二次創作
世界でいちばんやさしい嫌われ者
「全員呼び出して、何の用だスカポンタヌキ。」
湧き上がるイラつきをおさえながらヤンマはラクレスを睨む。
ただでさえここ最近胸の奥が落ち着かないのだ。
何かを忘れているような、大切なものを忘れてしまったような。
そんな感じがしているのだ。
「……これだけは覚えておけ。
私はきっと、許すことはないだろう。」
ラクレスの一言は、ヤンマにとって意味深でしかない。
けれど、それでも。ヤンマの額から流れる冷や汗と、背筋を襲う寒気は止まらない。
「ダグデド様。」
「はいはいは〜いっ!!!」
ラクレスに呼ばれ、やって来たその生物(?)。
見たことのない生物のはずなのに、ヤンマはその生物の姿形を知っていた。
「だぐ、でど?」
口をついて出たその言葉。
ヤンマの知らない単語。
王たちもキョトンとしている。
でもそれを聞いて、ラクレスは目を見開いた。
「やんま、がすと……?」
「あっれ〜?お前は覚えてるのかな?」
まるでその言葉を発することがタブーなように。
その言葉を発することが相手にとって驚くようなことのように。
「なんの、ことだ。」
うまく言葉が発せない。
目から涙まで出てきた。
王たちの前で醜態をさらすわけには行かないと思ってはいるものの、涙は流れ、地面へとポトリ。
「わかん、ない。」
こんな言葉を発したのは、何年ぶりだろう。
大昔、ギンに言ったのが最後のようにヤンマは記憶している。
「全部わかんねぇ……。何なんだよ、これ。
誰か答えてくれよ!!!!!」
流れるように波打つ鼓動。
自らを見つめる王たち。
そして___。[太字]何か[/太字]を知る二人。
どこかで見たことのあるような、構図。
でも、なにか足りない。
かけらが、ピースのかけらが、プログラムのたった一つのコードが。
[大文字]抜け落ちている。[/大文字]
「なんだ、なんだ、なんだ……?」
わからない。それはヤンマにとって一番苦しいこと。
知りたい、知りたい。知らなきゃ。思い、出さなきゃ。
……思い出す?何を。忘れていることなんて、、。
恐る恐る探った記憶は虫食いだらけで。
それに初めて気づいたことに悪寒が走った。
「ヤンマ殿?」
「どうしたんだ。」
「気分でも悪いのかい?」
怪訝な顔の王たちが気に食わない。
なぜ不思議に思わない?
逃げ惑う反逆者。
反抗する気力もなさそうなあの倒れ方。
まともに戦う気のないあの剣の振るい方。
恐怖も何もなくなった、あの座った目。
知らない、知らない。知らないはずだ。
なのに、体が覚えている。
——お前はそういうやつだよな。
俺の知らない【俺】が言う。
それでも、鍵でもかけられているのかと思うほどに、記憶の虫食いは直らない。
なんだよ、なんなんだよ。
ふと、ラクレスとダグデドという生物越しに玉座が目に入った。
その玉座は、シュゴ仮面が……ラクレスが座るものだ。
自分が知っているかぎり。
それなのに。ヤンマはここ数日、彼が座っていることに違和感を抱かずにはいられなかった。まるで、ここには他に座るべき人がいるというかのように。心が訴えている。
ギラの姿が、脳裏にちらつく。ピタリと、玉座とギラが重なり合った。
ヤンマの頭の歯車が、ガラガラと動き出す。
あぁ、あぁ。そうだ、そうだ!!!!
ヤンマの目に映るシュゴッダム国王は、いつだって彼なんかではなかったではないか。
「ギラ。」
ギラ・ハスティー。その男、唯一人だった。
記憶の鍵が溶けていく。
すべての記憶が脳内に充満していく。
なぜ忘れていたんだ。なんでこんなことしちまったんだ。
気づけばヤンマは駆け出していた。
もう、アイツラにかまっていられない。……王たちにも。
とにかくギラだ。ギラを助けなければ。助けて、それで__。
その言葉の続きがでないうちに、身体は引き戻される。
「だめだよ〜。チェッ、自力で解いちゃうんだ。
ゴーマに改良お願いしないとね〜。」
「離せ!!!!!」
「や〜だ〜。」
如何せん力のないヤンマである。
がっしりと掴まれた腕にどう力を入れようとも動くことはない。
「そうか〜。君[太字]だけ[/太字]ならまだいいや。
こっちおいで、ギラ?」
「……は?」
ヤンマの胸に、その言葉は突き刺さる。
「はい、ダグデド様。ここに。」
「こいつらに自己紹介してやりな〜。」
「ギラにございます。
王様方もどうぞお見知りおきを。」
ありえないと思った。ギラがダグデドに従うなんて。
ヤンマの背筋を伝う冷や汗が、消えることはない。
「ぎ、ら?」
「ギラ!!!!!なんでお前がそこにいる!!??」
ヤンマの言葉とリタの言葉が重なる。
「ギラは俺様の子供さ。つまり宇宙の王子!
