嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
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[太字]______ねぇ風ちゃん、風ちゃんは大人になったらどうしたい?[/太字]
「 .........大人、って、ウチらはもう十分大人やろ 」
______まだお酒も飲めないんだから大人とか言えないでしょ。
「 ..........そか、確かにせやな。大人ぶったわ。 」
「 [太字]..........露帰はどうしたいんや[/太字] 」
______え、私?そうだなぁ...........
[太字]『 風ちゃんのなりたいって夢、叶えさせてあげたいかな! 』[/太字]
.........。
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「............」
「..........随分懐かしい夢を見たもんやな」
とても、とても懐かしい夢やった。
[太字]結局あれから、ウチの言うてた夢は叶えられたんやったっけな。[/太字]
叶えられとらんままなんやったっけな。
それとも、能力にでもなったんやったっけ。
[太字]______ウチの望みは何やったんやっけ?[/太字]
[小文字]「[太字]...........思い出せない[/太字]」[/小文字]
神様はどうして人の願いを人に授けた?
ウチは神様に何を望んだ?
「...........」
[太字]その逆、神様はウチらに能力を与えて何を期待した?[/太字]
............追い求めれば追い求めるほど、それは分からなくなっていく。
古めかしい記憶が、いつしか濃霧にかき消されて見えなくなるように、音もなく。
こんなに大きくて大事な気がする記憶が、こうも容易く抜け落ちて空洞になる。
「...........夢って、本当に忘れるもんなんやな」
[太字]______叶えるものなんかじゃない、忘れるためのものでしかない[/太字]
懐かしい声が頭に反響した。
「[太字]...........夢は結局、他人に迷惑しかかけられない[/太字]」
[太字]確かあんたは..........そう言った。[/太字]
______あぁ、間違ってなかったんやろか。
あんたの言うとる事、正しかったんやろか。
..........なぁ、[漢字]柊弥[/漢字][ふりがな]とうや[/ふりがな]。
[太字]あんたに聞いとるんや。[/太字]
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もう9月、それも下旬。
衣替えとよく言われた9月だが、あちらはどう考えてもまだ衣替えするべきな気温をしてくれていない。
ただそれも直にやってくると、文字通り肌で感じ取れるようになってきた日が少しだけ増えた気がする。
だからこうやって窓を開けて、身体が風を受けて、[太字]ついでに机の上で借りた本のページが踊っている。[/太字]
..........え?
夏祭「あ〜さっきまで読んどったのに!? [太字]これじゃどこまで読んどったか分からんくなるやないか!?[/太字]」
大きな独り言をこぼし、ページをぱらぱらめくるが、どこまで読んでたかなんて意識してないと分からんもんや。
これは振り出しに戻るってわけですか、うーん終わったわ。
.........にしてもこの長ったらしい夏、地球側は防寒着でも着てきた馬鹿なんやろか。
だとしたら脳みそダチョウなんやろか?
それとも、家族の顔すら覚えとらんウチと一緒か?
[太字]...........いや、どっちも一緒か。[/太字]
これ以上考えんのはやめにしよ。
[太字]ウチはあの子に頼まれてた『 能力の覚醒 』とやら、暇なうちに調べとかなあかんからな。[/太字]
...........。
[小文字]夏祭「 ...........満たされとらん気がすんのは、気のせいなんやろか 」[/小文字]
[太字][中央寄せ]第5小節『 賞味期限 』 演奏開始[/中央寄せ][/太字]