act
「過去を・・・視る力・・・?」
「左様でございます」
[漢字]所謂[/漢字][ふりがな]いわゆる[/ふりがな]”中二病”と言われるもののようだと思い、さらに現実感が薄れていくように感じた。
「貴方は今、現実世界で起こった出来事に混乱している事でしょう」
老人は続ける。
「例えば、”知らぬ間に別の人間へと変わっていた”。なんてことがあったのではないですか?」
少し間を置く。
「他には・・・以前のご自身—[漢字]天月空[/漢字][ふりがな]あまつきそら[/ふりがな]は、”処刑された人物である”。などでしょうか」
老人が話すこと一つ一つに鳥肌が立つ。
これが悪夢なら、早く覚めてほしい。
「『これが悪夢なら、早く覚めてほしい』」
鳥肌が立つ。
今しがた自分の考えていたことが、そのまま話された。
しかも、自分の経験した、奇妙な出来事も。
まるで、自分の考えていることの全てが、この老人に見透かされているように。
すると老人は小さく、フフ、と笑った。
「左様でございます。貴方はこの部屋に招かれるべくして招かれた存在。我々にとっての大切な”お客人”です。貴方の思考は[漢字]勿論[/漢字][ふりがな]もちろん[/ふりがな]、過去や未来も、手に取るようにわかりますよ」
気味が悪い。
早くこの部屋から逃げ出したい。
そして、元の生活に戻りたい。
夢なら早く、覚めてくれ。
「”夢”、ですか」
アリスと呼ばれた女性が呟いた。
「当たらずとも遠からずです」
そこから、老人は”力”について話し始めた。
「さて、本題に戻りましょう・・・。貴方は、もうお気づきですね?この”ありえない現実”の存在。何もかもが狂っている・・・そうお考えではないでしょうか?ですが、これは貴方の未来。貴方が生きた現実で起きた、本当の未来なのです」
続けるように、アリスは言った。
「貴方は今、とても受け入れがたいことだと感じているようですね。無理もありません。ですが、時には受け入れなければならないこともある」
「そこで、貴方が目覚めたのは”過去を視る力”。一度、貴方が”天月空”であった頃まで戻り、何があったか、その目で確かめてきてください」
そこから、アリスは手に持っていた本を老人の前の机に置き、老人が再び話し始めた。
「まずは、”力”の発動条件です。両手で[漢字]狐[/漢字][ふりがな]きつね[/ふりがな]の形を作ってください」
人差し指と小指を立て、中指、薬指は親指に乗せる。
小さい頃、先生や両親に教えてもらい、よく一緒にやったものだ。
「次に、左手は中指、薬指、親指のまとまりを下に、右手は自分に向けてください」
「この上下を間違えると、貴方の身体が八つ裂きになってしまいます。くれぐれもご注意を」
アリスが言った。
何とも恐ろしいことを、よくこんなにサラッと言えたものだ。
「そこから、右手の小指を人差し指に重ね、左手の小指を右手に重ねてください。勿論、それぞれの手は横向きでお願いします」
左手を右に傾け、右手を左に傾ける。
すると、意識して合わせようとしなくても自然と指が重なった。
「次は、今重ねた両手を開いてください。すると、右手の人差し指の下に左手の薬指、中指が、左手の人差し指の上に右手の中指、薬指がある状態になります」
「ここまで、ついてこられましたか?」
アリスが聞く。
「形を見る限り、大丈夫そうですね」
返事の前に、アリスは言った。
「次が最後です。貴方から見て、右手と左手の人差し指、中指、薬指の間に隙間ができましたか?自分自身の姿を、その隙間から見てください。そうすれば、過去を視ることができます」
「自分自身の姿を見る方法として、鏡や水面からの反射[漢字]等[/漢字][ふりがな]など[/ふりがな]があります。特殊な例として、写真は効果は得られませんが、携帯、と呼ばれる[漢字]媒体[/漢字][ふりがな]ばいたい[/ふりがな]のカメラ機能を使い、姿を映すことでも効果は得られます」
アリスが付け加えた。
「そうそう。ひとつ、言いそびれていましました。この部屋は、貴方が眠っている時にだけ、訪れることができます。眠っていない貴方からこちらへ来ることは出来ませんのでご注意を。それと、ここへ訪れている間も、時間は流れています。さぁ、そろそろお目覚めの時間のようです。また会えることを、楽しみに待っています」