いーっぱい遊ぶ、俺様のオトモダチでもあるかなぁ?」
ニコニコ。そんな擬音がピッタリ合う声色に、ヤンマは吐き気がした。
もう、崩れ落ちそうなほどに足の力が抜けていた。
「ねぇ、どんな気持ち?
自分がやってきたこと。何も思い出さない仲間。堕ちちゃった相棒。
お前があんなことしなかったら、こうなってなかったかもしれないんだよ〜?」
胸の奥に刺さり、引き抜こうとしても引き抜けない言葉の矢が、ヤンマを襲う。
もし、もし。自分がギラの味方であれたなら。いつものままであれたなら。
ギラはここにはいなかったはずだ。
「苦しいよね?憎いよね?あははっ!!!
サイッコー。やっぱりお片付けはこうでなくっちゃ。」
「ダグデド様。もっと遊びに行きましょう!」
「そうだな、ギラ!あと、俺様のことはパパと呼べ!!
さー、いっくぞ〜!!ぎゅぃーん!!!」
ひとしきり笑った後、ダグデドとギラは消えていった。
ヤンマは崩れ落ち、数粒、涙を落とすが、すぐに拭うと前を向く。
「……なぁ、[漢字]シュゴ仮面[/漢字][ふりがな]ラクレス[/ふりがな]。」
「なんだ。」
「俺も、許す気はねぇよ。」
何がなんだかわからずに二人の会話を見つめる王たちをよそに、ヤンマはそのまま王の間を後にした。
「[小文字]ありがとう、ヤンマ。[/小文字]」
ラクレスのその小さなつぶやきを、ヤンマが聞いたかどうかは、定かではない。
湧き上がるイラつきをおさえながらヤンマはラクレスを睨む。
ただでさえここ最近胸の奥が落ち着かないのだ。
何かを忘れているような、大切なものを忘れてしまったような。
そんな感じがしているのだ。
「……これだけは覚えておけ。
私はきっと、許すことはないだろう。」
ラクレスの一言は、ヤンマにとって意味深でしかない。
けれど、それでも。ヤンマの額から流れる冷や汗と、背筋を襲う寒気は止まらない。
「ダグデド様。」
「はいはいは〜いっ!!!」
ラクレスに呼ばれ、やって来たその生物(?)。
見たことのない生物のはずなのに、ヤンマはその生物の姿形を知っていた。
「だぐ、でど?」
口をついて出たその言葉。
ヤンマの知らない単語。
王たちもキョトンとしている。
でもそれを聞いて、ラクレスは目を見開いた。
「やんま、がすと……?」
「あっれ〜?お前は覚えてるのかな?」
まるでその言葉を発することがタブーなように。
その言葉を発することが相手にとって驚くようなことのように。
「なんの、ことだ。」
うまく言葉が発せない。
目から涙まで出てきた。
王たちの前で醜態をさらすわけには行かないと思ってはいるものの、涙は流れ、地面へとポトリ。
「わかん、ない。」
こんな言葉を発したのは、何年ぶりだろう。
大昔、ギンに言ったのが最後のようにヤンマは記憶している。
「全部わかんねぇ……。何なんだよ、これ。
誰か答えてくれよ!!!!!」
流れるように波打つ鼓動。
自らを見つめる王たち。
そして___。[太字]何か[/太字]を知る二人。
どこかで見たことのあるような、構図。
でも、なにか足りない。
かけらが、ピースのかけらが、プログラムのたった一つのコードが。
[大文字]抜け落ちている。[/大文字]
「なんだ、なんだ、なんだ……?」
わからない。それはヤンマにとって一番苦しいこと。
知りたい、知りたい。知らなきゃ。思い、出さなきゃ。
……思い出す?何を。忘れていることなんて、、。
恐る恐る探った記憶は虫食いだらけで。
それに初めて気づいたことに悪寒が走った。
「ヤンマ殿?」
「どうしたんだ。」
「気分でも悪いのかい?」
怪訝な顔の王たちが気に食わない。
なぜ不思議に思わない?
