カミサマ気取りと神の使者
「ええ。それぐらい安いものよ」
クリミナは表情を変えずそう言う。実際、神の使者というのは街や国から使っても使っても足りないくらいのお金を配られるため、誰かに食べ物の一つや二つ奢るくらい、全く造作もない事なのだ。
「よし。そうと決まれば分かったぜ……。アルカナ・クロワが、フローラを必ずや引っ張り出してやるぜ」
言い終わると、そうと決まればと言いながら、アルベドは早速席を立つ。クリミナは彼が立つのをゆっくりと目で追って、口を開く。
「もう行くの?」
「あったりまえだろ!すぐに行動に移すに越した事はねぇんだからな!」
オーナーにお代を払ってからすぐ、アルベドはカフェを出ていった。
「ちょっと、依頼主の事を待ちなさいよ」
そしてクリミナも、彼の後を追うように、お代を払って店を後にしていった。しかし、自身を急かすことはせず、とてもおっとりとした仕草でカフェから去る。彼女はいつも、余裕がありそうな表情を浮かべているが、その実、ただゆっくりしたいだけなのかもしれない。
[水平線]
二人がカフェを出てから数分後。平日の昼でも賑わっているポーヴェの街中で、クリミナはアルベドに、質問をしていた。
「ねえ、どこに行くの?」
アルベドは隣りにいる彼女をちらっと見てから答える。「アルカナ・クロワの中でも一番賢いヤツのとこだ」
そう言いながら大股で歩くアルベド。そしてそれをゆっくりと追うクリミナ。街中を歩く人達の中には、二人をカップルかと誤解する者も居た。
「あら、カップルかしら……。随分と若いのねえ」
商店の女性が、二人を見ながらぼやく。
「……私たち、噂されているみたいね。私の事がバレてないみたいで安心だけど」
神の使者は崇められる故、あまりプライバシーというものが存在しない。今のクリミナも、顔のほとんどを隠している状態だ。姿がバレていないというのは、安心できる要素なのである。
しかし、アルベドはそんな事を知らない。いや、もっと他の事に気を取られていた、の方が正しいのかもしれない。
「は、はぁ!誰がこいつとカップルだって!」
アルベドは顔を赤くさせて汗をかきながら、商店の女性に突っかかっていた。アルベドは、恋愛や女性に関する事には慣れていないのだ。
「あらやだ、距離が近いからてっきりそうだと思っていたわ!違うのね」
あなたったらお年頃ね、と笑顔で言う女性。それを聞いてアルベドは、さらに表情を硬くさせていた。
「はっ、はぁ!」
「ちょっと。落ち着きなさい」
クリミナはあまり気にしていない様子で、アルベドをなだめる。その様子は、初対面とは思えず、まるでそう、二人は友達のようだった。
「……」
「落ち着いたなら、早く行きましょう。早く行動するに越した事は無いのでしょう?」
彼がさっき放った言葉をお返ししながら、クリミナはアルベドの一歩先を歩く。アルベドは自分の赤面を抑えながら、クリミナに並んで歩き始めた。
「ねえ、あなたがさっき言っていた。アルカナ・クロワで一番賢い人って、誰なの?」
「ああ?」
アルベドは数秒考えた後、クリミナに話し始める。
「そいつは本業が探偵でな……。どっかと抗争とかする時は、作戦参謀とかしてるヤツだよ。あとなんだっけな、ハッキングとかも仕事だったな。情報屋が副業だったっけか」
「へぇ。その人はハッキング技術も持っているの。性別と年齢は?」
「男。まあ顔立ちとか声は女みたいなとこあるけどな。年は確か……、19とか20とか言ってたな」
「名前は?」
グイグイ聞いてくるな、とクリミナに聞こえぬよう呟くアルベド。少し彼女に対しはて引き気味だったが、別に良いかと言った後、前を向いて言う。
「あいつはダンテ・アバーテ。あいつを決して見くびるんじゃないぞ」
