二次創作
世界でいちばんやさしい嫌われ者
ゴッドクワガタがシュゴッダム上空に現れた。
王たちはその事実に眉をひそめた。
「戦えるか?」
「……キングオージャー出されたら負け確だ。」
リタの言葉に、ヤンマが不機嫌丸だしの低い声で言う。
王たちはもう、ギラの打つ手を理解している。
「数ではあちらのほうが不利ですからな。
すぐにでもキングオージャーで応戦してくるでしょう。」
しかし、手を理解していると言えど、[太字]ギラ・ハスティー[/太字]を理解しようとしていない王たちに、彼の今の思考が読めるはずもない。
「いや、それはないな。」
ラクレスのきっぱりとした言葉が、王たちの結論を一刀両断する。
今のギラの状況を見るに、ギラになにかがあって(予測だが9割9分方ダグデド関連であろう)、悪役となるしかなかったに違いないと彼は確信していた。……まるで、自分のように。
だから彼は知っている。孤独の真ん中に突き落とされる悲しみを。
理不尽に世界を選ばなければならない痛みを。
自ら道化と堕ちるしかなくなる選択肢たちを。
「彼なら、今。キングオージャーは出してこないだろう。」
キングオージャーを出して、ダグデドが喜ぶと考えるはずがない。
あの宇蟲王が望んでいるのはきっと、死ぬまでギラが痛めつけられること。
そして、それをわかっているギラが進む道は。
「ナーッハッハッハ!!」
「……!!!! なぜ城に!?」
「邪悪の王には貴様らの考えなどお見通しよ!!」
この城に突撃すること。だよな?
ラクレスはやってきた弟を見て、少し悲しげに思った。
弟は既に剣を掲げ、臨戦態勢に入っている。
剣の構えが甘いのは、勝つ気など、さらさらないからであろうか。
「恐怖しろ………そして慄け!
一切の情け容赦無く、一木一草尽く!!!
貴様らを討ち滅ぼす者の名は、、、ギラ!!!
邪悪の王となる男!!!」
その名乗りは、普段よりずっと悲痛で、悲しみに満ちていた。
『俺様が、世界を支配してやる!!!』
そんな決まり文句はなく、そのまま王たちに斬り掛かっていく。
「行く手間が省けたわ。」
「その汚らわしい足で城に踏み入らないで。」
「死刑。」
「邪魔者はお立ち退き願いたい。」
しかし、王たちにはそんなこと関係ないようで。
容赦なく斬りつけられたギラの身体は、すぐに傷だらけになってしまう。
ラクレスだけが、唇を噛みながらその光景を眺めていた。
誰も弟をかばえないこの状況。
兄にとっては死んでも避けたかった。
自分しかいないのか。かばえる人物は。
弟を、助けられる人物は。
外面では慈悲のない冷徹な顔をしながら、目では弟を助ける方法を探る。
まさかこんな日がまた来るとは思っていなかった。
決闘裁判でおしまいにしてほしかった。
しかし、ドゥーガも、王たちも、誰も彼もがギラに嫌悪の目線を向けている。
ギラが何をした。
ギラは優しく、嫌われるような子ではないだろう。
ラクレスはもんもんと考え続ける。
そのうちにギラは、ラクレスの足元まで飛ばされ、ぐぁっ、と声を上げた。
「……!!」
17年前。ラクレスはギラを救えなかった。
けれど、救えたら今はない。
そう。今も、同じ。
救えば、ラクレスは反逆者として、宇蟲王の一団から追い出されてしまうだろう。
かと言って、救えなかったら一生後悔することも、ラクレスはわかりきっている。
「……[小文字]どうすればいいと言うんだ。[/小文字]」
もし、もしも、普通の家に生まれていたのなら。
たらればを考えてしまえば終わりはないけど。
幸せに、家族みんなで暮らせていたのだろうか。
なんて、叶わぬ願いを胸に秘めながら、ラクレスは立ち上がる。
「ギラの処遇はこちらで決めさせていただこうか。裁判長?」
ギラは何もやっていないと、そう信じて、ラクレスは口火を切る。
「なぜだ。」
「彼の話に少々興味があってね。いいだろう?」
「国家反逆者はゴッカンで裁くのが規則だ。」
ギラは何もやっていない。そう叫びたくなるのをこらえ、ギラを抱き上げる。
傷を刺激しないよう、慎重に。
「国家反逆者?だったら彼が反旗を翻したこの国で責め苦を受けても構わないだろう。
国民皆に、責められ、罵られ、苦しんでもらおうじゃないか。」
一ミリも思ってもいないことを。口からでまかせの言葉を並べ立て、ギラをここから逃がそうと奮闘する。
その目は邪智暴虐の王ではなく、兄としての目をしていたのかもしれない。
「お〜。おもしれぇじゃねぇか。
んじゃ、ンコソパ特製拷問器具もつけろよ。」
ヤンマがそう言えば、王たちも次々に頷いていき、最後にはリタも渋々ではあるが首を縦に振った。
「ならば決まりだ。ギラはシュゴッダムで預からせてもらう。」
大丈夫だよ、ギラ。
ラクレスは心のなかで語りかける。
ギラはいくらか細くなったように思われ、今は腕の中ですやすやと寝息を立てている。
「[小文字]私が必ず守ってみせるから。[/小文字]」
王たちはその事実に眉をひそめた。
「戦えるか?」
「……キングオージャー出されたら負け確だ。」
リタの言葉に、ヤンマが不機嫌丸だしの低い声で言う。
王たちはもう、ギラの打つ手を理解している。
「数ではあちらのほうが不利ですからな。
すぐにでもキングオージャーで応戦してくるでしょう。」
しかし、手を理解していると言えど、[太字]ギラ・ハスティー[/太字]を理解しようとしていない王たちに、彼の今の思考が読めるはずもない。
「いや、それはないな。」
ラクレスのきっぱりとした言葉が、王たちの結論を一刀両断する。
今のギラの状況を見るに、ギラになにかがあって(予測だが9割9分方ダグデド関連であろう)、悪役となるしかなかったに違いないと彼は確信していた。……まるで、自分のように。
だから彼は知っている。孤独の真ん中に突き落とされる悲しみを。
理不尽に世界を選ばなければならない痛みを。
自ら道化と堕ちるしかなくなる選択肢たちを。
「彼なら、今。キングオージャーは出してこないだろう。」
キングオージャーを出して、ダグデドが喜ぶと考えるはずがない。
あの宇蟲王が望んでいるのはきっと、死ぬまでギラが痛めつけられること。
そして、それをわかっているギラが進む道は。
「ナーッハッハッハ!!」
「……!!!! なぜ城に!?」
「邪悪の王には貴様らの考えなどお見通しよ!!」
この城に突撃すること。だよな?
