STAR
「あー!配信最高だったなー!めもりん天使でしかないんですけど……!」
めもりんの配信が終わって、私はひたすら、余韻に浸っていた。
「歌もめちゃくちゃ上手いし、てかまず声質が神すぎる。可愛いしかっこいいし美しいし……そんでもって話も可愛くて優しいって。ほんと好きなんですが……!」
オタク特有の語りに一段落ついたら、私はそこらへんにある水を取って飲んだ。水はぬるくて美味くなかった。私は冷たい飲み物が好きなタイプだ。
「あぁ……これでもう一週間は頑張れるわ。アーカイブ見返そー……」
めもりんに元気をもらって、私はポジティブな感情で心を埋め尽くしていた。大きな背伸びをしてから、何しようかと考えてみる。
「……あ、そういえばお腹空いてた」
作業やらは後でしよう、そう思って私は、リビングへと足を運んでいった__。
[水平線]
「ふぅ、今日も疲れた」
配信終わり。ため息と声を出しながら、精一杯背伸びをする。
「今日は結構同接あったなー、やっぱり新衣装パワーはでかいか……」
今日の配信の分析をしつつ、私はお仕事だったりのメールを確認していた。部屋の中に、カタカタとタイピング音が鳴り続ける。慣れればこの孤独な自室も、どうって事はない。
「えーっと……、そうだ。ミラージュさんに連絡入れないと」
しばらく見てみると、連絡チャット欄の通知があるのに気が付いた。その通知を届けたのは、私が秘密裏に所属している歌い手グループのリーダー、ミラージュだ。私は彼女と二人きりで話せる日がいつになるか、連絡してくださいといった旨のメールだった。
「そうだそうだ。えーっといつになるかなー……」
スケジュールを開いて、いつならいけるかとじっくり確認する。
「この日は企業様と打ち合わせでしょ、この日はコラボ配信……あーもう、なんかしら予定多い!」
軽いボイトレやダンスレッスンなども含めると、私のスケジュールはギチギチに詰まっている状態だった。ここまで大変だとは自分でも思っていないし、自分自身が一番びっくりである。スケジュール調整しようにも、大体の予定は他の人との約束事だったり仕事なので、そうやすやすと削除できるものが少なすぎる。
「どうしよ……。うーん、とりあえず話せるならここかな……24日の21時から、と……」
まぁ調整は後にするとして、私はミラージュへここなら行けそうという連絡を入れる。
『ミラージュさんへ。24日の21時ならいけそうです。ご確認ください』
「よし……。ちょっと離れよっと」
メールを打ち終わった後、なんだか目が疲れた気がしたので、私はパソコンから離れてベッドに横になる。なんだか今日はいつもより疲れるような、そんな気がした。
「あぁ……。やっぱバレないようにするの疲れるわー……」
バレないように、というのはどういう事か。
私はそもそも、山桜桃めもりとしてVTuber活動をしている。一端の個人勢だが、なぜかある時を境に大人気になってしまい、今では大手の企業勢の人と何回もコラボする程になった。
しかし、そんな私には裏の姿がある。
それが歌い手グループSTARのメンバー、鞠音としての姿だ。そう、私は個人勢の人気VTuberである山桜桃めもりを演じつつ、ミステリアスな新進気鋭の歌い手グループSTARのメンバー鞠音も演じる、二つの仮面を持つ人間なのだ。
その生活は当然疲れが溜まりやすいもので、特に山桜桃めもりのライブ配信をしている時は、うっかり鞠音としての活動に関する事をポロリしそうになる。その時に必死で取り繕ったりしていると、やっぱり疲労が蓄積されていく。
「あぁ、疲れる……」
この活動スタンスを望んだのは確かに私だ。実際、こうやって色々な方面から褒められるのも気持ちが良いし、どっちの活動もすごく楽しい。しかし、全てバレてはいけない、隠さなくてはいけないという強迫観念じみた思いは、思う時間が長ければ長いほど、やがて重苦しいものになっていった。凄く、ストレスが溜まってしょうがないのだ。
「あーあ、活動者もこんなだって、もっと早くに……」
そこまで独り言を言っておいて、今更口をつぐむ。
もっと早くに、知っておけば良かった、だなんて今の私には、絶対に言えないから。
