放浪の水魔法使い
朝だ。日が昇っているのを感じ取り、俺は目を開く。俺としたことがぐっすり眠ってしまい、もう午前九時ほどになっているようだ。しかし俺の体内時計と時間がぴったり重なると言うことは、この惑星の自転周期や公転周期は地球と同じと考えても良いのだろうか。起き抜けにそう考え込んでいると、隣から少し悲しげな声が聞こえた。
「イー...シャ...」
イーシャ、そう言ったか。名前が似ていることから察するに姉妹か何かだろうか。こんな場所へ一人で飛ばされたんだ、俺もその心細い気持ちは痛いほどに分かる。俺はサーシャをそっと起こさぬように起き上がり、伸びをする。そういえば俺、靴履いてないんだよな。汗ばんだ足には砂がくっついていて鬱陶しいことこの上ない。絨毯から降りた俺は、一度砂から離れていたことで一つ忘れていることがあった。
「熱っっっっつ‼︎」
砂がメチャクチャに熱い。猛暑日にシートベルトの金属部分を触ってしまったような、そんなくらいの熱さに思わず大声を上げる。
「どうしましたかっ!」
嗚呼、起こすつもりはなかったのに熱々の砂の所為で睡眠を妨げてしまった。でも流石俺より長い間過ごしていただけのことはある。起きたばかりだと言うのにサーシャは自分の周りをすぐさま警戒して、傍に置いていた杖を構えていた。判断が早い。俺が感心していると、またサーシャが繰り返す。
「何もいませんが、どうしましたか⁉︎」
「いや、久しぶりに砂に足を乗せたらめっちゃ熱くてな」
「...そんなことで私の睡眠を。まあいいです」
「驚かせたのは悪かった。でもこの熱さに一番戸惑ってるのは俺なんだ」
ジト目で俺を見るサーシャだが、俺は思う。あまり快適な夢を見ていなさそうだったし、こんな時間だし、別にいいんじゃないかと。俺は罪から逃れようと言い訳を考える。視線をあっちこっちに向ける俺を見て、サーシャはため息を吐く。
「では、どこへ進めばいいのか分かりませんが歩きましょう。あ、今日の分のワームの肉も切っておきましょうか」
「えぇ...またあれ切るの?結構疲れるんだぞ、あれ。水魔法でなんとかならないのか?」
「ダメです。何かあった時のために魔力等は温存する必要があります。怠け癖がつくといけません。文句を言っている暇があれば早く切りに行ってください」
「ふうんそういうことか。まあ仕方ない、それくらいはしないとだな」
ゼェゼェ言いながら切り終わった俺はサーシャに質問する。
「ここを離れるとしたらこのワームの死体はどうなるんだ?勿体なくないか?」
「ああ、それは問題ありませんよ。小さな生物たちが死体を処理してくれますので」
その辺りは地球と大して変わらないようだ。まあいくら世界が違えど、食物連鎖が存在しなければ生物は生きていられない。あまり驚くようなことでもないだろう。
サーシャは大きなリュックサックから畳んであったカバンを広げて、洗った肉を詰め込んだ。そして何も言わずにそのカバンを俺に差し出す。お、重たそうだなー...。俺はサーシャが言外に何を伝えようとしているかは理解していたが、目を逸らした。
「持ってください。あなたは手ぶらなんですから」
「...分かった」
俺はずっしりと重くなった右肩を不服に思ってそこに視線をやりながら、歩き出す。
「サーシャ。依代にだって当然魔力は流れてるんだろ?魔力探知とかないのか?」