ラクレスはやってきた弟を見て、少し悲しげに思った。
弟は既に剣を掲げ、臨戦態勢に入っている。
剣の構えが甘いのは、勝つ気など、さらさらないからであろうか。
「恐怖しろ………そして慄け!
一切の情け容赦無く、一木一草尽く!!!
貴様らを討ち滅ぼす者の名は、、、ギラ!!!
邪悪の王となる男!!!」
その名乗りは、普段よりずっと悲痛で、悲しみに満ちていた。
『俺様が、世界を支配してやる!!!』
そんな決まり文句はなく、そのまま王たちに斬り掛かっていく。
「行く手間が省けたわ。」
「その汚らわしい足で城に踏み入らないで。」
「死刑。」
「邪魔者はお立ち退き願いたい。」
しかし、王たちにはそんなこと関係ないようで。
容赦なく斬りつけられたギラの身体は、すぐに傷だらけになってしまう。
ラクレスだけが、唇を噛みながらその光景を眺めていた。
誰も弟をかばえないこの状況。
兄にとっては死んでも避けたかった。
自分しかいないのか。かばえる人物は。
弟を、助けられる人物は。
外面では慈悲のない冷徹な顔をしながら、目では弟を助ける方法を探る。
まさかこんな日がまた来るとは思っていなかった。
決闘裁判でおしまいにしてほしかった。
しかし、ドゥーガも、王たちも、誰も彼もがギラに嫌悪の目線を向けている。
ギラが何をした。
ギラは優しく、嫌われるような子ではないだろう。
ラクレスはもんもんと考え続ける。
そのうちにギラは、ラクレスの足元まで飛ばされ、ぐぁっ、と声を上げた。
「……!!」
17年前。ラクレスはギラを救えなかった。
けれど、救えたら今はない。
そう。今も、同じ。
救えば、ラクレスは反逆者として、宇蟲王の一団から追い出されてしまうだろう。
かと言って、救えなかったら一生後悔することも、ラクレスはわかりきっている。
「……[小文字]どうすればいいと言うんだ。[/小文字]」
もし、もしも、普通の家に生まれていたのなら。
たらればを考えてしまえば終わりはないけど。
幸せに、家族みんなで暮らせていたのだろうか。
なんて、叶わぬ願いを胸に秘めながら、ラクレスは立ち上がる。
「ギラの処遇はこちらで決めさせていただこうか。裁判長?」
ギラは何もやっていないと、そう信じて、ラクレスは口火を切る。
「なぜだ。」
「彼の話に少々興味があってね。いいだろう?」
「国家反逆者はゴッカンで裁くのが規則だ。」
ギラは何もやっていない。そう叫びたくなるのをこらえ、ギラを抱き上げる。
傷を刺激しないよう、慎重に。
「国家反逆者?だったら彼が反旗を翻したこの国で責め苦を受けても構わないだろう。
国民皆に、責められ、罵られ、苦しんでもらおうじゃないか。」
一ミリも思ってもいないことを。口からでまかせの言葉を並べ立て、ギラをここから逃がそうと奮闘する。
その目は邪智暴虐の王ではなく、兄としての目をしていたのかもしれない。
「お〜。おもしれぇじゃねぇか。
んじゃ、ンコソパ特製拷問器具もつけろよ。」
ヤンマがそう言えば、王たちも次々に頷いていき、最後にはリタも渋々ではあるが首を縦に振った。
「ならば決まりだ。ギラはシュゴッダムで預からせてもらう。」
大丈夫だよ、ギラ。
ラクレスは心のなかで語りかける。
ギラはいくらか細くなったように思われ、今は腕の中ですやすやと寝息を立てている。
「[小文字]私が必ず守ってみせるから。[/小文字]」