世界でいちばんやさしい嫌われ者
「これで、よかったんだよなぁ。」
あれから一度もダグデドはチキューにやって来ていない。
怖いくらい平和そのものだ。
「寒っ……。」
ギラ自身は玉座から遠く離れたゴッカンの山奥で小さくなって暮らしている。
食べることにすら困ってしまうような生活だが、不思議と悪い気はしなかった。
「僕さえ慣れれば、もう。」
しかし、あの時の光景は今でも頭にこびりついて離れない。
ボタンを押した瞬間、投げられる石となぜか放たれる弓矢。
王たちはボロボロなのにギラを攻撃し、シュゴッドたちですらギラに協力しようとはしなかった。
今、ギラがゴッカンの山奥にいられるのはひとえにクワゴンことゴッドクワガタのおかげである。
「ごめん、クワゴン。巻き込んじゃって……。」
―いいんだよ。俺だってカブタンたち助けたかったしな。―
申し訳無さそうに頭を下げるギラに、クワゴンはそう言ってくれる。
ギラの身体は芯から凍えている。
冷たい、寒い。お腹すいた。
―大丈夫?ギラ。―
「う、うん。だいじょーぶ!」
そう言って笑うギラの顔は、少し引きつっているように見えた。
三日ほどまともに食べれてないのだ。
当たり前だろうなとクワゴンは思う。
―俺が代われたらいいんだけどな。―
「いいよ、いいよ。それに僕は、多分食べなくたって死にはしないよ。」
―人なんだから食わなくなったら死ぬだろう?―
これ以上言えばギラから聞きたくない言葉が出てきそうで、クワゴンはすぐに言葉を切り上げた。
「ちょっと食料取ってこようかなぁ……。」
よっこいしょと腰を上げ、ギラは背伸びをする。
その体はたった三日でいくらか痩せたようだ。
「クワゴン、ちょっと待ってて。」
―あ、おい、馬鹿……―
「大丈夫だよ、見つかりゃしないよ。
それに。見つかったらその時でしょ。」
その瞳は少し悲しげで、冷たかった。
―……帰って来いよ、絶対。―
「任せてっ!!」
ニコっと笑うと、ギラはブリザードの中に、飛び込んでいく。
今日はどこかの森でウサギとかを狩りつつ、オオモノを狙うか。
と狩猟民族的思考を持ちながら。
[水平線]
「シュゴ仮面。てめぇはあいつの行方を知ってんのか?」
「何を言っている。」
所変わってここはシュゴッダムのコーカサスカブト城。
叡智の王がシュゴッダムの国王となっているシュゴ仮面に詰め寄っている。
回りを他の王たちも囲み、こっちはこっちで修羅場なようだ。
「あいつだよ。ギラ・ハスティー。」
「なぜそんなことを聞く?」
怪訝そうにシュゴ仮面が聞くが、王たちは肩をすぼめるだけで何も言わない。
「あの御方は邪智暴虐の王でございましたもの。」
代わってそれに答えたのはスズメ。
シュゴ仮面の最強の協力者である。
「それに苦しんだ民を、シュゴ仮面様がお救いになられたのでしょう?」
「あ、あぁ、そうだったな。」
身に覚えのない話。スズメの戯言かもしれないが、それに大いに頷く王たちは何なのだろう。
コイツラはギラの味方だったはずだがとシュゴ仮面は首を傾げる。
「顔も見たくねぇが、しょうがねぇ。」
「存在自体が美しくないのよ。」
「紛れもない犯罪者だ。私が裁く。」
何がなんだかわからずにシュゴ仮面……ことラクレスは頭を抱える。
ラクレスをこれ以上なく嫌っていたヤンマ・ガストですら、ラクレスと協力し、ギラを滅ぼそうとする。
これ以上の違和感があるだろうか?
