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早く起きて

#1


「早く起きてよ」

じゃないと、うっかり君に触れてしまいそうだから。

「ねぇ、起きてってば」

良いの?
俺、本気だよ?

ベッドで、掛け布団を抱き枕にして眠る彼は。
何度も声を掛けても、んーんー、唸るだけで目を開けないから。

起こす為だから、なんて。
心の中で言い訳をして。
彼の体にそっと触れて、軽く揺する。

お願い、これで起きて。

じゃないと、俺はもっと君に触れたくなってしまうから。

そんな俺の願いが、彼に届いたのか。
形の良い君の目が、ゆっくりと開く。

そして。

「おはよう」

なんて、俺と目が合うなり。
それはそれは嬉しそうに微笑んでくれた。

「おはよ……何、呑気に笑ってんの」

もっと、彼に触れたい衝動が止まらないから。
中々起きなかった彼への腹いせ、なんて言い訳のつもりで。

俺が、ふにゃりと緩んだ、彼の頬を抓ってやれば。
君は痛がりながらも、相変わらず嬉しそうにしていたけど。

君を痛め付けたいんじゃないから。
直ぐに抓るのは止めた。

そんな俺に、君はベッドから体を起こすと。
ふふっと、上機嫌に笑って。

「だって、目が覚めて最初に君の顔を見られたんだもん。嬉しくて笑っちゃう」

なんて、言ってくれるものだから。

あぁ、それは、ズルいよ。
こんなの我慢出来なくなるに決まってる。

と、彼はまだ、寝惚けてもいるのか。
俺が、君の顎に手を添えても、首を傾げるだけで、されるがまま。

そんな彼が可愛くて、愛おしくて。
もっと触れたくて堪らなくなって。

俺は、目覚めたばかりの君にキスをした。

これは、君が悪いよ。
早く起きてくれなかったんだから。


                 End

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2024/06/30 12:35

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