世界でいちばんやさしい嫌われ者
王たちは、行ってしまったヤンマの背中をずっと見つめていた。
何が起きているのか彼らには理解しがたかったが、二人の間に異様な空気が流れているのは察せずともわかった。
「何を知っている。」
リタが問い詰めようとラクレスの方を睨むが、彼はそれを意にもとめない。
「さぁ?どうだろう。裁判長のご想像のままに。」
普段以上にのらりくらり。
表情も、いまだ読めない。
「あのダグデドというやつはは何者だ?
何をしにここに来た?」
「さぁ?私にはわかりかねる。」
何を聞いても答えは「さぁ?」まるで、昔のカグラギのように。
まるで、何も自分の意志などないかのように。
王たちは、そんなラクレスが不気味でしょうがなかった。
そして、ヤンマのあの顔も、王たちにとっては不気味だ。
ヤンマの泣きそうな顔など今まで見たこともなかった。
あの生物になにか深いトラウマでもあるのだろうかと思ったほどだった。
【自分がやってきたこと。何も思い出さない仲間。堕ちちゃった相棒。】
彼の震える手、ダグデドのあの言葉。
そして、彼らしくもなく膝から崩れ落ちた彼の姿。
彼を見つめるギラの姿。……ギラ。
王たちにとっては嫌悪の対象だが、何をきっかけにそんなに嫌ったのかは覚えていない。
2年前に出会ったときから気に食わなかった。それだけだ。
ラクレスのことも好きなわけではないが。
でもそれはヤンマも同じ。
しかしヤンマがあの瞬間、ギラを見つめた目は、嫌悪の目ではなかった。
まるで心配でもするかのような、戻ってこいとでも言うかのような、瞳。
なぜそんなことをするのか王たちにはわからない。興味もない。
「帰りましょうか、ヤンマ殿も帰ってしまわれたことですし。」
「そうね。」
王たちは続々と王の間をあとにしていく。
シュゴ仮面をおいて、自らの国へと帰っていく。
王たちの記憶の鍵は、少しずつきつく閉められていくのも知らずに。
[水平線]
………ダグデドという生物が何者なのか。
ラクレスが言ったことは真実だ。「わからない。」
何年も何年も見てきたが、あんな生物がどう生まれたのかすらわからない。
もしかしたら、ギラみたいにシュゴッドソウルを大量に食べさせられて生まれたのかもしれないが、今になっては確かめようがない。
王たちが自らを気味悪がっているのは感じる。
まるで今の自分は侵略者のような笑みを浮かべていることだろう。
ラクレスはそう思いながらどっかりと玉座に腰を下ろす。
そしてふぅ、とため息。
ヤンマが思い出してくれたのは幸運だった。
それほどまでにヤンマとギラの結びつきが強かったのだろうかと思いを巡らせる。
しかしそれは、ヤンマに思い罪の意識を背負わせてしまったことにもなる。
【俺も、許す気はねぇよ。】
彼は自分を赦すつもりはない。
一生、この十字架を背負って生きていくつもりだろう。
もし、ギラがもとに戻っても、ヤンマが頭を下げようとしたら、必死で止めるだろう。
ギラはそういう子だ。ヤンマもそれをわかっている。
「もう少しぐらい、自分に甘くてもいいだろう……?」
その言葉が届かないのはわかっている。
いつだって彼は、自分の国のことを考えている。
自分のことなんてなかなか考えないから。
彼らはきっと自らを責め続けるだろう。
ギラを苦しめてしまったヤンマ。
結果的にヤンマを苦しめたギラ。
相手を許し続け、自分を一生責めることだろう。
目に見えている。
「流石に、やらなくてはならないか。」
作戦のテンポを上げることを視野に、入れ、もう一度ため息。
王の間の歯車たちは、自らを見ているようで、少し怖かった。
―お兄ちゃん、お兄ちゃん、助けて―
ギラの声が聞こえるような気がする。
大丈夫だよ、大丈夫だよ、ギラ。
心のなかでそうギラに語りかける。
助けることのできない自分に負い目を感じながら。
何が起きているのか彼らには理解しがたかったが、二人の間に異様な空気が流れているのは察せずともわかった。
「何を知っている。」
リタが問い詰めようとラクレスの方を睨むが、彼はそれを意にもとめない。
「さぁ?どうだろう。裁判長のご想像のままに。」
普段以上にのらりくらり。
表情も、いまだ読めない。
「あのダグデドというやつはは何者だ?
