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灼熱の翼は白銀に煌めく。 ~レイマウント2663~

#2

第弐話 平和の針

私はあまりにも突然の出来事に、吹いたココアを拭く事もできずにただポカーンとしているだけだったが、三好の叫び声(?)ではっとした。
「何をボケーッとしている、光瑠‼」
慌ててココアで濡れた(というより汚れた)パジャマを脱ぎ、いつもの服(私服)に着替えると、三好は既に車にキーカードを差し込んでエアカーでスタンバイしていた。
車の助手席に飛び乗り、赤青灯のスイッチを入れる。三好がペダルを踏むと、車は勢いよく走りだした[打消し](が、電気代がかかるのでやめて欲しいところ)[/打消し]。
しかし、時間は午前8時。カレッジ・ブールバード通りの渋滞は解消されず、赤青灯もいよいよ通用しなくなって、サイレンに車線を譲ろうと右往左往する車の合い間を縫うことになった。グニオンの通勤渋滞に加え、事件現場を一目見ようとしている野次馬もいる。普段の事件ならば拳銃と警棒の軽装備で通勤客に混ざって現場へ急行する事が出来るが、今回は爆弾テロ。犯人がいつ出てくるか分からないこの状況で、防弾服や重火器を持ち運ぶには、車以外の手はない。
 三好があまりの渋滞に対しアクセルを緩めざるを得なくなると、助手席から私は通話ボタンに手を伸ばした。
 レイマウント市警中央本部に繋ぎ、中央駅現場の封鎖を担当している指揮官を呼び出してもらう。
 現場が応えてくれるという奇跡が起こったので、私は自分の状況と引き換えに相手の状況を訊こうと思った隙に、三好がヘッドホンのマイクにつなぎ、冷静に状況を話し始めた。

「こちら[漢字]PSIA[/漢字][ふりがな]公安調査庁[/ふりがな]の対テロ部隊第一縦隊所属、森[漢字]三好[/漢字][ふりがな]みつよし[/ふりがな]。現在レイマウント中央駅へ急行中ですがカレッジ・ブールバード通りの渋滞に[漢字]嵌[/漢字][ふりがな]はま[/ふりがな]って到着が遅れます。そちらの現状はどうですか?返答願います。」
「――…こちらはレイマウント中央駅臨時警備隊のリック・ジャクソン。爆弾テロ事件現場の封鎖は完了。爆弾の残骸は国警がすでに接収済み、鉄道路線は現在、『都市環状線、コロレド線、南北線、地下鉄環状線、南北線、第一通り線』が運休。現在確認された死者数は推定8人。犯人は自殺。民間人とマスコミは遠ざけた」
 [漢字]オフィス[/漢字][ふりがな]PSIA本部[/ふりがな]のあるダウンタウンから事件の発生した中央駅までは、本来なら車でせいぜい15分ほどだったが、平日の朝のラッシュは終わっておらず、更に野次馬やニュースキャスターも我先に中央駅へ向かおうとしており、これでは一時間かかってもおかしくない状況だった。
 車中で二人は無線を切り、コーヒーを飲んで自動運転モードに切り替えた。
 内容の乏しい無線情報を適当に聞き流しながらハンドルを握るサンデルスは、27世紀も後半に差し掛かろうという時代となっても、[漢字]27世紀[/漢字][ふりがな]今頃の[/ふりがな]の地球とは異なり、無線による音声でのやり取りを強いられるグニオンの事情に、内心うんざりとしている。
 地球でなら[漢字]電脳[/漢字][ふりがな]ネットワーク[/ふりがな]化された情報空間を介して必要な情報に瞬時にアクセスできるし、現場周辺のデバイス電子機器を操作して爆速で情報を得ることもできる。地球に留学経験のある両人は、そういう〝まるで魔法の国〟のような地球という世界の在り様を知っていた。
 だが、地球と"同じ"情報社会の実現は、ここグニオンでは"不可能な夢物語"なのだ。



 地球の太陽系より巨大な太陽を持つグニオン星系の参つ目の惑星「クリップル M9」は、地球人の植民以前は強力な太陽風が直接吹き付け、生命どころか水すらもない、いわば[漢字]未開の地[/漢字][ふりがな]荒れた惑星[/ふりがな]であった。その強い太陽風から地表を守る為に地球人は惑星全体を覆うバリアを構築するも、その代償として、もし仮にバリア外部の通信衛星が機能した所で、バリアによって通信が出来なくなる。その為、バリア内部に位置する[漢字]中継ポイント[/漢字][ふりがな]通信中継地点[/ふりがな]を介さないと、星の真裏にいる相手と話す…といった事もできない。

このボタンは廃止予定です

2024/06/05 17:52

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