逃げ惑う反逆者。
反抗する気力もなさそうなあの倒れ方。
まともに戦う気のないあの剣の振るい方。
恐怖も何もなくなった、あの座った目。
知らない、知らない。知らないはずだ。
なのに、体が覚えている。
——お前はそういうやつだよな。
俺の知らない【俺】が言う。
それでも、鍵でもかけられているのかと思うほどに、記憶の虫食いは直らない。
なんだよ、なんなんだよ。
ふと、ラクレスとダグデドという生物越しに玉座が目に入った。
その玉座は、シュゴ仮面が……ラクレスが座るものだ。
自分が知っているかぎり。
それなのに。ヤンマはここ数日、彼が座っていることに違和感を抱かずにはいられなかった。まるで、ここには他に座るべき人がいるというかのように。心が訴えている。
ギラの姿が、脳裏にちらつく。ピタリと、玉座とギラが重なり合った。
ヤンマの頭の歯車が、ガラガラと動き出す。
あぁ、あぁ。そうだ、そうだ!!!!
ヤンマの目に映るシュゴッダム国王は、いつだって彼なんかではなかったではないか。
「ギラ。」
ギラ・ハスティー。その男、唯一人だった。
記憶の鍵が溶けていく。
すべての記憶が脳内に充満していく。
なぜ忘れていたんだ。なんでこんなことしちまったんだ。
気づけばヤンマは駆け出していた。
もう、アイツラにかまっていられない。……王たちにも。
とにかくギラだ。ギラを助けなければ。助けて、それで__。
その言葉の続きがでないうちに、身体は引き戻される。
「だめだよ〜。チェッ、自力で解いちゃうんだ。
ゴーマに改良お願いしないとね〜。」
「離せ!!!!!」
「や〜だ〜。」
如何せん力のないヤンマである。
がっしりと掴まれた腕にどう力を入れようとも動くことはない。
「そうか〜。君[太字]だけ[/太字]ならまだいいや。
こっちおいで、ギラ?」
「……は?」
ヤンマの胸に、その言葉は突き刺さる。
「はい、ダグデド様。ここに。」
「こいつらに自己紹介してやりな〜。」
「ギラにございます。
王様方もどうぞお見知りおきを。」
ありえないと思った。ギラがダグデドに従うなんて。
ヤンマの背筋を伝う冷や汗が、消えることはない。
「ぎ、ら?」
「ギラ!!!!!なんでお前がそこにいる!!??」
ヤンマの言葉とリタの言葉が重なる。
「ギラは俺様の子供さ。つまり宇宙の王子!
いーっぱい遊ぶ、俺様のオトモダチでもあるかなぁ?」
ニコニコ。そんな擬音がピッタリ合う声色に、ヤンマは吐き気がした。
もう、崩れ落ちそうなほどに足の力が抜けていた。
「ねぇ、どんな気持ち?
自分がやってきたこと。何も思い出さない仲間。堕ちちゃった相棒。
お前があんなことしなかったら、こうなってなかったかもしれないんだよ〜?」
胸の奥に刺さり、引き抜こうとしても引き抜けない言葉の矢が、ヤンマを襲う。
もし、もし。自分がギラの味方であれたなら。いつものままであれたなら。
ギラはここにはいなかったはずだ。
「苦しいよね?憎いよね?あははっ!!!
サイッコー。やっぱりお片付けはこうでなくっちゃ。」
「ダグデド様。もっと遊びに行きましょう!」
「そうだな、ギラ!あと、俺様のことはパパと呼べ!!
さー、いっくぞ〜!!ぎゅぃーん!!!」
ひとしきり笑った後、ダグデドとギラは消えていった。
ヤンマは崩れ落ち、数粒、涙を落とすが、すぐに拭うと前を向く。
「……なぁ、[漢字]シュゴ仮面[/漢字][ふりがな]ラクレス[/ふりがな]。」
「なんだ。」
「俺も、許す気はねぇよ。」
何がなんだかわからずに二人の会話を見つめる王たちをよそに、ヤンマはそのまま王の間を後にした。
「[小文字]ありがとう、ヤンマ。[/小文字]」
ラクレスのその小さなつぶやきを、ヤンマが聞いたかどうかは、定かではない。