act
自分にアクトをかけた。
その結果。
凪の結果には到底及ばなかった。
というのも、開始と同時にアクトをかけた空は、今までずっと走っていたかのような疲労感に襲われ、体力が一気になくなったのだ。
そのことをミライに話し、今は救護室にいる。
「『体力が十分に回復するまで絶対に無茶をするな』だってさ。あの人、怒ると怖いから、本当、無茶しないでね」
去り際に、ミライが言った。
ミライには、いつも迷惑をかけてばかりだ。
長い溜息をつく。
そこでふと、ここに見覚えがあることに気が付いた。
まだ、一度も入ったことがないはずだ。
見覚えのある真っ白な天井。
見覚えのある景色だ。
そして、ベッドを仕切るカーテン…。
(多分ここは、未来で目覚めた場所だ…)
もはやそうとしか言いようがなかった。
だが、それにしてはおかしい。
あそこは未来の世界のはずだ。
なのに、景色が何も変わらない。
窓から見える景色も、部屋の内装も、カーテンだって、何も。
確かにあの奇妙な部屋の老人は、空に”過去を視る力”があると言った。
だが、それにしたってこれはおかしい。
もう一度、あの未来の世界に行って確かめるしかない。
そう思ったとき、窓の外が暗闇に包まれていたことを知った。
(…今日は、もう寝よう)
そうして空は、眠りについた。
ー???
「こんばんは」
老人の声がする。
また、あの奇妙な部屋に来てしまったのか。
「左様でございます」
心の声を聞かれるのもあまりいいものではない、と思えた。
「失礼いたしました。ところで…貴方が力を手に入れてからこの部屋へ訪れるのは、これで二回目…。こうして二回もお会いできたのですから、あなたはきっと、この力を正しく使えているということでしょう。そろそろ、この部屋についてお教えいたしましょう」
すると老人―シクザールは、右手で指パッチンをする。
手袋をしていても、鳴るものなのだろうか。
知らぬ間に、シクザールの目の前に分厚い本が開かれていた。
「まず、この部屋についてです」
隣に立っていたアリスが言う。
「この部屋は、”マインドルーム”。その名の通り、貴方の精神にある部屋です。貴方のように、何かしらの力を持たれた方のみ訪れることができます」
アリスは、どうやらこの部屋の説明をしてくれるらしい。
力のことは、あのシクザールが話してくれるのだろうか。
いや、その前にもっと気になることがある。
”貴方のように”?
自分以外にも、複数人いるってことなのか?
「はい。その通りです」
アリスは静かに言った。
「はい。その通りです」
その結果。
凪の結果には到底及ばなかった。
というのも、開始と同時にアクトをかけた空は、今までずっと走っていたかのような疲労感に襲われ、体力が一気になくなったのだ。
そのことをミライに話し、今は救護室にいる。
「『体力が十分に回復するまで絶対に無茶をするな』だってさ。あの人、怒ると怖いから、本当、無茶しないでね」
去り際に、ミライが言った。
ミライには、いつも迷惑をかけてばかりだ。
長い溜息をつく。
そこでふと、ここに見覚えがあることに気が付いた。
まだ、一度も入ったことがないはずだ。
見覚えのある真っ白な天井。
見覚えのある景色だ。
そして、ベッドを仕切るカーテン…。
(多分ここは、未来で目覚めた場所だ…)
もはやそうとしか言いようがなかった。
だが、それにしてはおかしい。
あそこは未来の世界のはずだ。
なのに、景色が何も変わらない。
窓から見える景色も、部屋の内装も、カーテンだって、何も。
確かにあの奇妙な部屋の老人は、空に”過去を視る力”があると言った。
だが、それにしたってこれはおかしい。
もう一度、あの未来の世界に行って確かめるしかない。
そう思ったとき、窓の外が暗闇に包まれていたことを知った。
(…今日は、もう寝よう)
そうして空は、眠りについた。
ー???
「こんばんは」
老人の声がする。
また、あの奇妙な部屋に来てしまったのか。
「左様でございます」
心の声を聞かれるのもあまりいいものではない、と思えた。
「失礼いたしました。ところで…貴方が力を手に入れてからこの部屋へ訪れるのは、これで二回目…。こうして二回もお会いできたのですから、あなたはきっと、この力を正しく使えているということでしょう。そろそろ、この部屋についてお教えいたしましょう」
すると老人―シクザールは、右手で指パッチンをする。
手袋をしていても、鳴るものなのだろうか。
知らぬ間に、シクザールの目の前に分厚い本が開かれていた。
「まず、この部屋についてです」
隣に立っていたアリスが言う。
「この部屋は、”マインドルーム”。その名の通り、貴方の精神にある部屋です。貴方のように、何かしらの力を持たれた方のみ訪れることができます」
アリスは、どうやらこの部屋の説明をしてくれるらしい。
力のことは、あのシクザールが話してくれるのだろうか。
いや、その前にもっと気になることがある。
”貴方のように”?
自分以外にも、複数人いるってことなのか?
「はい。その通りです」
アリスは静かに言った。
「はい。その通りです」