「ありますよ。あるんですが、私は対人に於いてその能力を持たずとも感知できる自信があったので磨かなかったんですよ。あまり広範囲に探知する必要がないと思っていたので。今となっては悔やまれるばかりですが」
なんでこの娘、対人について考えたのだろう。十八だよね、多分。どういう状況なのだろうか。砂漠の外のことを口で少ししか聞いていない俺には不思議に思えた。だって戦争は存在しない魔王のお陰で起こってないんだよな。
「じゃあ、そういう魔術はないのか?」
「ありますよ。あるんですが、今は書いたり掘ったりするものがありません。広範囲の探知となると、それだけ大きな魔法陣になるのでそこらにある岩では全く足りません」
何だ、悉く欲しいもののみがない。俺の転移、不自由すぎない?とはいえ初めと比べれば食料と水があるだけで満足すべきだろうか。ポジティブに考えろ、俺。そういえばサーシャの生成する水は、深い意味はないが美味い。しかし少し気になるのは
「魔法で生成する水ってどのくらいの純度なんだ?」
「そうですね、例えるなら私の笑顔くらい純粋です」
「なるほど、何か混ざってそうだ」
「一度水を被りますか?」
「そういうとこを言ってんだよ」
そんなことを言っていると、背後からウサギが俺たちを追い越した。可愛い、触りたいな。今の俺には癒しが必要である。...と、思ったのだが
「穿て」
ウサギは一度だけの省エネの魔法で軽く頭部を貫かれ、絶命した。その凄まじい光景を目の当たりにした俺は、声を荒げてサーシャに詰め寄る。
「な、何してんだよっお前⁉︎」
「食料の確保ですが...」
「ワ、ワームがあるだろ!無闇に生物を殺すのは流石にまずいって!」
「しかし...この砂漠、いつ食料に巡り会えるのか分からないのです」
「それもそうだが、もうちょっと...な?」
そして俺は今朝のサーシャの言葉を思い出す。
「というか魔力温存するんじゃなかったのかよ」
「まあ、大丈夫でしょう」
その後も何分か俺に諭されたサーシャは少しシュンとしながら素直に「すみません、以後気をつけます」と謝って先に歩き出した。その背中は小さく見える。サーシャってなんか、頭は良さそうだが少しズレてるな。先ほど射抜かれたウサギ(スナウサギと言うらしい)に手を合わせて、せめてもの償いになるかも分からんが丁寧に捌いて水を溜めたカバンに入れた。それ自体は軽い筈なのに、なんだかこのカバンはさっきまでよりもずっと、重く感じた。
[中央寄せ]✕ ✕ ✕[/中央寄せ]
その後歩いては水を飲み、昼過ぎになれば肉を焼いて食った。ウサギの肉は食べた事はなかったが、多分地球のウサギもこんな味だったのだろう。そんな感じにある程度休憩を挟みつつ歩くこと数時間。
「元の世界では何を?」
「学生だよ。多分サーシャと同じくらいだと思うけど」
「なら十八歳ですか」
「そうそう。あ、ちょっと肩が疲れたから一旦下ろすわ。すぐ追いつくから先に行っててくれ」
「はあ、分かりました」
自分の非力さを恥じながら一度荷物を地に置いてそのまま座り込む。尻が熱いが、気にせずに空を見上げた。よし、ずっと座っていたらサーシャは俺のこと見えなくなるまで置いて行ってもおかしくない。早めに走って追いつこう。俺は立ち上がると少し奥に置いたカバンを取るべく、足を前に出す。...出そうとしたのだが。何かに足首を掴まれて動かなくなった。えっな、何?さっきまで何もいなかったよな?焦りに焦り俺は自分の右足を見ると、茶色っぽく骨ばった腕が砂から生えて俺を掴んでいた。え、これはゾンビですか?
