世界でいちばんやさしい嫌われ者
ゴッドクワガタがシュゴッダム上空に現れた。
王たちはその事実に眉をひそめた。
「戦えるか?」
「……キングオージャー出されたら負け確だ。」
リタの言葉に、ヤンマが不機嫌丸だしの低い声で言う。
王たちはもう、ギラの打つ手を理解している。
「数ではあちらのほうが不利ですからな。
すぐにでもキングオージャーで応戦してくるでしょう。」
しかし、手を理解していると言えど、[太字]ギラ・ハスティー[/太字]を理解しようとしていない王たちに、彼の今の思考が読めるはずもない。
「いや、それはないな。」
ラクレスのきっぱりとした言葉が、王たちの結論を一刀両断する。
彼は知っている。孤独の真ん中に突き落とされる悲しみを。
理不尽に世界を選ばなければならない痛みを。
自ら道化と堕ちるしかなくなる選択肢を。
「彼なら、今。キングオージャーは出してこないだろう。」
キングオージャーを出して、ダグデドが喜ぶと考えるはずがない。
あの宇蟲王が望んでいるのはきっと、死ぬまでギラが痛めつけられること。
そして、ギラが進む道は。
「ナーッハッハッハ!!」
「……!!!! なぜ城に!?」
「邪悪の王には貴様らの考えなどお見通しよ!!」
この城に突撃すること。
「恐怖しろ………そして慄け!
一切の情け容赦無く、一木一草尽く!!!
貴様らを討ち滅ぼす者の名は、、、ギラ!!!
邪悪の王となる男!!!」
その名乗りは、普段よりずっと悲痛で、悲しみに満ちていた。
決まり文句はなく、そのまま王たちに斬り掛かっていく。
「甘い!!!」
王たちに容赦はなく、ギラの身体は、すぐに傷だらけになってしまう。
ラクレスだけが、唇を噛みながらその光景を眺めていた。
誰も弟をかばえないこの状況。
兄にとっては死んでも避けたかった。
自分しかいないのか。かばえる人物は。
弟を、助けられる人物は。
外面では慈悲のない冷徹な顔をしながら、目では弟を助ける方法を探る。
しかし、ドゥーガも、王たちも、誰も彼もがギラに嫌悪の目線を向けている。
ギラが何をした。
ギラは優しく、嫌われるような子ではないだろう。
ラクレスはもんもんと考え続ける。
しかし、そのうちにギラは、ラクレスの足元まで飛ばされ、ぐぁっ、と声を上げた。
「……!!」
17年前。ラクレスはギラを救えなかった。
けれど、救えたら今はない。
今も同じ。
救えば、ラクレスは反逆者として、宇蟲王の一団から追い出されてしまうだろう。
かと言って、救えなかったら一生後悔することも、ラクレスはわかりきっている。
「……[小文字]どうすればいいと言うんだ。[/小文字]」
もし、もしも、普通の家に生まれていたのなら。
考えてしまえば終わりはないけど。
幸せに、家族みんなで暮らせていたのだろうか。
なんて、敵わぬ願いを胸に秘めながら、ラクレスは立ち上がる。
「ギラの処遇はこちらで決めさせていただこうか。裁判長?」
ギラは何もやっていないと信じて。
ラクレスはそう口火を切る。
「なぜだ。」
「少々彼の話に興味があってね。いいだろう?」
「犯罪者はゴッカンで裁くのが規則だ。」
ギラは何もやっていない。そう叫びたくなるのをこらえ、ギラをドゥーガに担げと指示を出す。
「犯罪者?だったらこちらで責め苦を受けても構わないだろう。
国民皆に、責められ、罵られ、苦しんでもらおうじゃないか。」
一ミリも思ってもいないことを。口からでまかせの言葉を並べ立て、ギラをここから逃がそうと奮闘する。
その目は邪智暴虐の王ではなく、兄としての目をしていた。
「お〜。おもしれぇじゃねぇか。んじゃ、ンコソパ特性拷問器具もつけねぇとな。」
ヤンマがそう言えば、王たちも次々に頷いていき、最後にはリタも渋々ではあるが首を縦に振った。
その目が少しキラリと輝いたのに、ラクレスは気のせいであってほしいと願う。
「ならば決まりだ。こちらにつれてこい。」
大丈夫だよ、ギラ。
ラクレスは心のなかで語りかける。
ギラはいくらか細くなったように思われ、今はすやすやと寝息を立てている。
「[小文字]私が必ず守るから。[/小文字]」
