二次創作
世界でいちばんやさしい嫌われ者
「……ありがとう、ヤンマ。」
すっかり泣き止んだギラは、ヤンマの方を向いて笑っていた。
その笑顔は、光を取り戻していた。
「俺はなんにもしてねぇよ。
……あんなこと、言える立場じゃねぇのわかってるんだけどな。」
止められなかった、とヤンマはつぶやく。
それを聞いて、今度はギラがヤンマを抱きしめた。
「!?!?」
「次それ言ったら、決闘裁判申し込むからな。」
プクリと頬を膨らましながら、ギラは離れるとヤンマの肩を持ち、揺さぶる。
「ヤンマ、何にも悪くないのに自分のせいにするから!!
ヤンマがいない王様会議静かすぎて違和感しかなかった!!」
「お……おぉ……?」
ギラの勢いに、ヤンマは押され気味になる。
そして、そんなヤンマにギラはおでこにぱちんと一発、デコピンを放った。
「はぁ……ほんっとに。今、ヤンマ腑抜けた顔してる。」
その瞳はもう、逃げていない。
まっすぐとヤンマを見つめている。
その眼差しが、ヤンマにはとても眩しく見えた。
「なに。僕の顔になんか付いてる?」
そっと横を見てみると、なぜかギラの髪に可愛いシュゴッドのヘアピンがついていた。
ゴッドクワガタ、トンボ、カマキリ、パピヨン、ハチ、タランチュラ。
1つじゃなくてちゃんと6つつけるのはどれも特別扱いしない証だろう。
それを見てヤンマは笑いがこみ上げてきた。
「ふははっ……ケッサク。」
「笑わないでよ。真剣なんだから。」
「そいつがケッサクなんだっつーの。
何だそのヘアピン。」
「これ?ヒメノが押し付けてきて……。」
「ひー……!!やべー、ツボった……。」
目頭が熱いのは、
声が震えるのは、
笑いすぎたせいだ。……多分。
1年後
ダグデドは消え、チキューには平和が戻り、皆は楽しく毎日を過ごしていた。
ラクレスは王様戦隊側に戻った途端、ギラに土下座して謝ったという。
今もラクレスのギラに対する謝罪は続いているようだ。
「あんがとな、スカポンタヌキ。」
ヤンマは機械作業を行っているラクレスマーク2に向かって、ヤンマは言う。
今、ペタ城王の間にいるのはヤンマとラクレスの二人だけ。
味方になってからラクレスといるときはたいてい他の王も一緒にいたため、二人っきりになれることはなかったのであるが。
ようやく二人になれる時間ができたのである。
「いきなりなんだ。ヤンマ・ガスト。」
「ギラを、守ってくれてあんがとなってこと。」
ラクレスはヤンマの方を見向きもしないが、その口元は、自分を戒めるかのように固く結ばれている。
「ギラを、もっと早く救ってやれたら。
あの子につらい思いはさせずに済んだかもしれないのにな。」
「……てめーがいなかったら、ギラはとっくにダグデドのおもちゃだったろ。」
カチャカチャ。パチパチパチ。と、しばらく二人の作業音だけが響く。
口火を切ったのは、ヤンマだった。
「俺だってギラのことを思い出せなかった。
最悪の結末になってただろうな。」
「私は、苦しんでいる弟を前にしても。手を差し伸べることすらできなかった。」
そう淡々と紡ぐラクレスの声は、前のヤンマに似ていた。
ヤンマはこりゃ長くなるなとため息を付いて、苦笑した。
「……そりゃ違ぇだろ。てめーはちゃんと、ギラをダグデドから守ってたじゃねーか。」
「それは違
「俺達がギラを攻撃した時。俺達で取り合いしていた時。
てめーは手を上げてギラをそのまま持ち帰った。
あん時ゃ何やってんだとしか思ってなかったが……。
ちゃんと、弟のこと守っていたんだな。」
ラクレスの否定を意にもとめず、ヤンマは話を続ける。
ヤンマはパソコンを打ち続け、カチャリとエンターキーを押すと、パソコンを勢いよく閉じた。
「【許すことはない】それは俺達に向けて言ったもんか。
それとも、俺達に向けて言ったもんか。どっちもか。
俺にはわかんねぇけどさ。」
ヤンマはゲーミングチェアから立ち上がるとラクレスの牢の前でしゃがんだ。
二人の目線が、久しぶりに重なった。
「ずっと復讐してたら、心臓もたねぇ。
今日ぐらいはギラとゆっくり話してこい。」
ガチャリ、ヤンマは牢の鍵を開けると、段ボールで作ったラクレスマーク2の衣装を引き抜いた。
「は……。私は罪人だぞ。そんなことしたら君にも……。」
迷惑がかかる。その一言は、ヤンマの声でかき消された。
「何言ってんだ。俺は、国王だぞ。
どれだけ裁判長にあーだのこーだの言われても、この国は俺のもんなんだよ。
俺の国で勝手しようと問題ねぇよ。」
早く出ろと言わんばかりにラクレスの腕を引っ張り、外へ連れ出す。
「ちょ、あ。」
「おにい、ちゃん。」
押し出されたラクレスの眼の前には、ギラの姿。
ヤンマが引っ張って連れてきたのだった。
「らっ、邪魔者はここで退散してやっから。
兄貴なんだろ、あいつの。」
ラクレスはこく、こくとゆっくり頷くと、ギラの方へ歩いていく。
「さて、本当に邪魔者になりかねねぇしな。」
ヤンマは二人を邪魔しないように王の間から出ていく。
王の間を去る時、ふと見たギラの顔は、今まで見たことないほど輝いて見えた。
「良かったな。タコメンチ。」
すっかり泣き止んだギラは、ヤンマの方を向いて笑っていた。
その笑顔は、光を取り戻していた。
「俺はなんにもしてねぇよ。
……あんなこと、言える立場じゃねぇのわかってるんだけどな。」
止められなかった、とヤンマはつぶやく。
それを聞いて、今度はギラがヤンマを抱きしめた。
「!?!?」
「次それ言ったら、決闘裁判申し込むからな。」
プクリと頬を膨らましながら、ギラは離れるとヤンマの肩を持ち、揺さぶる。
「ヤンマ、何にも悪くないのに自分のせいにするから!!