「ギラを見つけたら、私にも会わせてはくれまいか?」
「ん?てめぇも殴りてぇのか?」
「いいわよ。でも、私達が味わった後ね。」
「最後は私が裁く。」
「楽しみですなぁ……。」
ゾクリとラクレスの背筋が凍る。
怖かった。目的のためなら方法を選ばない王たちが。
そして、つい最近まで仲間だったギラに、平気でそんな事ができる王たちが。
狂っているようにラクレスには見えてしまった。
もちろんそれは【嫌われスイッチ】の効果であり、
ラクレスはギラが思い浮かべなかったので効果が出ていないだけなのだが、
それをラクレスはまだ知らない。
あれから一度もダグデドはチキューにやって来ていない。
怖いくらい平和そのものだ。
「寒っ……。」
ギラ自身は玉座から遠く離れたゴッカンの山奥で小さくなって暮らしている。
食べることにすら困ってしまうような生活だが、不思議と悪い気はしなかった。
「僕さえ慣れれば、もう。」
しかし、あの時の光景は今でも頭にこびりついて離れない。
ボタンを押した瞬間、投げられる石となぜか放たれる弓矢。
王たちはボロボロなのにギラを攻撃し、シュゴッドたちですらギラに協力しようとはしなかった。
今、ギラがゴッカンの山奥にいられるのはひとえにクワゴンことゴッドクワガタのおかげである。
「ごめん、クワゴン。巻き込んじゃって……。」
―いいんだよ。俺だってカブタンたち助けたかったしな。―
申し訳無さそうに頭を下げるギラに、クワゴンはそう言ってくれる。
ギラの身体は芯から凍えている。
冷たい、寒い。お腹すいた。
―大丈夫?ギラ。―
「う、うん。だいじょーぶ!」
そう言って笑うギラの顔は、少し引きつっているように見えた。
三日ほどまともに食べれてないのだ。
当たり前だろうなとクワゴンは思う。
―俺が代われたらいいんだけどな。―
「いいよ、いいよ。それに僕は、多分食べなくたって死にはしないよ。」
―人なんだから食わなくなったら死ぬだろう?―
これ以上言えばギラから聞きたくない言葉が出てきそうで、クワゴンはすぐに言葉を切り上げた。
「ちょっと食料取ってこようかなぁ……。」
よっこいしょと腰を上げ、ギラは背伸びをする。
その体はたった三日でいくらか痩せたようだ。
「クワゴン、ちょっと待ってて。」
―あ、おい、馬鹿……―
「大丈夫だよ、見つかりゃしないよ。
それに。見つかったらその時でしょ。」
その瞳は少し悲しげで、冷たかった。
―……帰って来いよ、絶対。―
「任せてっ!!」
ニコっと笑うと、ギラはブリザードの中に、飛び込んでいく。
今日はどこかの森でウサギとかを狩りつつ、オオモノを狙うか。
と狩猟民族的思考を持ちながら。
[水平線]
「シュゴ仮面。てめぇはあいつの行方を知ってんのか?」
「何を言っている。」
所変わってここはシュゴッダムのコーカサスカブト城。
叡智の王がシュゴッダムの国王となっているシュゴ仮面に詰め寄っている。
回りを他の王たちも囲み、こっちはこっちで修羅場なようだ。
「あいつだよ。ギラ・ハスティー。」
「なぜそんなことを聞く?」
怪訝そうにシュゴ仮面が聞くが、王たちは肩をすぼめるだけで何も言わない。
「あの御方は邪智暴虐の王でございましたもの。」
代わってそれに答えたのはスズメ。
シュゴ仮面の最強の協力者である。
「それに苦しんだ民を、シュゴ仮面様がお救いになられたのでしょう?」
「あ、あぁ、そうだったな。」
身に覚えのない話。スズメの戯言かもしれないが、それに大いに頷く王たちは何なのだろう。
コイツラはギラの味方だったはずだがとシュゴ仮面は首を傾げる。
「顔も見たくねぇが、しょうがねぇ。」
「存在自体が美しくないのよ。」
「紛れもない犯罪者だ。私が裁く。」
何がなんだかわからずにシュゴ仮面……ことラクレスは頭を抱える。
ラクレスをこれ以上なく嫌っていたヤンマ・ガストですら、ラクレスと協力し、ギラを滅ぼそうとする。
これ以上の違和感があるだろうか?
「ギラを見つけたら、私にも会わせてはくれまいか?」
「ん?てめぇも殴りてぇのか?」
「いいわよ。でも、私達が味わった後ね。」
「最後は私が裁く。」
「楽しみですなぁ……。」
ゾクリとラクレスの背筋が凍る。
怖かった。目的のためなら方法を選ばない王たちが。
そして、つい最近まで仲間だったギラに、平気でそんな事ができる王たちが。
狂っているようにラクレスには見えてしまった。
もちろんそれは【嫌われスイッチ】の効果であり、
ラクレスはギラが思い浮かべなかったので効果が出ていないだけなのだが、
それをラクレスはまだ知らない。
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