王たちはその事実に眉をひそめた。
「戦えるか?」
「……キングオージャー出されたら負け確だ。」
リタの言葉に、ヤンマが不機嫌丸だしの低い声で言う。
王たちはもう、ギラの打つ手を理解している。
「数ではあちらのほうが不利ですからな。
すぐにでもキングオージャーで応戦してくるでしょう。」
しかし、手を理解していると言えど、[太字]ギラ・ハスティー[/太字]を理解しようとしていない王たちに、彼の今の思考が読めるはずもない。
「いや、それはないな。」
ラクレスのきっぱりとした言葉が、王たちの結論を一刀両断する。
彼は知っている。孤独の真ん中に突き落とされる悲しみを。
理不尽に世界を選ばなければならない痛みを。
自ら道化と堕ちるしかなくなる選択肢を。
「彼なら、今。キングオージャーは出してこないだろう。」
キングオージャーを出して、ダグデドが喜ぶと考えるはずがない。
あの宇蟲王が望んでいるのはきっと、死ぬまでギラが痛めつけられること。
そして、ギラが進む道は。
「ナーッハッハッハ!!」
「……!!!! なぜ城に!?」
「邪悪の王には貴様らの考えなどお見通しよ!!」
この城に突撃すること。
「恐怖しろ………そして慄け!
一切の情け容赦無く、一木一草尽く!!!
貴様らを討ち滅ぼす者の名は、、、ギラ!!!
邪悪の王となる男!!!」
その名乗りは、普段よりずっと悲痛で、悲しみに満ちていた。
決まり文句はなく、そのまま王たちに斬り掛かっていく。
「甘い!!!」
王たちに容赦はなく、ギラの身体は、すぐに傷だらけになってしまう。
ラクレスだけが、唇を噛みながらその光景を眺めていた。
誰も弟をかばえないこの状況。
兄にとっては死んでも避けたかった。
自分しかいないのか。かばえる人物は。
弟を、助けられる人物は。
外面では慈悲のない冷徹な顔をしながら、目では弟を助ける方法を探る。
しかし、ドゥーガも、王たちも、誰も彼もがギラに嫌悪の目線を向けている。
ギラが何をした。
ギラは優しく、嫌われるような子ではないだろう。
ラクレスはもんもんと考え続ける。
しかし、そのうちにギラは、ラクレスの足元まで飛ばされ、ぐぁっ、と声を上げた。
「……!!」
17年前。ラクレスはギラを救えなかった。
けれど、救えたら今はない。
今も同じ。
救えば、ラクレスは反逆者として、宇蟲王の一団から追い出されてしまうだろう。
かと言って、救えなかったら一生後悔することも、ラクレスはわかりきっている。
「……[小文字]どうすればいいと言うんだ。[/小文字]」
もし、もしも、普通の家に生まれていたのなら。
考えてしまえば終わりはないけど。
幸せに、家族みんなで暮らせていたのだろうか。
なんて、敵わぬ願いを胸に秘めながら、ラクレスは立ち上がる。
「ギラの処遇はこちらで決めさせていただこうか。裁判長?」
ギラは何もやっていないと信じて。
ラクレスはそう口火を切る。
「なぜだ。」
「少々彼の話に興味があってね。いいだろう?」
「犯罪者はゴッカンで裁くのが規則だ。」
ギラは何もやっていない。そう叫びたくなるのをこらえ、ギラをドゥーガに担げと指示を出す。
「犯罪者?だったらこちらで責め苦を受けても構わないだろう。
国民皆に、責められ、罵られ、苦しんでもらおうじゃないか。」
一ミリも思ってもいないことを。口からでまかせの言葉を並べ立て、ギラをここから逃がそうと奮闘する。
その目は邪智暴虐の王ではなく、兄としての目をしていた。
「お〜。おもしれぇじゃねぇか。んじゃ、ンコソパ特性拷問器具もつけねぇとな。」
ヤンマがそう言えば、王たちも次々に頷いていき、最後にはリタも渋々ではあるが首を縦に振った。
その目が少しキラリと輝いたのに、ラクレスは気のせいであってほしいと願う。
「ならば決まりだ。こちらにつれてこい。」
大丈夫だよ、ギラ。
ラクレスは心のなかで語りかける。
ギラはいくらか細くなったように思われ、今はすやすやと寝息を立てている。
「[小文字]私が必ず守るから。[/小文字]」
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