何をしにここに来た?」
「さぁ?私にはわかりかねる。」
何を聞いても答えは「さぁ?」まるで、昔のカグラギのように。
まるで、何も自分の意志などないかのように。
王たちは、そんなラクレスが不気味でしょうがなかった。
そして、ヤンマのあの顔も、王たちにとっては不気味だ。
ヤンマの泣きそうな顔など今まで見たこともなかった。
あの生物になにか深いトラウマでもあるのだろうかと思ったほどだった。
【自分がやってきたこと。何も思い出さない仲間。堕ちちゃった相棒。】
彼の震える手、ダグデドのあの言葉。
そして、彼らしくもなく膝から崩れ落ちた彼の姿。
彼を見つめるギラの姿。……ギラ。
王たちにとっては嫌悪の対象だが、何をきっかけにそんなに嫌ったのかは覚えていない。
2年前に出会ったときから気に食わなかった。それだけだ。
ラクレスのことも好きなわけではないが。
でもそれはヤンマも同じ。
しかしヤンマがあの瞬間、ギラを見つめた目は、嫌悪の目ではなかった。
まるで心配でもするかのような、戻ってこいとでも言うかのような、瞳。
なぜそんなことをするのか王たちにはわからない。興味もない。
「帰りましょうか、ヤンマ殿も帰ってしまわれたことですし。」
「そうね。」
王たちは続々と王の間をあとにしていく。
シュゴ仮面をおいて、自らの国へと帰っていく。
王たちの記憶の鍵は、少しずつきつく閉められていくのも知らずに。
[水平線]
………ダグデドという生物が何者なのか。
ラクレスが言ったことは真実だ。「わからない。」
何年も何年も見てきたが、あんな生物がどう生まれたのかすらわからない。
もしかしたら、ギラみたいにシュゴッドソウルを大量に食べさせられて生まれたのかもしれないが、今になっては確かめようがない。
王たちが自らを気味悪がっているのは感じる。
まるで今の自分は侵略者のような笑みを浮かべていることだろう。
ラクレスはそう思いながらどっかりと玉座に腰を下ろす。
そしてふぅ、とため息。
ヤンマが思い出してくれたのは幸運だった。
それほどまでにヤンマとギラの結びつきが強かったのだろうかと思いを巡らせる。
しかしそれは、ヤンマに思い罪の意識を背負わせてしまったことにもなる。
【俺も、許す気はねぇよ。】
彼は自分を赦すつもりはない。
一生、この十字架を背負って生きていくつもりだろう。
もし、ギラがもとに戻っても、ヤンマが頭を下げようとしたら、必死で止めるだろう。
ギラはそういう子だ。ヤンマもそれをわかっている。
「もう少しぐらい、自分に甘くてもいいだろう……?」
その言葉が届かないのはわかっている。
いつだって彼は、自分の国のことを考えている。
自分のことなんてなかなか考えないから。
彼らはきっと自らを責め続けるだろう。
ギラを苦しめてしまったヤンマ。
結果的にヤンマを苦しめたギラ。
相手を許し続け、自分を一生責めることだろう。
目に見えている。
「流石に、やらなくてはならないか。」
作戦のテンポを上げることを視野に、入れ、もう一度ため息。
王の間の歯車たちは、自らを見ているようで、少し怖かった。
―お兄ちゃん、お兄ちゃん、助けて―
ギラの声が聞こえるような気がする。
大丈夫だよ、大丈夫だよ、ギラ。
心のなかでそうギラに語りかける。
助けることのできない自分に負い目を感じながら。
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