「うわわっ!な、なんだあっ⁉︎ちょ、え⁉︎」
パニックになりながらも頭を働かせて前を向くと、幸いサーシャはさほど遠くまで行っていなかった。俺が追いつきやすいようにペースを落として歩いてくれたのだろうか。まだ声が届きそうだ。
「サ、サーシャっ‼︎」
一回で声が届いたようだ。サーシャがこちらを振り向く。全然遮蔽物のないここでは空気の振動が伝わりやすいのだろうか。いや違う、暑いからだ。音は気温が上がるほど速くなる。ここが砂漠で良かった初めての瞬間だった。いや、そもそも砂漠にいなければ足は掴まれないか。
「サーシャ‼︎足が、俺の足が掴まれてるっ‼︎こっちに来て助けてくれっ」
しっかり聞き取れたのだろう。サーシャは急足でこっちへ向かってくる。ん?気のせいだろうか。少しずつ足を握る力が強くなっているような感じがする。そして普通に会話できるまでに近づくと、
「何してるんですか...」
心配より先に呆れられた。サーシャは冷静だが、俺はそれどころではない。俺はもう普通に聞こえると言うのに、大きい声でサーシャに頼む。
「魔法でこの手を撃ち抜いてくれ!マジで、.....たのむわ...」
「仕方ないですね、危ないので大人しくしていてください」
サーシャは真剣な眼差しで足元を見ると、空を切る音がするほどに素早く杖を向けた。俺は注射が怖くて目を瞑ってしまうタイプなのである。それはこの状況でも変わらないようで、体を強張らせて瞼をきつく閉じた。
「刻め」
........?まだ、掴まれてる感触がする。どころかどんどん強くなっている。
目を開けると、サーシャは頭を小突いて舌を出した。可愛いとかあざといとかそんなことは心底どうでもいいから迅速に助けて欲しいのだが。
「......どうした?」
「あなたを助けるために使った攻撃魔法で、今まで溜めていた気力を使っていたんでした。一日で溜まったごく僅かな気力も先のウサギで...。普段は刃物を持って追いかけ回していたのですが、何故か今日はいいかな、と」
「つまり?」
「......すみません」
とっておきとは、溜めていた気力のことだったか。俺は天を仰いだ。ほら、だからウサギに使うべきじゃなかったんじゃん。足に痛みを覚え始め、状況のまずさが鮮明になっていく。
「とりあえず、何か方法を考えよう」
俺たちは砂漠で顎に手をやり頭をフル回転させた。
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「魔力」「気力」
魔法を使うには「魔力」を必要とする。魔術を発動させるのも同様である。そして中でも攻撃魔法には魔力と同時に「気力」も要する。
簡単に言えば 魔力…魔法の使用に使う体力 気力…攻撃魔法に必要な集中力
これらは体力と同様、睡眠や食事、時間経過で回復する。因みに気力がなくなっても、詠唱をすれば攻撃魔法を撃つことができる。その際の攻撃力は詠唱時間に比例する。
「イー...シャ...」
イーシャ、そう言ったか。名前が似ていることから察するに姉妹か何かだろうか。こんな場所へ一人で飛ばされたんだ、俺もその心細い気持ちは痛いほどに分かる。俺はサーシャをそっと起こさぬように起き上がり、伸びをする。そういえば俺、靴履いてないんだよな。汗ばんだ足には砂がくっついていて鬱陶しいことこの上ない。絨毯から降りた俺は、一度砂から離れていたことで一つ忘れていることがあった。
「熱っっっっつ‼︎」
砂がメチャクチャに熱い。猛暑日にシートベルトの金属部分を触ってしまったような、そんなくらいの熱さに思わず大声を上げる。
「どうしましたかっ!」
嗚呼、起こすつもりはなかったのに熱々の砂の所為で睡眠を妨げてしまった。でも流石俺より長い間過ごしていただけのことはある。起きたばかりだと言うのにサーシャは自分の周りをすぐさま警戒して、傍に置いていた杖を構えていた。判断が早い。俺が感心していると、またサーシャが繰り返す。
「何もいませんが、どうしましたか⁉︎」
「いや、久しぶりに砂に足を乗せたらめっちゃ熱くてな」
「...そんなことで私の睡眠を。まあいいです」
「驚かせたのは悪かった。でもこの熱さに一番戸惑ってるのは俺なんだ」
ジト目で俺を見るサーシャだが、俺は思う。あまり快適な夢を見ていなさそうだったし、こんな時間だし、別にいいんじゃないかと。俺は罪から逃れようと言い訳を考える。視線をあっちこっちに向ける俺を見て、サーシャはため息を吐く。
「では、どこへ進めばいいのか分かりませんが歩きましょう。あ、今日の分のワームの肉も切っておきましょうか」
「えぇ...またあれ切るの?結構疲れるんだぞ、あれ。水魔法でなんとかならないのか?」
