなんてものは出ない。出るはずはない。それでも。
「__嗚呼」
彼は。
「又、生きてしまったようだ」

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2024/06/19 01:02

夢野 シオン@水野志恩SS ID:≫7tLEh4qnMjetA
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