「左様でございます」
[漢字]所謂[/漢字][ふりがな]いわゆる[/ふりがな]”中二病”と言われるもののようだと思い、さらに現実感が薄れていくように感じた。
「貴方は今、現実世界で起こった出来事に混乱している事でしょう」
老人は続ける。
「例えば、”知らぬ間に別の人間へと変わっていた”。なんてことがあったのではないですか?」
少し間を置く。
「他には・・・以前のご自身—[漢字]天月空[/漢字][ふりがな]あまつきそら[/ふりがな]は、”処刑された人物である”。などでしょうか」
老人が話すこと一つ一つに鳥肌が立つ。
これが悪夢なら、早く覚めてほしい。
「『これが悪夢なら、早く覚めてほしい』」
鳥肌が立つ。
今しがた自分の考えていたことが、そのまま話された。
しかも、自分の経験した、奇妙な出来事も。
まるで、自分の考えていることの全てが、この老人に見透かされているように。
すると老人は小さく、フフ、と笑った。
「左様でございます。貴方はこの部屋に招かれるべくして招かれた存在。我々にとっての大切な”お客人”です。貴方の思考は[漢字]勿論[/漢字][ふりがな]もちろん[/ふりがな]、過去や未来も、手に取るようにわかりますよ」
気味が悪い。
早くこの部屋から逃げ出したい。
そして、元の生活に戻りたい。
夢なら早く、覚めてくれ。
「”夢”、ですか」
アリスと呼ばれた女性が呟いた。
「当たらずとも遠からずです」
そこから、老人は”力”について話し始めた。
「さて、本題に戻りましょう・・・。貴方は、もうお気づきですね?この”ありえない現実”の存在。何もかもが狂っている・・・そうお考えではないでしょうか?ですが、これは貴方の未来。貴方が生きた現実で起きた、本当の未来なのです」
続けるように、アリスは言った。
「貴方は今、とても受け入れがたいことだと感じているようですね。無理もありません。ですが、時には受け入れなければならないこともある」
「そこで、貴方が目覚めたのは”過去を視る力”。一度、貴方が”天月空”であった頃まで戻り、何があったか、その目で確かめてきてください」
そこから、アリスは手に持っていた本を老人の前の机に置き、老人が再び話し始めた。
「まずは、”力”の発動条件です。両手で[漢字]狐[/漢字][ふりがな]きつね[/ふりがな]の形を作ってください」
人差し指と小指を立て、中指、薬指は親指に乗せる。
小さい頃、先生や両親に教えてもらい、よく一緒にやったものだ。
「次に、左手は中指、薬指、親指のまとまりを下に、右手は自分に向けてください」
「この上下を間違えると、貴方の身体が八つ裂きになってしまいます。くれぐれもご注意を」
アリスが言った。
何とも恐ろしいことを、よくこんなにサラッと言えたものだ。
「そこから、右手の小指を人差し指に重ね、左手の小指を右手に重ねてください。勿論、それぞれの手は横向きでお願いします」
左手を右に傾け、右手を左に傾ける。
すると、意識して合わせようとしなくても自然と指が重なった。
「次は、今重ねた両手を開いてください。すると、右手の人差し指の下に左手の薬指、中指が、左手の人差し指の上に右手の中指、薬指がある状態になります」
「ここまで、ついてこられましたか?」
アリスが聞く。
「形を見る限り、大丈夫そうですね」
返事の前に、アリスは言った。
「次が最後です。貴方から見て、右手と左手の人差し指、中指、薬指の間に隙間ができましたか?自分自身の姿を、その隙間から見てください。そうすれば、過去を視ることができます」
「自分自身の姿を見る方法として、鏡や水面からの反射[漢字]等[/漢字][ふりがな]など[/ふりがな]があります。特殊な例として、写真は効果は得られませんが、携帯、と呼ばれる[漢字]媒体[/漢字][ふりがな]ばいたい[/ふりがな]のカメラ機能を使い、姿を映すことでも効果は得られます」
アリスが付け加えた。
「そうそう。ひとつ、言いそびれていましました。この部屋は、貴方が眠っている時にだけ、訪れることができます。眠っていない貴方からこちらへ来ることは出来ませんのでご注意を。それと、ここへ訪れている間も、時間は流れています。さぁ、そろそろお目覚めの時間のようです。また会えることを、楽しみに待っています」