嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
行き着いた先にあったのは、まるで砂漠のようだった。
どこか程よく、心地の良いような、ピリピリとした感触が肌を包む。
吹き荒れる風も、その静けさも、鼻を通って、喉奥に伝わる冷ややかな空気も。
空気がどこに触れようと、身体が[漢字]拒否反応[/漢字][ふりがな]アレルギー[/ふりがな]を起こすようにピリピリしていた。
[太字]しかし、周りにいる人々は、誰も何も気にしていない。[/太字]
何もかもを、森羅万象を、まるで最初からそこにはなかったかのように扱う。
..............なんでかって?
[太字]______だって、そこに意思がないから。[/太字]
[太字]その目には、何もなかったから。[/太字]
[太字]空っぽ、だったから。[/太字]
生きた屍のようにゆらゆらと身体は踊り、[太字]死んだ魚のような目をしてこちらを見ていた。[/太字]
一切の光を映し灯さず、海に沈んでも見る事のない、無光層の世界のような。
その道から逸れる生物が、私たちを除いて[太字]一人だけ、いたのだが。[/太字]
[太字]............ゆらめく傀儡とは違う。[/太字]
死んだ魚の目のようで、仄かに香る黒曜石のような絶望の色味の広がる瞳の人物。
[太字]その人は浮いていた。[/太字]
ぷらんと吊り下げられたたくさんの電線の上で、その人は浮いていた。
[太字]............そう、これは比喩でもなんでもない。[/太字]
[太字]文字通り、そのままの意味でそこに宙に浮いていた。[/太字]
原理は知らない。
きっと能力か何かなのだろうが、私にはそれが見ただけで到底分からなかった。
???「............君たち、[漢字]初見さん[/漢字][ふりがな]はじめまして[/ふりがな]?あぁ、それならようこそ。」
???「[太字].........でも、君たちはどうせ僕の事を見てくれないんだよね。[/太字]」
朱肉「え........?」
唐突に告げられた冷たい言葉に、凍えた。
???「こんなに頑張ってるのに、誰も僕の事を見てくれない。見てくれやしない」
???「見てくれる人だっているよ。いるけど、[太字]それじゃ足りない[/太字]」
???「[太字]...........だから、願いになったんだ[/太字]」
捨て飯「.............」
それはどこか、聞き馴染みのあるような言葉な気がした。
絶望に限りなく近い狂気の表情を浮かべ、そう大きな独り言をぶつけられると同時、
死んだ魚の目が一斉にこちらに、ギロリと音を立ててこちらを眺めた。
いつしか真っ黒な真珠の目には、[太字]敵意が宿る。[/太字]
片手で握れば簡単に潰れてしまうようなその黒は、忌々しくもゾッとするほどの恐怖を一瞬にしてこちらに与えた。
朝露「..........ぼーっとしてる場合じゃないな」
夏祭「せやな........軽く[太字]お手合わせ[/太字]ってとこやろか」
その全ては、この世界を守るためにあるのか。
それとも..........
.............いや。
これは今、考えるほどの事なんかではないだろう。
???「早く、僕のものに............[漢字]傀儡[/漢字][ふりがな]トリコ[/ふりがな]になれよ!!」
???「[太字]【[漢字]雷帝[/漢字][ふりがな]プロヴィデンス[/ふりがな]】______『[漢字]毒電波障害[/漢字][ふりがな]ケミカルショック[/ふりがな]』!![/太字]」
怒りの沸き上がる声と共に傀儡が動き出す。
ゆっくりと加速し始め、こちらに一直線に走ってくる。
呼応され続けるように、連鎖するように歯車が動く。
朱肉「[太字]『[漢字]世界樹[/漢字][ふりがな]ユグドラシル[/ふりがな]』[/太字]」
レモン「[太字]【謝肉祭】[/太字]」
???「[太字]『[漢字]雷霆[/漢字][ふりがな]トニトランス[/ふりがな]』[/太字]」
[太字]切り落とされた戦いの火蓋は、その過程の一部に過ぎなかった。[/太字]