世界でいちばんやさしい嫌われ者
「ギラ、ギラ。」
ヤンマはゴッドトンボに乗って、ギラを探していた。
ゴッドトンボはシュゴッドの中でも飛び抜けて視力がいい。
どこかの国でまたダグデドがお遊びと称して破壊活動を行っているかもしれない。
ギラがそれに手を出すまでに止めなくては。
防犯カメラも、全ての国のものを確認した。けれど、見つけることはできなかった。
「どこなんだよっ……。」
探せど探せど、彼は遠くに離れていくようで。
探せど探せど、彼は闇に飲み込まれていくようで。
「怖い……。」
誰も彼のことを知らない。
誰もが彼のことを嫌う。
彼はきっと、自ら堕ちていく。消えてしまう。
それが怖かった。
「わかってんだよ……。」
自分が悪いことも、ギラは悪くないことも。
今回に関しては自分の非を認めざるをえない。
わかってる。……だから。
「帰ってこいよ、戻ってこいよ。タコメンチ。」
聞いているかはわからない。
届いているかもわからない。
それでもヤンマは、叫ばずにはいられなかった。
「シュゴッダム国王!!!ギラ!!!」
彼の名を。彼の全てを。
誰も覚えていない、彼の真実を。
ふと下を見ると、赤いマントにくるまれた青年の姿が、草むらの中にあった。
ギラ。急いでヤンマはゴッドトンボを降下させる。
膝ほどの丈もある草むらの中に着陸すると、ヤンマは駆け出す。
「おい、タコメンチ!!!!」
ギラを抱えあげるようにしてあだ名を呼ぶが、彼が目覚める気配はない。
何度も何度も体を揺さぶるが、反応もない。
死んでいるんじゃないかと何度か思ったが、彼の心臓はきちんと動いていた。
「やぁっと来たぁ!」
「……!?」
いきなり背後からダグデドの声が聞こえ、ヤンマは身構える。
「遅いよ〜。ずぅっと待ってたのにさぁ。」
「ダグ、デド。」
声が出ない。体が全て覚えている。
ダグデドの力も、性格も、やったことも。全て全て、覚えている。
「さぁてさぁて。ここからが本番なんだよな〜。」
「なに、が。」
「お、気になっちゃう?貴様には特別に教えてやろう!!」
エラそうにふんぞり返ってダグデドはヤンマを指さした。
ヤンマの額とダグデドのスイッチの間に青いスイッチのようなものが浮かび上がる。
「こいつは『元通りスイッチ』!!『嫌われスイッチ』の効果を消すものさ!!」
「きらわれ、スイッチ?」
ヤンマは理解できない単語に、首を傾げる。
するとダグデドは、説明するのも面倒くさいと言うかのように、ヤンマの頭の中にある記憶を流し込んだ。
【『嫌われスイッチ』。
押した奴が押したときに考えていた奴らが、押した奴を嫌いになるんだ!】
【お前が押せば、他のおツブ共を見逃してやるよ。
俺様のチキューお片付けをやめてやるってこと!!】
それは、ギラの記憶。
自らの身を呈して世界を選んだ、世界でいちばんやさしい嫌われ者の記憶。
「ぎ、ら。」
「ほらほら。お前は何も知らない。何が叡智の王だ!
弱くてぇ、無力。何をもって王になったんだか。」
ダグデドはここぞとばかりにヤンマを煽り散らかす。
ヤンマは何も言えない。ただただ、頭を抱えるだけ。
「さぁ、ギラ。起きろ。」
ダグデドのその声に誘導でもされたかのようにギラはムクリと起き上がる。
「ギラっ!!」
「さぁ、このスイッチを押して。これでもう、全部終わる。」
ヤンマが止めても、何も反応しない、感情を失ったような表情をしたギラは、ぎこちなく右手を上げると青いボタンを押した。
全てが終わって、また始まった。
ヤンマはゴッドトンボに乗って、ギラを探していた。
ゴッドトンボはシュゴッドの中でも飛び抜けて視力がいい。
どこかの国でまたダグデドがお遊びと称して破壊活動を行っているかもしれない。
ギラがそれに手を出すまでに止めなくては。
防犯カメラも、全ての国のものを確認した。けれど、見つけることはできなかった。
「どこなんだよっ……。」
探せど探せど、彼は遠くに離れていくようで。
探せど探せど、彼は闇に飲み込まれていくようで。
「怖い……。」
誰も彼のことを知らない。
誰もが彼のことを嫌う。
彼はきっと、自ら堕ちていく。消えてしまう。
それが怖かった。
「わかってんだよ……。」
自分が悪いことも、ギラは悪くないことも。
今回に関しては自分の非を認めざるをえない。
わかってる。……だから。
「帰ってこいよ、戻ってこいよ。タコメンチ。」
聞いているかはわからない。
届いているかもわからない。
それでもヤンマは、叫ばずにはいられなかった。
「シュゴッダム国王!!!ギラ!!!」
彼の名を。彼の全てを。
誰も覚えていない、彼の真実を。
ふと下を見ると、赤いマントにくるまれた青年の姿が、草むらの中にあった。
ギラ。急いでヤンマはゴッドトンボを降下させる。
膝ほどの丈もある草むらの中に着陸すると、ヤンマは駆け出す。
「おい、タコメンチ!!!!」
ギラを抱えあげるようにしてあだ名を呼ぶが、彼が目覚める気配はない。
何度も何度も体を揺さぶるが、反応もない。
死んでいるんじゃないかと何度か思ったが、彼の心臓はきちんと動いていた。
「やぁっと来たぁ!」
「……!?」
いきなり背後からダグデドの声が聞こえ、ヤンマは身構える。
「遅いよ〜。ずぅっと待ってたのにさぁ。」
「ダグ、デド。」
声が出ない。体が全て覚えている。
ダグデドの力も、性格も、やったことも。全て全て、覚えている。
「さぁてさぁて。ここからが本番なんだよな〜。」
「なに、が。」
「お、気になっちゃう?貴様には特別に教えてやろう!!」
エラそうにふんぞり返ってダグデドはヤンマを指さした。
ヤンマの額とダグデドのスイッチの間に青いスイッチのようなものが浮かび上がる。
「こいつは『元通りスイッチ』!!『嫌われスイッチ』の効果を消すものさ!!」
「きらわれ、スイッチ?」
ヤンマは理解できない単語に、首を傾げる。
するとダグデドは、説明するのも面倒くさいと言うかのように、ヤンマの頭の中にある記憶を流し込んだ。
【『嫌われスイッチ』。
押した奴が押したときに考えていた奴らが、押した奴を嫌いになるんだ!】
【お前が押せば、他のおツブ共を見逃してやるよ。
俺様のチキューお片付けをやめてやるってこと!!】
それは、ギラの記憶。
自らの身を呈して世界を選んだ、世界でいちばんやさしい嫌われ者の記憶。
「ぎ、ら。」
「ほらほら。お前は何も知らない。何が叡智の王だ!
弱くてぇ、無力。何をもって王になったんだか。」
ダグデドはここぞとばかりにヤンマを煽り散らかす。
ヤンマは何も言えない。ただただ、頭を抱えるだけ。
「さぁ、ギラ。起きろ。」
ダグデドのその声に誘導でもされたかのようにギラはムクリと起き上がる。
「ギラっ!!」
「さぁ、このスイッチを押して。これでもう、全部終わる。」
ヤンマが止めても、何も反応しない、感情を失ったような表情をしたギラは、ぎこちなく右手を上げると青いボタンを押した。
全てが終わって、また始まった。
このボタンは廃止予定です