「ダメです。何かあった時のために魔力等は温存する必要があります。怠け癖がつくといけません。文句を言っている暇があれば早く切りに行ってください」
「ふうんそういうことか。まあ仕方ない、それくらいはしないとだな」
ゼェゼェ言いながら切り終わった俺はサーシャに質問する。
「ここを離れるとしたらこのワームの死体はどうなるんだ?勿体なくないか?」
「ああ、それは問題ありませんよ。小さな生物たちが死体を処理してくれますので」
その辺りは地球と大して変わらないようだ。まあいくら世界が違えど、食物連鎖が存在しなければ生物は生きていられない。あまり驚くようなことでもないだろう。
サーシャは大きなリュックサックから畳んであったカバンを広げて、洗った肉を詰め込んだ。そして何も言わずにそのカバンを俺に差し出す。お、重たそうだなー...。俺はサーシャが言外に何を伝えようとしているかは理解していたが、目を逸らした。
「持ってください。あなたは手ぶらなんですから」
「...分かった」
俺はずっしりと重くなった右肩を不服に思ってそこに視線をやりながら、歩き出す。
「サーシャ。依代にだって当然魔力は流れてるんだろ?魔力探知とかないのか?」
「ありますよ。あるんですが、私は対人に於いてその能力を持たずとも感知できる自信があったので磨かなかったんですよ。あまり広範囲に探知する必要がないと思っていたので。今となっては悔やまれるばかりですが」
なんでこの娘、対人について考えたのだろう。十八だよね、多分。どういう状況なのだろうか。砂漠の外のことを口で少ししか聞いていない俺には不思議に思えた。だって戦争は存在しない魔王のお陰で起こってないんだよな。
「じゃあ、そういう魔術はないのか?」
「ありますよ。あるんですが、今は書いたり掘ったりするものがありません。広範囲の探知となると、それだけ大きな魔法陣になるのでそこらにある岩では全く足りません」
何だ、悉く欲しいもののみがない。俺の転移、不自由すぎない?とはいえ初めと比べれば食料と水があるだけで満足すべきだろうか。ポジティブに考えろ、俺。そういえばサーシャの生成する水は、深い意味はないが美味い。しかし少し気になるのは
「魔法で生成する水ってどのくらいの純度なんだ?」
「そうですね、例えるなら私の笑顔くらい純粋です」
「なるほど、何か混ざってそうだ」
「一度水を被りますか?」
「そういうとこを言ってんだよ」
そんなことを言っていると、背後からウサギが俺たちを追い越した。可愛い、触りたいな。今の俺には癒しが必要である。...と、思ったのだが
「穿て」
ウサギは一度だけの省エネの魔法で軽く頭部を貫かれ、絶命した。その凄まじい光景を目の当たりにした俺は、声を荒げてサーシャに詰め寄る。
「な、何してんだよっお前⁉︎」
「食料の確保ですが...」
「ワ、ワームがあるだろ!無闇に生物を殺すのは流石にまずいって!」
「しかし...この砂漠、いつ食料に巡り会えるのか分からないのです」
「それもそうだが、もうちょっと...な?」
そして俺は今朝のサーシャの言葉を思い出す。
「というか魔力温存するんじゃなかったのかよ」
「まあ、大丈夫でしょう」
その後も何分か俺に諭されたサーシャは少しシュンとしながら素直に「すみません、以後気をつけます」と謝って先に歩き出した。その背中は小さく見える。サーシャってなんか、頭は良さそうだが少しズレてるな。先ほど射抜かれたウサギ(スナウサギと言うらしい)に手を合わせて、せめてもの償いになるかも分からんが丁寧に捌いて水を溜めたカバンに入れた。それ自体は軽い筈なのに、なんだかこのカバンはさっきまでよりもずっと、重く感じた。
[中央寄せ]✕ ✕ ✕[/中央寄せ]
その後歩いては水を飲み、昼過ぎになれば肉を焼いて食った。ウサギの肉は食べた事はなかったが、多分地球のウサギもこんな味だったのだろう。そんな感じにある程度休憩を挟みつつ歩くこと数時間。
「元の世界では何を?」
「学生だよ。多分サーシャと同じくらいだと思うけど」
「なら十八歳ですか」
「そうそう。あ、ちょっと肩が疲れたから一旦下ろすわ。すぐ追いつくから先に行っててくれ」
「はあ、分かりました」
自分の非力さを恥じながら一度荷物を地に置いてそのまま座り込む。尻が熱いが、気にせずに空を見上げた。よし、ずっと座っていたらサーシャは俺のこと見えなくなるまで置いて行ってもおかしくない。早めに走って追いつこう。俺は立ち上がると少し奥に置いたカバンを取るべく、足を前に出す。...出そうとしたのだが。何かに足首を掴まれて動かなくなった。えっな、何?さっきまで何もいなかったよな?焦りに焦り俺は自分の右足を見ると、茶色っぽく骨ばった腕が砂から生えて俺を掴んでいた。え、これはゾンビですか?