ヤンマがいない王様会議静かすぎて違和感しかなかった!!」
「お……おぉ……?」
ギラの勢いに、ヤンマは押され気味になる。
そして、そんなヤンマにギラはおでこにぱちんと一発、デコピンを放った。
「はぁ……ほんっとに。今、ヤンマ腑抜けた顔してる。」
その瞳はもう、逃げていない。
まっすぐとヤンマを見つめている。
その眼差しが、ヤンマにはとても眩しく見えた。
「なに。僕の顔になんか付いてる?」
そっと横を見てみると、なぜかギラの髪に可愛いシュゴッドのヘアピンがついていた。
ゴッドクワガタ、トンボ、カマキリ、パピヨン、ハチ、タランチュラ。
1つじゃなくてちゃんと6つつけるのはどれも特別扱いしない証だろう。
それを見てヤンマは笑いがこみ上げてきた。
「ふははっ……ケッサク。」
「笑わないでよ。真剣なんだから。」
「そいつがケッサクなんだっつーの。
何だそのヘアピン。」
「これ?ヒメノが押し付けてきて……。」
「ひー……!!やべー、ツボった……。」
目頭が熱いのは、
声が震えるのは、
笑いすぎたせいだ。……多分。
1年後
ダグデドは消え、チキューには平和が戻り、皆は楽しく毎日を過ごしていた。
ラクレスは王様戦隊側に戻った途端、ギラに土下座して謝ったという。
今もラクレスのギラに対する謝罪は続いているようだ。
「あんがとな、スカポンタヌキ。」
ヤンマは機械作業を行っているラクレスマーク2に向かって、ヤンマは言う。
今、ペタ城王の間にいるのはヤンマとラクレスの二人だけ。
味方になってからラクレスといるときはたいてい他の王も一緒にいたため、二人っきりになれることはなかったのであるが。
ようやく二人になれる時間ができたのである。
「いきなりなんだ。ヤンマ・ガスト。」
「ギラを、守ってくれてあんがとなってこと。」
ラクレスはヤンマの方を見向きもしないが、その口元は、自分を戒めるかのように固く結ばれている。
「ギラを、もっと早く救ってやれたら。
あの子につらい思いはさせずに済んだかもしれないのにな。」
「……てめーがいなかったら、ギラはとっくにダグデドのおもちゃだったろ。」
カチャカチャ。パチパチパチ。と、しばらく二人の作業音だけが響く。
口火を切ったのは、ヤンマだった。
「俺だってギラのことを思い出せなかった。
最悪の結末になってただろうな。」
「私は、苦しんでいる弟を前にしても。手を差し伸べることすらできなかった。」
そう淡々と紡ぐラクレスの声は、前のヤンマに似ていた。
ヤンマはこりゃ長くなるなとため息を付いて、苦笑した。
「……そりゃ違ぇだろ。てめーはちゃんと、ギラをダグデドから守ってたじゃねーか。」
「それは違
「俺達がギラを攻撃した時。俺達で取り合いしていた時。
てめーは手を上げてギラをそのまま持ち帰った。
あん時ゃ何やってんだとしか思ってなかったが……。
ちゃんと、弟のこと守っていたんだな。」
ラクレスの否定を意にもとめず、ヤンマは話を続ける。
ヤンマはパソコンを打ち続け、カチャリとエンターキーを押すと、パソコンを勢いよく閉じた。
「【許すことはない】それは俺達に向けて言ったもんか。
それとも、俺達に向けて言ったもんか。どっちもか。
俺にはわかんねぇけどさ。」
ヤンマはゲーミングチェアから立ち上がるとラクレスの牢の前でしゃがんだ。
二人の目線が、久しぶりに重なった。
「ずっと復讐してたら、心臓もたねぇ。
今日ぐらいはギラとゆっくり話してこい。」
ガチャリ、ヤンマは牢の鍵を開けると、段ボールで作ったラクレスマーク2の衣装を引き抜いた。
「は……。私は罪人だぞ。そんなことしたら君にも……。」
迷惑がかかる。その一言は、ヤンマの声でかき消された。
「何言ってんだ。俺は、国王だぞ。
どれだけ裁判長にあーだのこーだの言われても、この国は俺のもんなんだよ。
俺の国で勝手しようと問題ねぇよ。」
早く出ろと言わんばかりにラクレスの腕を引っ張り、外へ連れ出す。
「ちょ、あ。」
「おにい、ちゃん。」
押し出されたラクレスの眼の前には、ギラの姿。
ヤンマが引っ張って連れてきたのだった。
「らっ、邪魔者はここで退散してやっから。
兄貴なんだろ、あいつの。」
ラクレスはこく、こくとゆっくり頷くと、ギラの方へ歩いていく。
「さて、本当に邪魔者になりかねねぇしな。」
ヤンマは二人を邪魔しないように王の間から出ていく。
王の間を去る時、ふと見たギラの顔は、今まで見たことないほど輝いて見えた。
「良かったな。タコメンチ。」
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