嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
オルガレッド「............」
イプシロン「.........何ぼーっとしてんのにしかめっ面してんのさ」
イプシロン「そーゆーのはアホ面してなきゃでしょ」
少し機械類交じりな声。いや、音声と言うべきか。
ただそこに『心配』と言う感情は見える。
[太字]中身は人間であった。[/太字]
ただ頭が緑炎に満たされただけの、[太字]人間。[/太字]
炎は揺れている。
オルガレッド「.......イプシロンか」
緑炎の対のように彼の声はいつも冷たい。
[太字]いつ、どんな時も。[/太字]
もう情なんてものは、彼にはとっくに捨てられているのだろう。
イプシロン「こちとらアンタの言う[太字]『魂の開放』[/太字]、? で疲れてんのにさぁ」
イプシロン「先に『魂の開放』できてるとは言ってもウチらより疲れきった顔しないでほしいのよ.........」
オルガレッド「.........すまない」
イプシロン「アンタがその調子じゃこっちまで狂うの、分かってない......?」
オルガレッド「......それは重々承知している。自分でも分かっている。」
オルガレッド「[太字]............ただ何をしても、煩悩を消し去ろうとしても、聞こえるんだ[/太字]」
オルガレッド「 [太字]______家族の声が[/太字] 」
彼は目を瞑り、椅子から立ち上がり、一呼吸をそこに置き去りにした。
[水平線]
[太字][中央寄せ]『 貴方にとって、一番辛い事とは何ですか 』[/中央寄せ][/太字]
それはとても曖昧なモノ。
お縄で一括りしようとしても、敢えてそれを野放しにしても。
[太字]それはもう明らか『定義』であった。[/太字]
佐々木「[太字]............今、とかですかね?[/太字]」
『定義』。それはとても曖昧なモノ。
ただ、あまりにもその返答は早いものであっさりしていた。
レモン「......え、今?」
佐々木「.........はい。[太字]今生きてるこの瞬間が、です[/太字]」
電車が来るかと彼が線路の向こうを覗くと、
案内人役「あ、『問い』への返答はここに。」
[小文字]案内人役「てゆーか、いつの間にか増えて......」[/小文字]
そう言って、手の指の先でボタンを優しく指す。
そこには、まぁ古びたこの駅には少し似つかわしくないボタンが設けられていた。
佐々木「あ、じゃあ押しますか......」
佐々木が好奇心も兼ねてそれを押す。
ポーン、と軽快な音、電車の到着メロディの一小節にも似たような音が駅に響く。
佐々木「[太字]答えは、『今』。[/太字]」
もう一度そう答えるが、
[太字]何の反応もそこからはなかった。[/太字]
佐々木「.........これは、大丈夫なんですかね?」
案内人役「.........いや、[太字]ダメですね。[/太字]答えが合ってるなら発車のメロディみたいなのが流れるので。」
案内人役「一応何回間違っても大丈夫ではありそうですけど、節度は守った方がいいかもしれないですね」
じゃあこの子、少なくとも2回は間違えてるのかな。
そんな心の独り言。
一方で佐々木は顔を傾けうーん、と小さく一人で唸っていた。
レモン「.........てか、佐々木ってそんな、......そんな事言うような人でしたっけ」
そう、『今』が一番つらいなんて。
この人、まだ何かをずっと抱えてるんですかね。
そうだとしたらもうちょい言ってほしいな、なんて思った。
頼ってほしい、みたいな。[太字]一種の承認欲求的な何か。[/太字]
佐々木「......これでもウンザリしてるんですよ、この世界には」
目をボタンからも私からも逸らす彼の返答、
これじゃまるで本当に[太字]『神様』[/太字]のようだった。
レモン「[太字]..........そんな胡散臭い宗教信者でしたっけね、貴方は[/太字]」
出てきた本音の音色、それは[太字]私自身ですらが思っていたよりも低く冷たく、彼に届くのであった。[/太字]