「うわわっ!な、なんだあっ⁉︎ちょ、え⁉︎」
パニックになりながらも頭を働かせて前を向くと、幸いサーシャはさほど遠くまで行っていなかった。俺が追いつきやすいようにペースを落として歩いてくれたのだろうか。まだ声が届きそうだ。
「サ、サーシャっ‼︎」
一回で声が届いたようだ。サーシャがこちらを振り向く。全然遮蔽物のないここでは空気の振動が伝わりやすいのだろうか。いや違う、暑いからだ。音は気温が上がるほど速くなる。ここが砂漠で良かった初めての瞬間だった。いや、そもそも砂漠にいなければ足は掴まれないか。
「サーシャ‼︎足が、俺の足が掴まれてるっ‼︎こっちに来て助けてくれっ」
しっかり聞き取れたのだろう。サーシャは急足でこっちへ向かってくる。ん?気のせいだろうか。少しずつ足を握る力が強くなっているような感じがする。そして普通に会話できるまでに近づくと、
「何してるんですか...」
心配より先に呆れられた。サーシャは冷静だが、俺はそれどころではない。俺はもう普通に聞こえると言うのに、大きい声でサーシャに頼む。
「魔法でこの手を撃ち抜いてくれ!マジで、.....たのむわ...」
「仕方ないですね、危ないので大人しくしていてください」
サーシャは真剣な眼差しで足元を見ると、空を切る音がするほどに素早く杖を向けた。俺は注射が怖くて目を瞑ってしまうタイプなのである。それはこの状況でも変わらないようで、体を強張らせて瞼をきつく閉じた。
「刻め」
........?まだ、掴まれてる感触がする。どころかどんどん強くなっている。
目を開けると、サーシャは頭を小突いて舌を出した。可愛いとかあざといとかそんなことは心底どうでもいいから迅速に助けて欲しいのだが。
「......どうした?」
「あなたを助けるために使った攻撃魔法で、今まで溜めていた気力を使っていたんでした。一日で溜まったごく僅かな気力も先のウサギで...。普段は刃物を持って追いかけ回していたのですが、何故か今日はいいかな、と」
「つまり?」
「......すみません」
とっておきとは、溜めていた気力のことだったか。俺は天を仰いだ。ほら、だからウサギに使うべきじゃなかったんじゃん。足に痛みを覚え始め、状況のまずさが鮮明になっていく。
「とりあえず、何か方法を考えよう」
俺たちは砂漠で顎に手をやり頭をフル回転させた。
[中央寄せ]ー続ー[/中央寄せ]
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「魔力」「気力」
魔法を使うには「魔力」を必要とする。魔術を発動させるのも同様である。そして中でも攻撃魔法には魔力と同時に「気力」も要する。
簡単に言えば 魔力…魔法の使用に使う体力 気力…攻撃魔法に必要な集中力
これらは体力と同様、睡眠や食事、時間経過で回復する。因みに気力がなくなっても、詠唱をすれば攻撃魔法を撃つことができる。その際の攻撃力は詠唱時間に比例する。