嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
見てくれない。見てくれやしない。
[太字]その想いは確かに、一歩間違えれば一生の足枷にだって変わってたはずだ。[/太字]
『 ...........。 』
[漢字]夏祭[/漢字][ふりがな]かさい[/ふりがな] [漢字]風鈴[/漢字][ふりがな]ふうりん[/ふりがな]は、誰からも見てもらえなかった。
[太字]興味を持ってもらえなかった。[/太字]
いつも野放しだった。
いつもボロアパートの一室でエアコンがどんなものかも知らず、パンを1枚だけかじっていた。
父も母も、価値だけのある[漢字]紙っぺら一枚[/漢字][ふりがな]1000円札[/ふりがな]だけを机に置いて、後は全部知らない別の誰かと笑っていた。
外で見かけたと思ったら、昨日とは違う人と歩いていた事も当然のようにあった。
[太字]夏祭 風鈴は、それを何とも思わなかった。[/太字]
興味がなかった。自分にはそれがどうでも良かった。
[太字]父も母も、自分に興味を持ってもらえなかったのと全く同じだ。[/太字]
自分自身に興味を持たない父や母などに、興味を持つ道理がない。
[太字]もはや父も母も、誕生日プレゼントに命をくれただけの赤の他人でしかなかった。[/太字]
外の世界には興味が持てた。
今見える世界は、昔見ていた景色とは違う。
[太字]夏祭から見た世界の人間は皆、ウサギになって見えていた。[/太字]
[太字]髪と同化したように大きな翼のようなウサギの耳を、天高く、頭に生やして。[/太字]
[太字]そんなウサギたちが服を着て、二足歩行で、浮き足立つようなステップも踏まず平坦と歩いて、喋って。[/太字]
[太字]どことなくそれが何かを求めている人間の貪欲さに見えていた。[/太字]
[水平線]
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夏祭「なんや、あんさんたちは誰かに見てもらいたいん?」
夏祭「これだけ頑張ったんやって、褒めてもらいたかったん?」
目の前は、虚ろな目をしたウサギに[漢字]塗[/漢字][ふりがな]まみ[/ふりがな]れている。
[太字]あぁ、またか。[/太字]
夏祭「[太字]...........神様はずっと見てくれとんとちゃうの?[/太字]」
そう言った途端だった。
[太字]ぶわりと、感染するように空が赤く広がる。[/太字]
[太字]肉を切り裂いて腸を引きちぎった時のよう、赤く、赤く。[/太字]
[太字]______ウチらは、これを知っていた。[/太字]
あの時と同じやと。
[太字]学校で起こされた、あの時と。[/太字]
能力者なる者、駆けつけなければ無作法。
夏祭「...........」
夏祭「[太字]...........ッチ、自分らぁ!そっから一歩も動かんとってや![/太字]」
朱肉「え」
朝露「HA!?((」
レモヌ「えっえっえっ」
地面に足を叩きつけ、金属の重たげな音が辺りに響き、音に機敏な鳥たちがバサバサとどこかへ飛んでいく。
この辺りで一番見渡しのいいところ.........あのショッピングモールの屋上駐車場。
[太字]そこまで一気に、飛ばす。[/太字]
夏祭「[太字]______【メルクリウス】!![/太字]」
躑躅色の光が自分たちを包み、意識と身体を飛ばした。