めもりんの配信が終わって、私はひたすら、余韻に浸っていた。
「歌もめちゃくちゃ上手いし、てかまず声質が神すぎる。可愛いしかっこいいし美しいし……そんでもって話も可愛くて優しいって。ほんと好きなんですが……!」
オタク特有の語りに一段落ついたら、私はそこらへんにある水を取って飲んだ。水はぬるくて美味くなかった。私は冷たい飲み物が好きなタイプだ。
「あぁ……これでもう一週間は頑張れるわ。アーカイブ見返そー……」
めもりんに元気をもらって、私はポジティブな感情で心を埋め尽くしていた。大きな背伸びをしてから、何しようかと考えてみる。
「……あ、そういえばお腹空いてた」
作業やらは後でしよう、そう思って私は、リビングへと足を運んでいった__。
[水平線]
「ふぅ、今日も疲れた」
配信終わり。ため息と声を出しながら、精一杯背伸びをする。
「今日は結構同接あったなー、やっぱり新衣装パワーはでかいか……」
今日の配信の分析をしつつ、私はお仕事だったりのメールを確認していた。部屋の中に、カタカタとタイピング音が鳴り続ける。慣れればこの孤独な自室も、どうって事はない。
「えーっと……、そうだ。ミラージュさんに連絡入れないと」
しばらく見てみると、連絡チャット欄の通知があるのに気が付いた。その通知を届けたのは、私が秘密裏に所属している歌い手グループのリーダー、ミラージュだ。私は彼女と二人きりで話せる日がいつになるか、連絡してくださいといった旨のメールだった。
「そうだそうだ。えーっといつになるかなー……」
スケジュールを開いて、いつならいけるかとじっくり確認する。
「この日は企業様と打ち合わせでしょ、この日はコラボ配信……あーもう、なんかしら予定多い!」
軽いボイトレやダンスレッスンなども含めると、私のスケジュールはギチギチに詰まっている状態だった。ここまで大変だとは自分でも思っていないし、自分自身が一番びっくりである。スケジュール調整しようにも、大体の予定は他の人との約束事だったり仕事なので、そうやすやすと削除できるものが少なすぎる。
「どうしよ……。うーん、とりあえず話せるならここかな……24日の21時から、と……」
まぁ調整は後にするとして、私はミラージュへここなら行けそうという連絡を入れる。
『ミラージュさんへ。24日の21時ならいけそうです。ご確認ください』
「よし……。ちょっと離れよっと」
メールを打ち終わった後、なんだか目が疲れた気がしたので、私はパソコンから離れてベッドに横になる。なんだか今日はいつもより疲れるような、そんな気がした。
「あぁ……。やっぱバレないようにするの疲れるわー……」
バレないように、というのはどういう事か。
私はそもそも、山桜桃めもりとしてVTuber活動をしている。一端の個人勢だが、なぜかある時を境に大人気になってしまい、今では大手の企業勢の人と何回もコラボする程になった。
しかし、そんな私には裏の姿がある。
それが歌い手グループSTARのメンバー、鞠音としての姿だ。そう、私は個人勢の人気VTuberである山桜桃めもりを演じつつ、ミステリアスな新進気鋭の歌い手グループSTARのメンバー鞠音も演じる、二つの仮面を持つ人間なのだ。
その生活は当然疲れが溜まりやすいもので、特に山桜桃めもりのライブ配信をしている時は、うっかり鞠音としての活動に関する事をポロリしそうになる。その時に必死で取り繕ったりしていると、やっぱり疲労が蓄積されていく。
「あぁ、疲れる……」
この活動スタンスを望んだのは確かに私だ。実際、こうやって色々な方面から褒められるのも気持ちが良いし、どっちの活動もすごく楽しい。しかし、全てバレてはいけない、隠さなくてはいけないという強迫観念じみた思いは、思う時間が長ければ長いほど、やがて重苦しいものになっていった。凄く、ストレスが溜まってしょうがないのだ。
「あーあ、活動者もこんなだって、もっと早くに……」
そこまで独り言を言っておいて、今更口をつぐむ。
もっと早くに、知っておけば良かった、だなんて今の私には、絶対に言えないから。
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