世界でいちばんやさしい嫌われ者
「ギラ様。」
ドゥーガが仕事に身が入らずにいるギラを呼ぶ。
ぼんやりと虚空を見つめる彼の目に、普段の笑顔はなかった。
「あ、あぁ、ドゥーガさん。」
「ヤンマ様のことでございますか?」
こくりと頷いた彼は、ふぅっとため息をつく。
「ほんとに……僕はなんにも思ってないのに……。
ヤンマだって、そんなの気にする性格じゃないのに……。
なんででしょう、ドゥーガさん。」
ポツリポツリと彼の本音が出てくる。
本当にギラは何も思っていないわけではない。
自身が無理に押さえつけているだけで。
ヤンマの予想は図星なのである。
「これは、私にもわかりかねますが……。」
ドゥーガが、言葉に詰まった、その時だった。
ガンっとなにかを叩きつけたような音がギラの耳に轟く。
「よぉ。」
「………や、ヤンマ!?」
剣を肩に乗せながら、王の間にヤンマが入ってきた。
「な、なんでここに……。」
「シオカラに行ってこいって言われたんだよ。
……会って来いってな。」
ヤンマの目の下には深い隈。少しだけ痩せたようにも見える。
シオカラから寝ない・食べない・出てこないと聞いていたのでちょっとまずいのかなと思っていたが、これは相当まずそうだ。
本人も強がってはいるようだが足元がおぼつかない。
「や、ヤンマ、大丈夫そう?」
「ん?あぁ。」
今、玉座から飛び出してもいいのだろうか。
ヤンマを抱きしめて、ペタ城まで送ってってもいいだろうか。
そう思ってしまうほどの、弱々しい声だった。
「……なぁ、俺は。お前に許してもらえるなんて一片も思ってねぇけど。
謝るだけでこの罪が償えるなんてこと、思ってねぇけど。
でも、本当に……悪かった。」
ヤンマはそっと、頭を下げる。
二年前、まだ【ギラ】を知らなかったヤンマならば、そんなことはしなかっただろう。
けれど、今は違う。
「ヤンマ!?え、ちょ、頭上げてよ!!頭下げないんじゃなかったの?」
「今俺は、ンコソパ国王じゃねぇ。
ただの【ヤンマ・ガスト】として、会いに来たんだよ。」
淡々と紡ぎ出されるその声は、彼のものとは思えないほどに暗かった。
「あ、え。」
ギラもそんなヤンマを見て少しずつ、恐怖が蘇っていく。
ヤンマの謝り方は、他の王たちとは違った。
王じゃなくて、ただの仲間として謝ってくれた。
嫌われスイッチの件は、忘れていたはずなのに。
【仲間】がいなかったあの時の記憶が、
押さえつけてきたあの記憶が、
蘇ってきてしまったのである。
「はっ………はぁっ……はぁっ………。」
「ぎ、ギラ様!?」
ドゥーガが声を掛けるが、ギラの過呼吸は収まらない。
「っ………!?ゲホッ……ゴホッ……。」
「や、ヤンマ様!?」
ヤンマも咳き込み始め、王の間はしばしパニック状態に。
イシャバーナ女王、ヒメノ・ランのもとに、二人を担いだドゥーガが入ってくるまでに、そう時間はかからないだろう。
ドゥーガが仕事に身が入らずにいるギラを呼ぶ。
ぼんやりと虚空を見つめる彼の目に、普段の笑顔はなかった。
「あ、あぁ、ドゥーガさん。」
「ヤンマ様のことでございますか?」
こくりと頷いた彼は、ふぅっとため息をつく。
「ほんとに……僕はなんにも思ってないのに……。
ヤンマだって、そんなの気にする性格じゃないのに……。
なんででしょう、ドゥーガさん。」
ポツリポツリと彼の本音が出てくる。
本当にギラは何も思っていないわけではない。
自身が無理に押さえつけているだけで。
ヤンマの予想は図星なのである。
「これは、私にもわかりかねますが……。」
ドゥーガが、言葉に詰まった、その時だった。
ガンっとなにかを叩きつけたような音がギラの耳に轟く。
「よぉ。」
「………や、ヤンマ!?」
剣を肩に乗せながら、王の間にヤンマが入ってきた。
「な、なんでここに……。」
「シオカラに行ってこいって言われたんだよ。
……会って来いってな。」
ヤンマの目の下には深い隈。少しだけ痩せたようにも見える。
シオカラから寝ない・食べない・出てこないと聞いていたのでちょっとまずいのかなと思っていたが、これは相当まずそうだ。
本人も強がってはいるようだが足元がおぼつかない。
「や、ヤンマ、大丈夫そう?」
「ん?あぁ。」
今、玉座から飛び出してもいいのだろうか。
ヤンマを抱きしめて、ペタ城まで送ってってもいいだろうか。
そう思ってしまうほどの、弱々しい声だった。
「……なぁ、俺は。お前に許してもらえるなんて一片も思ってねぇけど。
謝るだけでこの罪が償えるなんてこと、思ってねぇけど。
でも、本当に……悪かった。」
ヤンマはそっと、頭を下げる。
二年前、まだ【ギラ】を知らなかったヤンマならば、そんなことはしなかっただろう。
けれど、今は違う。
「ヤンマ!?え、ちょ、頭上げてよ!!頭下げないんじゃなかったの?」
「今俺は、ンコソパ国王じゃねぇ。
ただの【ヤンマ・ガスト】として、会いに来たんだよ。」
淡々と紡ぎ出されるその声は、彼のものとは思えないほどに暗かった。
「あ、え。」
ギラもそんなヤンマを見て少しずつ、恐怖が蘇っていく。
ヤンマの謝り方は、他の王たちとは違った。
王じゃなくて、ただの仲間として謝ってくれた。
嫌われスイッチの件は、忘れていたはずなのに。
【仲間】がいなかったあの時の記憶が、
押さえつけてきたあの記憶が、
蘇ってきてしまったのである。
「はっ………はぁっ……はぁっ………。」
「ぎ、ギラ様!?」
ドゥーガが声を掛けるが、ギラの過呼吸は収まらない。
「っ………!?ゲホッ……ゴホッ……。」
「や、ヤンマ様!?」
ヤンマも咳き込み始め、王の間はしばしパニック状態に。
イシャバーナ女王、ヒメノ・ランのもとに、二人を担いだドゥーガが入ってくるまでに、そう時間はかからないだろう。
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