クリミナは表情を変えずそう言う。実際、神の使者というのは街や国から使っても使っても足りないくらいのお金を配られるため、誰かに食べ物の一つや二つ奢るくらい、全く造作もない事なのだ。
「よし。そうと決まれば分かったぜ……。アルカナ・クロワが、フローラを必ずや引っ張り出してやるぜ」
言い終わると、そうと決まればと言いながら、アルベドは早速席を立つ。クリミナは彼が立つのをゆっくりと目で追って、口を開く。
「もう行くの?」
「あったりまえだろ!すぐに行動に移すに越した事はねぇんだからな!」
オーナーにお代を払ってからすぐ、アルベドはカフェを出ていった。
「ちょっと、依頼主の事を待ちなさいよ」
そしてクリミナも、彼の後を追うように、お代を払って店を後にしていった。しかし、自身を急かすことはせず、とてもおっとりとした仕草でカフェから去る。彼女はいつも、余裕がありそうな表情を浮かべているが、その実、ただゆっくりしたいだけなのかもしれない。
[水平線]
二人がカフェを出てから数分後。平日の昼でも賑わっているポーヴェの街中で、クリミナはアルベドに、質問をしていた。
「ねえ、どこに行くの?」
アルベドは隣りにいる彼女をちらっと見てから答える。「アルカナ・クロワの中でも一番賢いヤツのとこだ」
そう言いながら大股で歩くアルベド。そしてそれをゆっくりと追うクリミナ。街中を歩く人達の中には、二人をカップルかと誤解する者も居た。
「あら、カップルかしら……。随分と若いのねえ」
商店の女性が、二人を見ながらぼやく。
「……私たち、噂されているみたいね。私の事がバレてないみたいで安心だけど」
神の使者は崇められる故、あまりプライバシーというものが存在しない。今のクリミナも、顔のほとんどを隠している状態だ。姿がバレていないというのは、安心できる要素なのである。
しかし、アルベドはそんな事を知らない。いや、もっと他の事に気を取られていた、の方が正しいのかもしれない。
「は、はぁ!誰がこいつとカップルだって!」
アルベドは顔を赤くさせて汗をかきながら、商店の女性に突っかかっていた。アルベドは、恋愛や女性に関する事には慣れていないのだ。
「あらやだ、距離が近いからてっきりそうだと思っていたわ!違うのね」
あなたったらお年頃ね、と笑顔で言う女性。それを聞いてアルベドは、さらに表情を硬くさせていた。
「はっ、はぁ!」
「ちょっと。落ち着きなさい」
クリミナはあまり気にしていない様子で、アルベドをなだめる。その様子は、初対面とは思えず、まるでそう、二人は友達のようだった。
「……」
「落ち着いたなら、早く行きましょう。早く行動するに越した事は無いのでしょう?」
彼がさっき放った言葉をお返ししながら、クリミナはアルベドの一歩先を歩く。アルベドは自分の赤面を抑えながら、クリミナに並んで歩き始めた。
「ねえ、あなたがさっき言っていた。アルカナ・クロワで一番賢い人って、誰なの?」
「ああ?」
アルベドは数秒考えた後、クリミナに話し始める。
「そいつは本業が探偵でな……。どっかと抗争とかする時は、作戦参謀とかしてるヤツだよ。あとなんだっけな、ハッキングとかも仕事だったな。情報屋が副業だったっけか」
「へぇ。その人はハッキング技術も持っているの。性別と年齢は?」
「男。まあ顔立ちとか声は女みたいなとこあるけどな。年は確か……、19とか20とか言ってたな」
「名前は?」
グイグイ聞いてくるな、とクリミナに聞こえぬよう呟くアルベド。少し彼女に対しはて引き気味だったが、別に良いかと言った後、前を向いて言う。
「あいつはダンテ・アバーテ。あいつを決して見くびるんじゃないぞ」
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