嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
レモン「..........そんな胡散臭い宗教信者でしたっけね、貴方は」
驚くほどその声は低く冷たく、そして視線すらも鋭く私を突き刺す。
彼女は、驚くほど過去とは違う。
[太字]彼女は、変わってしまった。[/太字]
時が経つ度移り変わりゆく人々に対して[太字]嫌悪を覚えていた[/太字]理由を分かった気がする。
見えてなかったと言うべきかは未知だ。
ただ共にいる時間が長くなる度に、
一つ一つの仕草を眺める度に、
[太字]あぁ、やはりそうなんだと苛立たしく感じてしまう。[/太字]
佐々木「............レモンさん」
[太字]今、私の声は冷たいし、低いし、鋭いだろう。[/太字]
佐々木「[太字]『ここ』が.........この世こそが、地獄だと思ったことはありませんか[/太字]」
[水平線]
彼女の鋭い瞳が、変わった。
一瞬驚いた顔をして息を呑んでいたが、すぐにその顔は朝霧の如く散っていった。
レモン「.........無いですよ、少なくとも私たちのいるこの"下界"って呼ばれてるんですから。......."地獄"ではないですよ」
佐々木「.........仏教、古代インドの基礎となる考えでは、[漢字]現世[/漢字][ふりがな]うつしよ[/ふりがな]も[漢字]幽世[/漢字][ふりがな]かくりよ[/ふりがな]も、苦しみを避けれる居場所ではないんですよ」
この教えなど、何回聞いたことか。
昔に身体に染み込まされたのだから、知ってしまっているだけの話だが。
レモン「.........胡散臭い信者でもなくて、敬虔な仏教徒だったんですか、貴方は」
彼女は軽く笑うことすらもなく、真面目に私に問いかける。
.........裏では蔑むようなニュアンスを含ませながらも、"表面的には"傷つけないように配慮されているのか、その意図はハッキリしない。
佐々木「いや、私は日本人みたいな.........クリスマスを祝って、初詣に行く、......そんな[太字]曖昧な信仰心を持ってるだけ[/太字]ですよ」
もちろん、先程の彼女への問いかけもそれを前提とした上での話だ。
日本では『宗教の自由』が保証されている。
日本人の殆どは"無信仰"だと言う。
[太字]"無宗教"[/太字]ではなく、[太字]"無信仰"[/太字]だ。
思い返せば、殆どの日本人はクリスマスに対して宗教的に盛り上がってはないだろう。
[小文字]レモン「信仰心、か........」[/小文字]
レモン「[太字].........確かにそうかも。[/太字]」
レモン「佐々木は本当に、いつもそういう深い話するよね」
彼女は少し気まずそうに目を逸らして呟いた。
その言葉には褒められているように感じながらも、どこか人を蔑むような[漢字]棘[/漢字][ふりがな]トゲ[/ふりがな]があった。
そうか。そうなんですか。[太字]貴方は、そうなんですね。[/太字]
佐々木「........別に、それぞれの好みでしょう」
佐々木「[漢字]あなた[/漢字][ふりがな]レモン[/ふりがな]も大概だと思いますけどね、私は」
声がまた少し低くなるのを感じる。
[太字].........彼女の変化に気づけたのは、私だけなんだろうか[/太字]