オメガバース景♂晴
人気のない場所へ行かなければ。焦げ付きそうな理性の端で、晴信はそれだけを考える。頭はぐらつき体も熱い。五感が鋭敏になっていて、服が肌に触れる感覚だけで足が止まりそうだ。きゅうと疼く下腹を無意識に庇いながら、ふらふらとした足取りで廊下を歩く。
元々アルファであった晴信は、発情期というものを経験したことがない。同じくアルファの景虎に初めて暴かれた際、戯れのような言葉で性を上書きされたときに似たような状態にはなったものの、オメガの性質としての発情期が訪れたのはこれが最初だった。きっとフェロモンも漏れ始めている。つがいのいない発情期のオメガとはいえ、合意なしに襲ってくるような者はいない――誰しもマスターに幻滅されたくはないのだ――だろうが、だからといってこの醜態を晒してもいいというわけでもない。
アルファからオメガに体が変化したことで霊基に負担がかかっているというのが医療班の見解だ。そのため抑制剤は調整中で、手元どころか医務室にもない。つまり晴信はこれから、発情期が収まるまでをなんとかやり過ごさなければならなかった。
「っ、はぁ、……ぅ、?」
敏感になった嗅覚が、ふと知っている――教え込まれた匂いを捉える。いつの間にか居室の並んだエリアまでやってきたらしい。考えるより先に体が動いて、覚えた手順で部屋のロックを外す。ドアが開いた瞬間洪水のように押し寄せてきた匂いに、晴信は吸い寄せられるようにして室内に入った。ここが自身の部屋ではないことは理解している。しかし、このまま背を向けて自室へ向かうことができるほどには、晴信の頭は回っていなかった。
この匂いに包まれたいと本能が訴える。衝動に抗おうと下腹に爪を立てるも、背後でドアが閉じてロックまでかかってしまえばもう駄目だった。強くなった香りは部屋が閉ざされたせいか、それとも晴信の感覚がより鋭くなっているせいか。どちらにしても抗うすべなどとうになく、僅かに残る理性すらじりじりと焼き切れていく。
「……もっと、」
もっと、匂いの強いものを。ふらりと足を踏み出した晴信を止めるものはいない。最も匂いが強いのは寝台で、そこへ眼鏡にかなうものを持ってきて並べていく。満足いくものが出来上がってから、晴信は寝台の中に潜り込んだ。
魔力で編んだ服は消し去ってしまい、薄暗がりの中で身を丸くする。身体中を求めていた匂いに包まれて、切迫していたはずの思考がとろとろと溶ける。そっと後ろに回した手で尻たぶを割り開き、指を這わせたそこはすでに濡れていた。ねだるように吸い付く孔に指先を押し付けると、そのままぬるりと入り込む。
「んぁ、あ……っ♡は、ぅ、♡」
初めての発情期で指がうまく動かせず、それでも粘膜を掻き分ける感触だけで気持ちよくて堪らない。ちゅぷ、くちゅ、と愛液が水音を立てて、聴覚からも快楽を拾ってしまう。思わず額を敷布に擦り付けると彼の匂いがした。普段ならばなんでもないはずのそれが晴信を狂わせるのと同時に、彼の気配に包み込まれる安心感でいっぱいになる。
「ぁ、うう……♡景虎、かげとら、きもちいい……♡」
閉じることを忘れた唇から溢れる唾液を拭う余裕もない。鋭さと温もりが混ざり合う神秘的な香りの中で、晴信はただ本能のままに快楽を追いかけた。
元々アルファであった晴信は、発情期というものを経験したことがない。同じくアルファの景虎に初めて暴かれた際、戯れのような言葉で性を上書きされたときに似たような状態にはなったものの、オメガの性質としての発情期が訪れたのはこれが最初だった。きっとフェロモンも漏れ始めている。つがいのいない発情期のオメガとはいえ、合意なしに襲ってくるような者はいない――誰しもマスターに幻滅されたくはないのだ――だろうが、だからといってこの醜態を晒してもいいというわけでもない。
アルファからオメガに体が変化したことで霊基に負担がかかっているというのが医療班の見解だ。そのため抑制剤は調整中で、手元どころか医務室にもない。つまり晴信はこれから、発情期が収まるまでをなんとかやり過ごさなければならなかった。
「っ、はぁ、……ぅ、?」
敏感になった嗅覚が、ふと知っている――教え込まれた匂いを捉える。いつの間にか居室の並んだエリアまでやってきたらしい。考えるより先に体が動いて、覚えた手順で部屋のロックを外す。ドアが開いた瞬間洪水のように押し寄せてきた匂いに、晴信は吸い寄せられるようにして室内に入った。ここが自身の部屋ではないことは理解している。しかし、このまま背を向けて自室へ向かうことができるほどには、晴信の頭は回っていなかった。
この匂いに包まれたいと本能が訴える。衝動に抗おうと下腹に爪を立てるも、背後でドアが閉じてロックまでかかってしまえばもう駄目だった。強くなった香りは部屋が閉ざされたせいか、それとも晴信の感覚がより鋭くなっているせいか。どちらにしても抗うすべなどとうになく、僅かに残る理性すらじりじりと焼き切れていく。
「……もっと、」
もっと、匂いの強いものを。ふらりと足を踏み出した晴信を止めるものはいない。最も匂いが強いのは寝台で、そこへ眼鏡にかなうものを持ってきて並べていく。満足いくものが出来上がってから、晴信は寝台の中に潜り込んだ。
魔力で編んだ服は消し去ってしまい、薄暗がりの中で身を丸くする。身体中を求めていた匂いに包まれて、切迫していたはずの思考がとろとろと溶ける。そっと後ろに回した手で尻たぶを割り開き、指を這わせたそこはすでに濡れていた。ねだるように吸い付く孔に指先を押し付けると、そのままぬるりと入り込む。
「んぁ、あ……っ♡は、ぅ、♡」
初めての発情期で指がうまく動かせず、それでも粘膜を掻き分ける感触だけで気持ちよくて堪らない。ちゅぷ、くちゅ、と愛液が水音を立てて、聴覚からも快楽を拾ってしまう。思わず額を敷布に擦り付けると彼の匂いがした。普段ならばなんでもないはずのそれが晴信を狂わせるのと同時に、彼の気配に包み込まれる安心感でいっぱいになる。
「ぁ、うう……♡景虎、かげとら、きもちいい……♡」
閉じることを忘れた唇から溢れる唾液を拭う余裕もない。鋭さと温もりが混ざり合う神秘的な香りの中で、晴信はただ本能のままに快楽を追いかけた。
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